第14話 少年の転機③
「ナタリー、怪我人連れてきたわよ...ってうわ」
ロゼが医務室の扉を開けた途端、少女がロゼに向かって駆けてきた。
「ライラは...ライラは助かったんですか!?」
「ああ、君がフィン・ウィンガルドね。ライラは気を失ってるけれど、目立った外傷は無いわね。ナタリー?」
ロゼが呼び掛けると、奥から白衣を着て眠そうな目をした女性が現れる。
「...はーい、医務のナタリーです...。ってその女の子!」
間延びした声で寄ってくるも、ライラを視認した途端バッとロゼからライラをひったくり、小脇に抱えて部屋の奥へと走って行った。
「ナタリーの『情報』はパッシブスキルだから、誰の容態が悪いかすぐ分かっちゃうんだよね...だからあまり人の来ないここで引きこもってるんだろうけど、もう少し片付けしたらどうなの...」
「あのー...」
「うわっ!この食べかけのパン、いつの奴なのよ。いくら教会の中では腐らないからと言って無頓着すぎるわよ...」
「あのー...!」
「あーあー、重要書類がこんな所に放って置いてあるなんて、ローザ姉が見たら発狂するんじゃないかしら」
「あ、あのー!」
「ロゼ、診断が終わったよー。フィンちゃんもこっちおいでー」
「よし、行こう!無事治ってると良いけど、ナタリーがあの調子なら大丈夫でしょ」
「あ、あ、えっと...行きましょう」
○
「...んでー、目立った後遺症は無いんだけどー、『魔王』の体内にいた事でー、普通の人よりも『闇堕ち』しやすくなってるからー、気をつけてあげてね。あと1日も寝かせておけば起きるでしょー、私が預かっておくね」
眠くなる説明を受けること5分。どうやら無事である事が判明し、フィンは膝から崩れ落ちた。
「ライラが無事で良かったです...ぐすっ...ロゼ様、ありがとうございました...」
「私は何もしてないわ、礼ならリィに言いなさい。それじゃ私はこれで」
手を振って部屋から出て行くロゼ。
「...リィ様とはどなたでしょうか?」
○
「ただいまー...ってうわ、どうしたのよテスラ」
「ライラは!?」
「無事よ。気絶してるけど、あと1日もすれば目がさめるって」
「良かった.......ロゼさん」
「何?どうしたの?」
「俺に、強くなる方法を教えてくれませんか」
今回の件、俺のせいでライラが危険な目にあったのに俺は何をする事も出来なかった...
「いつまで記憶喪失のつもりなのか」というライラの言葉の意味がようやく身にしみて分かった。
このままの俺で甘んじていたくない。何か...何か革新的な何かをロゼさんなら知っているんじゃないか?
「本気なのね?」
ロゼさんの真紅の眼が俺を覗き込む。
「勿論です!」
「...ふぅん、確かみたいね。装備を持ってついてきなさい」
3度の『転移』を繰り返し、現在地が全く分からなくなってきた頃。
無言での移動が5分ほどをまわり、「どこに向かっているんだろう?」といい加減気になってきた。
「焦らないの、着いたわよ」
高さ4メートルはあるかと思われる巨大な石の扉。そこをゆっくりと押し開けると。
「うわぁ...なんですかココは...?」
炎と溶岩に塗れた山脈。眼下には深い谷が広がり、その先には3つの大きな門がある。
「ふふっ...ようこそ、我がステン教団の誇る最高の鍛錬設備、『修羅の道』へ」
長い真紅の髪と共にくるっと体を翻し、まるで幼い子供かのような笑みを浮かべるロゼさん。
「私の最高傑作なのよ、特別に使わせてあげる」
「あ、ありがとうございます!」
ロゼさんの最高傑作。いったいどれほどのものなのだろうか。
「左の門から順番に『克己』『修羅』『穿天』。左が一番簡単なんだけど...とりあえずテスラ君にはここに入ってもらうよ」
『克己』と彫られた門を指す。
「中で死ぬことはないけど、致死量のダメージを受けたら最初からやり直しになるよ。食料や睡眠が摂られる場所もあるから安心してね。よっと」
「うわっ!?」
背中を押され、俺は門の中に無理やり押し込まれた。
「攻略するまで出す気ないから頑張るのよ~、じゃ!」
「えええええええええ!?」




