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オリガミ 記憶喪失の冒険記  作者: 玄紗(げんしゃ)
第2章 防衛部はじめました
12/39

第11話 ひよっこ訓練生

更新が大変遅れて申し訳ありません...

じきに戻します。

1週間たった。

相変わらず俺はいつもビリで、5km走を毎回走り続けている。今のところ33分で走れているのだが…。

防衛部の幼児たちはとても身体能力が高く、やはり俺には追いつけそうにない。


さて、昼食としゃれ込もうか。1時間の休憩時間があるので教会の食堂へと足を運ぶ。あそこは安くて割かしうまいからな。あとは…


「いらっしゃーい、あ!テスラ」

先っぽが紫がかった特徴的な髪色の、ライラ・ディラック。彼女と話すのは割と面白い。


「なに、テスラ防衛部に入ったの?」

「ああ。といってもロゼさんによって、半ば強制的にだけどな」

「はぁ!?何言ってるの、防衛部の訓練は抽選なのよ!?ライラも、出たかったのになぁ...」

頬に手を当てて、この世の終わりのように顔をしかめるライラ。


「そんな貴重なものだったのか、知らなかった」

「ライラ達の分までしっかり訓練するんだよ、落ちた人だっていっぱいいるんだから。まあ、『儀式』のステータスにはびっくりしたけどね」


そういって彼女は微苦笑を浮かべた。って言うか知ってたのか...


「いや俺記憶喪失だからさ、幼児にまで負ける有様で」

「...ふーん?」

妙な沈黙ののち、彼女は首を傾げた。


明後日から訓練で教会から数キロメートル離れた場所にある「穿天山」という山に登りに行くという事で、午後の訓練は20キログラム程の重りを背負っての訓練だそうだ。


しかし俺は教会から出られない。この間のようなフル装備で登るのだろうか?


「テスラ君は教会から出られないから、午後は自由で良いよ」


やはりか。

さて、午後暇になってしまった訳だし教会の散策でもしようか。

よく分からない力でどこでも日差しがあるので自分が今どこに居るか分からなくなりがちだが、一応ここは地上1階だ。


...ッ!ハァッ!」

建物沿いに歩いていくと気合いの入った声と一緒に何かが打ち付けられる様な音が聞こえてきた。


そちらを覗き込むと、


「フゥ.....ッ!?」

「まだまだですね、そんなんじゃ防衛部には入れませんよ?」


短い髪を頭の後ろで結いあげたライラと、目をつく鮮やかな水色の髪をしたフィン・ウィンガルドが剣の打ち合いをしていた。


「テスラさんでしたね、お世話になっております」

そう言ってフィンは恭しく頭をさげた。

「別にお世話してませんが...」

「いえ、食堂で食べていただければ給金も少しは増えますので」

ニヤリ。悪そうな笑みを浮かべるフィン。

「ちょっとフィン!そういう事言わないでよ!」


閑話休題。


「どうしてここで打ち合いしてたんだ?」

「ふん、テスラには分からないよ」

「3年連続で防衛部の抽選に落ちたから拗ねてるんですよ」

「ち、ちがうよ!!」

なるほど、拗ねてたのか。

「...で、テスラは何の用なのよ」

そっぽを向いて言うライラ。

「午後の訓練が自由になったから、今散歩してた所だけど」


「訓練が自由になったから散歩...?」

急に殺気立つライラ。殺気立たれると頭がクラクラするからやめてくれないかな...

「あらあら、これは地雷踏んじゃいましたね〜」

手を前にあわせて苦笑するフィン。一体なんだって言うんだ...


「もう帰るわ、フィン行くよ」

「はーい、今行きますー」

ずかずかと歩いていくライラ。フィンはこちらをチラッと振り向いて、

「訓練は役に立って居ますか?それでは」

と言って消えていった。


...なんだって言うんだ...


その後。

教会地下の特別訓練場にて。

「ほらー、ボサッとしない!そんなんじゃ防衛部長に勝てませんよ」

『リィ班長が勝手に喧嘩売っただけだろ!!』

リィ率いる第四遊撃班は訓練に勤しんでいた。


「はいじゃあ次腕立て伏せ3,000回行こうか」

『殺す気か!!』

文句をたれつつも腕立て伏せをやりだす班員を満足気に見つつ、

「?」

何かを察知したのかドアの方向を向く。

「お前ら伏せろ!死ぬぞ!」

途端にキッと鋭い顔になったリィが叫んだ。日頃の賜物か班員はノーモーションで伏せる。その数秒後...


