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オリガミ 記憶喪失の冒険記  作者: 玄紗(げんしゃ)
第2章 防衛部はじめました
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第21話 全速力踏破(準備)


『修羅の道』4日目の朝。頼りになるのか何なのかわからない仲間が増えた。

出自を聞くと光の矢でけん制されるため、正直言ってどう扱っていいかわからない。

古精霊というのも気になるが...まあそれは後で図書館で時間があったら調べてみるとしよう。

てかあの娘、今後もついてくるのかしらん。ロゼさんにどう説明しようか?


そして俺は今床で寝ている。硬いベッドの上だった筈なのに、床に落ちている。

そう、ヴェルが何故か俺の寝ていたはずのベッドに寝ており、俺が床に叩き落されたのである。

寝相悪すぎるだろ、こいつ。


15分ほど装備の点検をしていたら起きてきた。

「んあぁー、おはよう。さて、さっさとこんなところからおさらばするわよ」

気が早いやつだ。そういえば、今のレベルはどうなってるんだろうか。


テスラ

【レベル】22


ヴェル

【レベル】8


ほう、ヴェルのレベルも出ているということは正式に「修羅の道」攻略中と認められているわけか。実は致死判定が為されずに死んでしまうのではないかと心配してたところだったのだ。


「3層へと降りる前に、テスラをドーピングさせます」

「はい?」

右掌を上にあげ、肩を竦めるヴェル。

「このまま各層ごとにレベルを上げていたら時間が掛かってしょうがないでしょ、だからまずここでレベルを上げてから挑むのよ」


「なんでレベルのこと知ってるんだ?」

「そんなのテスラがさっき見てたから分かるよ、じゃあいくよ」

「あの一瞬でそこまで理解したのかよ...」


「ボスに強化魔法をかけて、とにかく戦い続ければ一番早いと思うからまずはボスに行くよ」

つかつかと歩いていくヴェル。

「あ、おい待て2層のボスはやめたほうが」


制止も聞かずバァンとドアをあけ放つヴェル。

「あ、あ、ああ、あ、あ、」

「お、落ち着け!気を確かに持て!」


目をぐるぐるさせて昇天しかけているヴェルをたたいて現世に呼び戻す。

「た、たおしておいてッ!!」

バッと駆けだし逃げるヴェル。


「結局俺がやるのか...まあ、でも昨晩の技をもう一度試してみるいい機会か」

向かってくる全長5メートルほどのGの方向へ右手を突き出す。

目を閉じ、全身にエーテルを流していく。


瑠璃色の閃光が走り、右手にエーテルが集まっていく感覚を感じる。

「シーリン術式・《火球ファイアボール》!」


まっすぐ走った炎の球が、Gの頭部を貫き大爆発を起こした。

と、同時にその巨体が消滅していく。


「い、一発だと...威力上がりすぎだろ」

しかしレベルを確認しても1も上昇しておらず、22のままであった。


「やっぱり、敵が弱すぎるとレベルが入らないようね」

いつの間にか入ってきていたヴェルが腕組みをしながら言った。

「どういうことだ?」

「テスラ、このボスを倒す前ってレベル何だった?」

「確か15前後だったはずだけど...」

うんうん、と頷くヴェル。

「苦戦したから7レベルも上がったんだね、でも今回はワンパンだったから大して上がらなかった」


常に格上と戦い続けることでレベルが上がるというわけか。

「なら下の階層に進もうぜ」

「そうね、3層のボスでレベルを上げよう」


3層は打って変わって広大な草原であった。

「んんー、空気が気持ちいいわね、洞窟とは大違いだわ」

背中をぐぐっと伸ばし深呼吸するヴェル。一応地下のはずだから本物ではないはずだけど、それでもずっと陰鬱な場所にいたから気持ちがいい。


「ボスまでダッシュで行くよ」

首根っこをつかまれる。

「は?」

「口閉じて、舌かむよ」


バンッと地面を蹴るヴェル。と同時に空間がゆがみ、気づけばボス部屋の前についていた。

「な、なにをしたんだ」

「知らないの?『縮地』っていう汎用魔法よ。魔力は割と消費するけど、移動に便利なのよね」

「へぇー凄いんだな、でもそれ『転移』じゃダメなのか?」

「転移なんて魔力をもっとバカ食いする魔法なんか誰も常用しないでしょ」

「いや、教会の人間は使いまくってたけど……とりあえずこれがボス?」

「そうよ、じゃあまずはこのボスを普通に倒してね」


ボスと対峙する。5メートルほどの巨大な猪だがもう大きさで驚きはしない。


さて、ゆっくりとエーテルを全身にとおしっ!?

