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オリガミ 記憶喪失の冒険記  作者: 玄紗(げんしゃ)
第2章 防衛部はじめました
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第13話 少年の転機②

「たしか...ライラ・ディラックだったでしょうか」


嘘だろ?嘘だと言ってくれ...まさか俺のせいで?

リィさんでも歯が立たない『A30の魔王』の近くにライラが...?


そう思うと居ても立っても居られなくなって、俺は玄関を飛び出そうした。


「ぐぇ」

「テスラ少年、何処へ行く気だ」

「ライラが死にそうなんです、助けに行かなきゃ」

「一人で『A3の魔王』と対峙出来る第4遊撃班が全滅したんだ。無駄死にさせる気はない」

キッパリと断るジンさん。

「ですけど...」


と、そこで何やら呟いてたロゼさんが顔を上げる。

「即席の行動制限結界を張ったから、テスラ君は家から出られない。早く行くわよ、人の命が懸かってる」

そう言ってポン、と俺の頭に手を乗せるロゼさん。


「任せなさい、生きてたら絶対に助けて帰ってくる」

「まあ俺とロゼが組んで討伐出来ない敵なんか居ないよ」

「この二人の化け物具合は本人より知っているつもりですので...」


「お願いします...」

自分の非力さに今回ばかりは死ぬほど嫌気がさした。



「協会から程近いところにそんな強大な魔王が発生するとは...エーテル異常でも起きてるのか?」

音速ギリギリで駆ける3人。約2秒で現場に到着。

「うわぁ...エーテル異常ってレベルじゃないわね。なんでその子が生きているのか不思議なくらい」

ロゼがポツリと呟く。何やら手元の機械を弄っていたリィが言った。

「微弱ですが、まだ生体反応は残っていますので、おそらく昏睡状態に陥っていると予想されます。向かいましょうッ!?」

言葉の途中で後ろに飛び退くリィ。

「どうした...うわっ!」

慌てて同時に飛び退く2人。


3人の眼には木々を大きく超える大きさの、6本の触手を持つ粘性の生物が森林を呑み込んで進んでいく様子が映った。

その不定形の体をゆっくりと捻り、木がへし折れる轟音と共に3人の方向を見た。


「うわぁ....でけぇ...」

「惚けてる場合じゃないわリィ!その女の子はどこに居るのよ!?」

「は、はい!...方向的にはこちらなのですが...まさか...」

急激に顔を青ざめさせるリィ。

「リィ?どうした?」

ジンの問いかけに答えず、リィは震える指でその生物の方を指す。

「なんてこと...まさか...」

「そのまさかですロゼ部長。あの生物に取り込まれてなんとか生命を保っている様です...タイムリミットはあと...5分」

「ジン!『情報』使いなさい!」

「お、おう。『情報』!」


Noname 年齢:7時間 出身地:人界

【レベル】『A32の魔王』

【生命力】278,455

【魔 力】155,722

________以下解析不能_______


「私100人分ですか...これを中のライラさんを傷つけずに倒せますか」

「無差別破壊魔法は使えないな...ロゼ、行けるか?」

「あの粘性に物理が通るか怪しいけど...時間がない。

取り敢えず突っ込むから支援よろしくジン。リィ行くわよ」

「はい!」


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「うりゃあああああああああああああ!!!」

綺麗に声を反響させ、一斉に攻撃を仕掛けようとする二人。

ギシャァアアァアァ!

耳障りな音を立てて二人を跳ね飛ばそうと触手をふるう『魔王』

「《魔力弾》、付与《吹き飛ばし》ッ!」

遅れて完成したジンの魔法がその触手を刎ね飛ばす。が、

「まあ、知ってたけどね」

グニュッと音を立て、復活する3本の触手。

「吹っ飛べ、《魔力弾》」

ジンがパチンと手をたたくと、周辺に現れる6つの《魔力弾》。

『詠唱記録参照』と呼ばれる高度技術で、直前に詠唱した魔法を参照、再現するものだ。

「ナイス援護、リィ合わせていくわよ」

「了解です」

全身のバネをしならせて殴り掛かるも、弾性力の高いその表面に傷すらつかない。


「...無理臭い。破壊せずに倒せる気がしないわ」

「私は割と全力だったのですが...しかたない、神代魔法を使うとしましょう。時間がありません」

「「神代魔法!?」」

ジンとロゼの声がきれいに重なる。驚くのも無理はない。神代魔法とは、神または神の化身のみが使える魔法と言われており、人間は覚えるだけでそのあまりの強大さに死ぬといわれている禁断の魔法であるからだ。