ドンッ!と低く鈍い音と共に、15センチメートルの厚さはある金属製の扉が部屋の内側へ吹っ飛んで来た。そのまま壁に深々とめり込む元・ドア。


「リィ居る?」

特徴的な真紅の髪の毛をかきあげ、左手を腰に添えたロゼがそこに居た。


「あの、普通に入ってきてくれませんかね?ドアと部屋の修理をするのは私達なんですよ」

「男なんだからそんくらいどうにかしなさいよ」


そうじゃねえ...と口元で呟き天を仰ぐリィ。

「で、何か私に用ですか」

「いや、ここにいるテスラ君に頂点の戦いってやつを見せてあげようと思って」


ぐんにょりと顔を歪めるリィ。

「勝負にならないから嫌なんですけど...」

「まあまあ、ハンデあげるから」


「じゃあ私は一歩も動かないし、先制攻撃はリィに譲るわー」

20m程離れた場所からロゼが大声でリィに向かって叫ぶ。了解の意を表し、ゆっくりと目を閉じる。


ーー先ずは相手の魔力循環をしっかりと読み取りなさい。それで相手が使える魔法の種類が大体わかる


師の教えをゆっくりと反芻し、リィは静かに構えをとりはじめた。


ーーどんな相手でも体を動かし攻撃や防御しようとすると、必ず魔力循環に乱れが生まれる。特に格上相手には、そこにつけ込むといい


「≪火球|ファイアボール|≫!」

もっとも初級の魔法。だが極限まで集中し、威力を何百倍にも高めた魔法だ。


「詠唱なしでこの威力、リィも成長したわね」

その魔法をロゼは、左手を払うだけで消してしまった。

瞬時に背後に回り、リィはニヤリと笑みを浮かべる。最初の一発は囮だ。初級の魔法とは言え、数百倍に力を強めたものを片手で消された時には眩暈がしたが。


(魔力循環が一瞬だが崩れた!ここで命中させるッ!)

「好機!≪火球・指向≫!」


極端に射程が短いが、エネルギーを一点に集結させる事で更に数十倍の攻撃力を持つ、リィが生み出した初級魔術・改。


その熱線はリィの指から放たれ、瞬きする間もなくロゼの背中に到達...

「狙いは悪くなかったわね、でもまだ甘い」

せずに、ロゼに吸収されてしまった。


「なんで!?あそこからの吸収や回避は無理な筈では!?」

混乱して次の攻撃も繰り出そうとしないリィに対し、


「魔法の初歩も忘れたの?魔法は、それ以上の威力を持つ魔法で打ち消せるのよ」


(魔法が苦手、そう言っているにも関わらず俺よりも強い魔法を使えるという事か...ならどうする...?)

突破口がないかリィが考えていると、


「じゃあ次は私から行くよ〜」

ボッ!と空気の燃えるような音と共に飛んできたロゼの拳が、しっかりとリィの腹を捉えた。

(迂闊だった...!近づき過ぎたか)


「忘れてるかも知れないけど...私、人の心読めるんだよね」

間髪開けずに次の攻撃が飛んでくる。回避しきれずに二発目を腹にくらい、5メートルほど吹き飛ばされる。


「だから、リィが次どういう手を打つかわかっちゃうんだよね〜」


リィは朦朧とした意識で考えた。

(人の心が読める...次の攻撃が読めていることをすっかり失念していた...どうする?どうすれば...?)


ーー考えずに発動できる奥の手を作っておけ。それが思考の読める敵に対する特効薬だ


師の言葉を思い出した。深層に自分の意識を封じ込め、もう一度眼を開く。


途端にリィの全身から瘴気を含んだ黒色のオーラが噴き出し、1メートル大の黒い翼が生えた。

その後、体の一部を黒い鱗の様な物が覆っていく。


「ロゼ部長、ここから俺の心は読めませんよ」

ややエコーのかかった声で、リィは言い放った。


「なんで連れてこられたのか、なんでこんな事になってるのかさっぱり分からん」


テスラは離れた部屋で独りポツリと呟いた。

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