第15話 ライラその後/『修羅の道』第1層
知っての通り私はロゼ。今私は医務室のベッドの隣に座ってライラ・ディラックの回復を待っている。
「ロゼー、別にずっと居なくても後で呼びに行くよー?」
「ナタリー、んでもね少し引っかかることがあるのよ。あと数時間経っても目が覚めなかったら一旦戻るとするよ」
魔物に取り込まれて生還した事例は今までなかった筈。この娘が初めてなのである。一体どのような変化が訪れているのか、この目でしっかりと確かめてやるわ。
「...あれ、ライラは何を」
「起きたわね!?ライラちゃん、体の調子はどう?なんか変なところとかない!?」
肩を掴んでガシガシ頭を揺らすロゼ。慌ててナタリーが止めに入った。
「...えーっと、今朝テスラに何か酷いことを言ったような気がするんですが、そっから先が思い出せなくて」
「本当に何も思い出せないのー?」
「すみません...なんか暗い所に居たような気がするんですが、あれ?なんかおかしい...思い出せそうなのに思い出せない」
「あー、無理に思い出さなくていいよー。状況説明はロゼがしてくれるから」
かくかくしかじか。
「えっ!?ライラ、魔王の体内に居たんですか!」
「そうらしいよー。もうかれこれ20年くらい医務やってるけど、そんな人は初めて見たよー」
「と、言うわけでライラちゃんは防衛部監視対象者とし、防衛部への加入を強制します。良いわよね?」
パアッと顔を綻ばせるライラ。
「ライラ、防衛部に入れるんですか!これでお父さんとお母さんを...あっ...死んじゃってたんでした...ごめんなさい、未だに受け入れられなくて」
気まずそうに目を逸らすロゼ。
「と、とにかく、今から試験を受けてもらうわよ!」
◯
「中々鍛えてたのね。想像以上だったわ」
ライラの頭に手を置いて褒めるロゼ。
「ふむ、レベル3の訓練に参加できるくらいのポテンシャルは持っているな、ただ」
後から合流し、紙に記録をしていたジンが顔を上げて言う。
「ただ何よ」
「うんにゃ、魔力の体内循環に違和感を覚える。魔王の体内に居た影響かもしれないし、防衛部監視対象者の指定はいい判断だっただろう。日常生活には問題ないだろうが、なるべく魔力を全解放するような使い方は控えるように」
「は、はい!わかりました!」
元気な返事とは裏腹に、ライラは少し不安げな表情を浮かべた。
「安心して。防衛部には私も居るし、いざとなった時の対応は完璧よ」
「ありがとうございます...あ、そういえば
テスラはどこに行ったんですか?」
「テスラ少年は今『修羅の道』という訓練設備に籠っているぞ。俺の試算では大体1ヶ月は戻ってこないと出ている」
◯
「ヘックシ!うー、誰かが俺の噂をしてるな」
『修羅の道・克己』にブチ込まれて半日程度が経った。俺は今第一層に居る。ご親切にも致死回数が表示される仕組みのせいで分かるが、俺は既に8回目のやり直しに突入している。
普通だったら初めからやり直しだったら心が折れそうなものだが、この『修羅の道』にはレベルという物が存在する。簡単な話、敵を倒すほどレベルが上がっていくのだ。しかも死亡判定でやり直しになってもリセットされない。
「うー、さてリスタートだ」
背伸びをして剣を構え、扉を開ける。
最初に出てくる敵はレベル1のスライム。最初はこれを倒すだけで5分以上かかっていたが...
「ほっ、よいしょ」
粘性の高い液体を飛ばす攻撃を横っ跳びで避け、剣で斬り伏せる。
ビシャっと音を立てて消えるスライム。と同時に俺のレベルが7から8へと上がった。
「でもこの程度じゃまだ何かを守る力には程遠い...けれど無理に突っ込んでも致死回数を増やすだけだしなあ...」
頭を掻いて唸る。
「そうだ、ここのスライムをひたすら倒してレベルを上げてから奥に進めば...」
≪アナウンスです。個体名「スライム」の討伐回数が一定数を超過したため、個体名「スライム」の能力値は10倍されます≫
機械的な声で響くアナウンス。
「10倍っておい...まさか...」
恐る恐る剣を振り下ろす。
ぶにゅっ。
阻まれる剣。引く暇もなく呑み込まれる。
「ぎゃああああああ!!!ふっざけんな強くなり過ぎだろおおおおおおおおおーーーーーーーッ!!!」
誰もいない通路に俺の声が響き渡った。




