第17話 魔法は使えないけど・・・
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肩で息をして、よろよろと立ち上がる。
「いくらレベルが上がったとはいえ、やっぱりボスは辛すぎる」
図書館へ向かうために再度ボスを倒した。今回も一時間以上かかったが、何とか死亡判定は食らわずに済んだ。
「まず調べるべきは図書館でもらった『ハンディ魔物大全』かな、ひっきりなしに魔物が襲ってくる状況でおちおち読書なんてしてられない」
図書館に続く道を歩きながらひとり呟く。もしあの魔物が魔法しか効かない体質だったとしたらどうしよう。しかしロゼさんは俺が魔法を使えないのは知っているはずだから何の突破口もないということはないのだろうが...
仮眠室と食堂を抜け、無事図書館に入ることができた。ちなみに図書館の外へ出ようとしたら光の壁のようなものに弾かれてしまったので、やはりズルはできなくなっているようだ。
やはり無造作に積まれている紙と貸し出しのペンを持ち、長机を一つ陣取り着席。
飛竜の皮で作られた装甲の懐からスッと「ハンディ魔物大全」「全魔法大全」を取り出し、舐めるように各ページを読破していく。
1時間半後。
「特徴的にはこれで間違いがないはずだが...」
印をつけたページに書かれている魔物は「スペクター」。亡霊系の魔物で、一切の物理攻撃を無効化する。ただし魔法への耐性がとても低く、超初級の魔法でも容易に倒せるそうだ。
まるで俺殺しの魔物である。
「となると、魔力なしで使える魔法を探す必要があるか...定義上、もはやそれは『魔法』じゃないけど」
空間中の「エーテル」を消耗することによって魔力を魔法エネルギーに変換するもの。それが魔法であると前読んだ文献に書いてあった。
しかし俺が一つ勘違いしていたことがあった。前の文献には「エーテルは消費される」と書いてあったが、「全魔法大全」によるとエーテルは触媒のような働きで、あくまで消費はされないらしい。
魔法の条件を洗っていけば俺にも使える魔法(?)が見つかるかもしれない。全魔法大全を流し見しながら、細かい魔法の条件について考えていく。
おそらくカギは「エーテル」だろう。正体不明のエネルギー、ただ魔力とは異なるもの。そして魔法を発動させるのに必要なもの。
魔法を「無色のエネルギーである魔力を何らかの別のエネルギーに変換する行為」と認識すれば、それを可能にしているのは不思議物質エーテルであろう。
何らかの変換をエーテルが担っているはず。魔法を顕現させるには人間の体に魔力をいったん取り込む、もしくは体内で生産される魔力を使用する必要がある。しかし魔力上限が0の俺にはその行為をすることができない。
では体の外で魔力を変換することはできないだろうか?
これが近道だろう。司書さんにも聞いて文献を探してみよう。
さらに数時間が経った。
端的に言おう。「無理」である。
空間にある魔力を利用するのは超上級魔法であり、普通人間が生産する魔力を使うほかないようである。
と、いうことは魔力を持たない俺は何もできないのか?答えは否である。
神話によると、かつて『魔界』と言われる場所に生まれた少女が居たそうだ。その少女は魔法が使えなかったが、何やら既存の魔法では説明のつかぬ魔法を使用し、『人界神』ウィルファナイン、全魔法大全の著者を倒したということだ。
その人界神が存在するということは、その少女もおそらく実在するだろう。あとはその方法について見つけるだけなのだが...
「全魔法大全」の最後のページにこう刻まれている。
魔力を完全分析し、すべての魔法を掌握したと思っていた。しかし我が永遠の友マイナの生み出したあの術式だけは、ついぞ知り得ることはなかった。
おそらくマイナという女性(?)が、神話に登場した少女であろう。
という事はこの術式さえ見つけることができれば、おそらく突破口となってくる筈。
全魔法大全を閉じ、席を立とうとしたとき。
「...ん?」
気のせいだと見過ごすこともできる、それほどかすかな違和感が俺の体を走った。
目を閉じ、その違和感の正体をゆっくりと探す。もう一度分厚い皮でできた、金装飾の最後のページを開く。
「見つけた」
最後に刻まれたその一文。ゆっくりと手をかざし、何か感じ取らないか念じてみる。
刹那に吹き付ける風。激しくページはめくれ、本全体がまばゆい白色に発光し始めた。
「えっなになになにが起きているの!?」
本をさかさまにしても閉じてみてもそれは止まらない。
一瞬、その閃光が強く迸る。目を開くとすべてのページは白紙に戻っていた。
「は!?せっかくもらった本が白紙に...いったいどうなっているんだ」
しかし、「全魔法大全」が失われたら正直辛いなぁ、と思っていたら。
おもむろにページが開き、金色の装飾文字で文字が刻まれていく。
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才能のなき、才能のある者へ
「シーリン錬金術式指南」
著 『魔界神』マイナ・シーリン
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「マイナという名前、魔界神という称号、やっぱり俺の読みは間違いではなかった!」
「図書館では大声を出さないでください」
「あ、司書さん...すんません...」