「ご存じないでしょうが、私の師匠は『人界神』ウィルファナイン様です。あと、私の魔力だけだと足りないのでジンさんご協力お願いできますか」

「この子サラっととんでもないことを暴露してるわね...」

「時間があと2分と少しありません!早くしてくださいッ!」

焦ったリィの声。懐から取り出した魔法陣紙(スクロール)をバラバラと地面に撒いていく。


「これで足りるか!?」

地面の魔法陣紙(スクロール)に片っ端から魔力を注いでいく。

「ダメですッ、ロゼ様とジン様の魔力を使わせていただいてもまだ、私1人分くらい足りませんッ!どうにかなりませんか!」

ザッ。

特徴的な真紅の髪。ロゼよりもその長身なその女性は...

「...私に任せなさい」

「ローザ姉!何でここに!?」

「説明は後だ。…《古き精霊の盟約に従い・我が問いかけに応ぜよ・『大精霊召喚』》」

ローザほどの実力者にしては珍しく、詠唱による魔法の発動。

そしてローザが指を鳴らすと...現れたのはロゼほどの身長の半透明な精霊が3体。

「魔力をくれ。貸しは後で返す」

『はいよー』

ほどなくして。


「魔力が十分に充填されました。詠唱に入るのでどうか守ってください」

「私に任せなさい!…今のところ役立たずだし」


目をつぶってゆっくりと詠唱を始めるリィ。その足元を中心に4重の魔法陣が回転しながら発光し、展開されていく。


「≪我は天上の腕・神の意を成す者・穢れし者欠けし者の不浄の地を癒し・天の仇を滅ぼさん≫」


虹色に光る魔法陣が、等速に広がっていく。

そしてその魔法陣が、遂に『魔王』の足元を全て覆う大きさに到達する。

「下がるぞ、ロゼ!」

「はいよー、ローザ姉。ジンも急ぎなさい」

「うおっ!?詠唱早いな」

3人が効果領域外に退いた事を確認すると、リィはその溜まりに溜まった魔力を解放した。


「神代魔法『擬似神域降臨(プセウド・クリソストーマス)』!」


暴力的な虹色の光の氾流。膨大な魔力を喰って、魔なるものの存在を許さない絶対の聖域がーー現界する。


断末魔を上げる時間も与えられず、一瞬で消滅する魔王。その光がおさまった時、そこには紫髪の少女がポツンと残されていた。



「うっ....はぁ....上手くいきました....」

息絶え絶えに地面に倒れこむリィ。

「凄いじゃない、あんな技を隠し持ってるなんて。あれをされたら私でも生きていられないかもしれないわ」

手を叩いて賞賛する。気絶したライラを背中におぶったジンも、一緒になって褒めた。


「いえ...この魔法は2つ問題点がありまして...まず1つは...うっ...うえぇえええええ」


咳き込みと同時に口から滝のように血を吐き出すリィ。

「...自身の生命力と魂を大幅に磨耗するので....うぇ...副作用が酷いのです....げほっ」

「治癒魔法も効かない...本当に辛そうだな」

断続的に血を吐くリィを治療しようとしていたローザが言った。


「そうなんです...あともう一つの問題は...そろそろ来ると思います」

「来る?...うわっ何だこの光は!?」

ジンが言うと同時に白い光で作られた門のような物がリィの背後に突如現れた。


「よっ、ロゼ。久しぶり」

軽く手を挙げて挨拶する女性。何とか立ち上がったリィと大して差のない長身である。


「ウィルファ!?何でここに!?」

「何だロゼ、知り合いか?」

「ジンこそ何で知らないのよ!人界神ウィルファナインよ!?」

「えっ、あ...無礼をお詫び致します」


ジンの言葉に対してウィルファナインは首を振る。

「いやー、そういう堅いのホント嫌いだから気楽にお願いよ。で、この馬鹿は持って帰るからね」

「うっ」

そう言ってリィの首根っこを掴むと、門の方へと帰って行った。

「だから、リィはいつになったら分かるんだ!神代魔法はあれほど使うなと言っただろうが!」

「...今回は私のせいじゃないと思いますよ、師匠。」

「口答えするんじゃないっ!」



「...騒がしい人なんだな」

「うん」

「早くディラックを医務に見せた方がいい」


こうして未曾有の『魔王』の発生に関連する事件は幕を閉じた。

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