横っ飛びで突進してきた猪を間一髪で回避。

「バカの一つ覚えみたいに同じ魔法ばっか使ってて勝てるはずないじゃない」

「で、でもあの動きが素早いGに当てたんだぞ!?」

やれやれ、と言わんばかりに首を振るヴェル。


「あれがGの速度なはずないでしょ。制限されてるのよ」

マジか。


とりあえず今は防戦一方となっている戦況をどうにかしなければ。おそらく一発でも貰うと致死、よくても骨を数本持っていかれるだろう。

もっと早い魔法の発動か、もしくは相手を足止めさせる必要がある。

そこで俺は衝撃の真実に気づく。

(俺、ファイアボール以外の魔法を知らないぞ...!?)


仕方ない、原点回帰だ。鞘から磨かれた白銀色の剣を取り出し構える。

致命傷を与えるのは厳しいだろうし、ここは出血による行動不能作戦を狙うしかないか。


「倒したけれども。レベルも3上がって25になった」

「なっがい!長すぎるのよ、バカなんじゃないの?何よ2時間半って、いつ死ぬかハラハラしてたわ」

柱にもたれかかってこちらを睨むヴェル。

「第1層はこれで突破したんだけど...」

「こんな方法じゃ一生かかったところでクリアできない!てか、ファイアボール以外の魔法覚えてないでしょ。まあこの程度ならファイアボールだけで倒せるけど」

バレてる。こいつの洞察力すさまじいな...

「でも、ファイアボール打つ暇がないぞ」

「バカね、毎回全力でやろうとするからそうなるのよ。威力を落としてスピードをあげなさい」

それじゃ30分後に再開、と言ってボス部屋の前に座り込むヴェル。さて、どうするか。


「できた?」

ピッタリ30分後眠りから覚めたヴェルが声をかけてくる。

「全身にエーテルをまとうのではなく一部分だけにすることで発動を早めることはできた。あと複数個呪文も覚えた」

「ふうん、じゃあ次は5分以内に倒しなさい」

事もなさげに半眼で言うヴェル。30倍速じゃないか。無理だろ。

「5分以内に倒せなかったら後ろから私がテスラを倒すから」

横暴だ。


ボス部屋に入るとさっき倒した大猪が復活していた。

指の先端部だけエーテルを流すことで回避運動をしながら魔法を放つことができる。我ながら画期的な発見だぜ。


「シーリン術式・≪五重詠唱クィントプル火球ファイアボール≫!」

右手の指5本から放たれる小さなファイアボール。威力ももちろん落ちているが皮を貫くには十分な威力だったようだ。

「ブモォオオオオオオオオオオ!!!」

大きく吠え、突進してくる猪。それに合わせて呪文を唱える。


「シーリン術式・≪炎地雷フレイムマイン≫!」

設置型の火属性の魔法。猪はそれを踏んで火に包まれる。

動きが鈍り、横に倒れる。しかしまだ動いているようだ。

「くっそ、まだ生きてるのか!」

動けなくなった大猪に向け、右腕を突き出す。そして人生で始めて呪文を唱える。


「≪灰燼かいじんと帰せよ・我にばくする仇敵きゅうてきよ≫シーリン術式・≪上位火球エピスタティック・ファイアボール≫!」


右腕にいくつもの魔法陣が現れ、圧倒的な熱量を持った炎が大猪を包み込み、跡形もなく消した。


「2分39秒、なかなかいいタイムじゃない。じゃあ次は2倍行こうか」

また入り口で腕組みをしているヴェル。そして何やら不穏なことを言い出した。

「2倍?」

「ほら、ボスが湧いたわよ。≪天上セレスティアル増強オーゲット・2ダブル≫!これでボスの強さが2倍になったはず。さ、頑張って。これも5分ね」

「戦いまくるってこういうことかよ...」


やるしかないか。


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