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オリガミ 記憶喪失の冒険記  作者: 玄紗(げんしゃ)
第2章 防衛部はじめました
19/39

第18話 シーリン錬金術式

盛大になにも始まらない回です。

~~~~~~

才能のなき、才能のある者へ


「シーリン錬金術式指南」


著 『魔界神』マイナ・シーリン

~~~~~~


「全魔法大全」が変化してできた、俺に救いの光明を差す(かもしれない)一冊の本。

全体に金色がかっていた「全魔法大全」とは異なり、濃い緑色がかった重みを感じる本である。

2ページ目をゆっくりと開く。


間抜けなウィルファナインの目を盗んでこっそり仕込ませていただいた。この封印を解いた君にとって「全魔法大全」は無用の長物だろう。

この封印を解ける者は魔力量が極端に少ないものである。妾の魔術を扱える可能性のある人間にしか広める気はないのでな。


~~~

カウンター


このページを開いたのはあなたで 45 人目です

現在、シーリン術式を扱えた人は  0 人です

~~~


最後のカウンターがどうもちゃちな感じを醸し出してしまっているが、いまだ扱えた人間がいないというのはかなりの闇を感じる。

しかしこちらとしても未だかつて『魔界神』以外に扱えなかったモノを扱えれば、かなり大きなアドバンテージが得られるであろう。


次のページに進んでいく。


シーリン錬金術式(以後シーリン術式)は、空間のエーテルを体外で媒介することによって物体を直接変換し、疑似的に魔法を発動する技である。顕現する現象は非常に従来型の魔法に酷似しているが、本質的には全く別の事象を発生させており....


くどくど。


....この変換に対しては体内に存在する魔力は不純物である。体内を一本の導管として用いる際に不純な魔力の混入により変換効率は大きく減少する。観測された最高効率は【魔力】3 で観測された変換率18パーセントであり、理論上は3を閾値として指数関数的に変換率が上昇していき、0となった時に70パーセントを観測することが予想されているが、そのような人間の発生は非常に考えづらく....


くどくど。


…長い。この文章がこの先100時ページ近く続いているようだ。もしかして、これをうっかり開いちゃった魔力のない人間は特に切迫した状況でもなかったから習得をあきらめたのではなかろうかと思うほど長い。


しかし俺は切迫している。何としてでも習得してやる。


翌日。

図書館の閉館時間まで粘り、その後仮眠室の堅い床の上で眠くなる文章をひたすらに読みふけり、空が白むまで(もちろん教会の中なので疑似太陽光ではあるが)必死で解読した結果、遂に概要を理解することができた。


概要をまとめるとこういうことだ。


・シーリン術式は体内に魔力が存在せずとも疑似的に魔法に見える魔法ではない何かを発生させる技。

・持っている魔力が少なければ少ないほど強力になる。

・発動には何でもいいから物体が必要である。例えば、『人界神』ウィルファナインを倒した際に彼女は1000トンほどの土を使用したそうだ。さすがに極端な例ではあるだろうが。

・発動するには体表に「エーテル」を纏った状態で呪文を唱えることによって発動することができる。ただし中等呪文以上相当の魔法の威力を出すには、詠唱ではなく脳内での処理が必要なようである。

・もっともすぐれている点は魔法ではないためいかなる魔法への耐性を無効化できるが、魔力をぶつける形にはなるので亡霊系の魔物にも効果を与えられるところである。


といったところだ。

何という都合のいい展開。あとはこれを身に着けるだけなのだが...


その身に付ける方法がまた分かりづらいこと。


・目を瞑って周辺のエーテルの濃度を把握し、そのエーテルを体表に纏う。

・変換したい物体を手に持つか触れるかして、エーテルを馴染ませる。

・念じて術式を発動する。その際威力に応じて触れている物体は消滅する。


全く具体的な事が記されておらず、やり方と思わしき表記がこれしかないのだ。


一応目を閉じてエーテルを感じてみようとはするが、まぶたの裏に残り火のようにチカチカと光がちらつくのみである。

「だめだ、全く感じられるようすがない」


一旦本を閉じてもう一度考え直そうとしたとき、おもむろに机に幾何学模様の法陣があらわれる。

「うん、もう並大抵の事じゃ驚かないぞ…、紙?」


現れたのは黄ばみくすんだ手のひらサイズの紙。


「■■■■…■■■…■■ 何を書いてあるのかさっぱりだ、まあいいか」

乱雑にズボンのポケットに突っ込んでもとに戻ろうとする。するとまた法陣が激しく点滅する。


「『ちょっと!この魔界神であるボクの手紙を無視するとはいい度胸じゃないか!なんでそんな簡単に諦めちゃうのさ、才能あるんだからもう少し頑張ってみたらどうなの!』...慌てて走り書きしたことが見て取れるグッチャグチャな字だな、別に諦めたわけじゃないんだが」


またも乱雑に突っ込んで席を立つ。机の上に残る魔法陣に目を向けると、

「わぁ、すっごい点滅してる...ストロボ並みだぞこれ」


バチバチと火花が走り、人間の形のような白い光が奥から現れる。其れが机の表面に到達しようとして...火花が止まった。


緑色の長い髪を後頭部で一つに結んだ20歳くらいの女性が...魔法陣から出てこれずにその下で詰まっていた。


「え、なにこの結界、詰まったんだけど」

「あー、大丈夫ですか?後、どなたですか?」


頭頂部が魔法陣にぶつかってバチバチ火花が散っているが、果たして燃えたりはしないのだろうか。

「ボクこそが『魔界神』マイナ・シーリン!せっかく後継者が現れたと思ったのに諦めそうだったからわざわざ来てあげたのだけど、詰まって出られない」

「ポンコツですね」

「んなっ!?神をも恐れぬ物言いとはこのこと...てか君、動じないね」

いやなに言ってるんだこの神。


「超常現象には慣れました。で、何の用ですか」

「ん、ボクが直々に教えてあげようと思ったんだけど詰まって出られないからこの呪文をあげる。これでできるようになるんじゃない?その本、1000年以上前に書いたやつだからまだ勉強不足で」


何年生きてるんだよ。ともかくこれで先には進めそうだ。というわけでお礼を言っておく。


するとマイナは満面の笑みを浮かべ、鼻を膨らませてうんうんと頷き始めた。

「そうだよねー、ボクは神だよねぇ。じゃあせっかくだし、一つ見本を見せちゃおっかな!」


ちょろい神だなこりゃ。あ、でも神ってもとは人間だったんだっけ?ほめられ慣れてないタイプの人種なのだろうか。


マイナは身に着けている服から青白く光る宝石のようなものを取り出すと、それを左手に持ち呪文を唱え始めた。


「神の神髄を見せてあげるよ、≪シーリン術式・第四階層・『たすけてヘンジちゃん』!≫」

呪文を唱え終わるとマイナの足元に魔法陣が展開され、机の魔法陣の奥の異空間のような場所にもう一人女性が召喚された。そのまま足を引っ張っていかれるマイナ。


「精進するんだよ、上達したら『魔界』にご招待しよう痛いって!ヘンジ足を持たないで、足抜けちゃう抜けちゃう」

最後まで締まらない神様だなぁ...あ、

「髪の毛燃えてますよ。あ、聞こえてない」


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