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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第二章 炎の旅人と風の討魔団
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7.やる気ON!

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ!!

「はぁあ?!? ちょっとぉ聞いてないんですけどぉ!!」オスカーの話を聞き、堪らず立ち上がってキャメロンが額に血管を浮き上がらせる。


「なぁ? ひでぇ話だ……俺もさ、止めたんだよぉ? でも、あの人、話聞かないんだこれが」ホラを吹く癖のあるオスカーはテキトーな事を言いながら口をへの字に曲げる。


 その隣でウォルターは、ただ黙って彼らを特徴的な瞳で眺めていた。


「無責任な話だな。俺たちを置いて逃げた様なものじゃないか。許せるものじゃないよ」ダニエルは頬杖を付き、唸る様に口にする。


「でも、そういう酷い人には見えなかったんですけどねぇ~」ローレンスは空を見上げながら漏らした。彼はラスティーが作った料理を大変気に入っていた為、意外とショックが大きかった。


「俺は、そういうクソ野郎じゃないと思うぜ、あの人はな」急にライリーが立ち上がり、腕を組んで凄むような目つきを覗かせる。


「その根拠は?」キャメロンが問うと、彼は自慢げに鼻を擦った。


「カード勝負でお前を負かしただろ? 今迄、キャメロンとカード勝負して勝ったのは、ラスティーだけだ。つまり、あいつはそれだけ抜け目なく、ずるがしこいって事だ。今回も、何かあると思うんだよねぇ~」


「……確かに……」キャメロンは何かを考える様な表情で俯く。


「んぅ? このイカサマ女を負かしただって! どうやったんだ?!」オスカーが噛みつく様に問う。彼は散々彼女に負かされ、パンツ一枚にされた事もあった。


「……あいつがカードに触ったその時、袖に必勝の手札を抜き取ったのよ。それを最後の手札に入れ替えたってだけ。くそ! あたしは気付いてたんだよぉ!」キャメロンは忌々しそうに歯を剥きだし、拳を握った。


「それだけ? そんなしょーもない手で?」拍子抜けた声を漏らすオスカー。


「ラスティーはその手札を使う前に数回ワザと負けて見せたんだ。そうやって油断を誘ったんだろ」理解しているようにダニエルが補足する。


「はぁ~成る程……で? この戦い、籠城はどうする気なんだ?」


「さぁ? ただ……俺が盗み聞きした限りでは、あと数日で総攻撃に打って出るみたいだ」ライリーは呆れた様な声を出し、深い溜息を吐く。


「え? どっちが? バルカ・ボルコ軍?」オスカーが問うと、4人がゆっくりと首を振った。「バカだろ?! 籠城に意味を知っているのか?? ここの連中は!!」


「ま、このまま待っても先は見えているしな……賢者が必死になって止めているけど、その娘はまだ13歳の子供だし……」ライリーは憐れむ様な声を出す。


「……で? あたし達はどうする?」キャメロンは男たちを見回しながら問うた。


「……とりあえず、ラスティーの連れ合いっぽいエレンって人に訊いてみるか」ダニエルは重い腰を上げ、彼女のいる休憩所へと向かった。




 その頃、砦を出たラスティーとコルミは馬を猛然と奔らせ、西のマーナミーナへと向かっていた。大勢を連れて行けば半月かかる距離だったが、今回は身軽に進める為、数日で目的地へ付けると彼は計算していた。


「いやぁ悪いな! 説明している時間が無くてな……」彼は手綱を振りながらコルミに問いかけた。


「しかし、僕なんかが役に立つんでしょうか? 小さいだけが取り柄の僕が……」と、ラスティーの数倍の声量で答える。その大声は逆風を突っ切り、ラスティーの耳にハッキリと届いた。


「そう! その大声だ! コルミさんが先頭に立てば今回の作戦はより正確に進むはずだ!」自信満々で答える。


「どんな作戦なんです?」


「ふふ~ん」彼は楽し気な顔を彼に向け、にたりと笑った。


「悪い顔してますね……」




 所変わってここはマーナミーナ国の城、マーナミーナ城。


 この国は、以前はグレイスタンを攻めていたが、とある理由で方針を変更し、大量の武器と兵士を集めて良からぬ事を企んでいた。


 その企みの首謀者はマーナミーナ王、オウラン・ブリーブス2世の隣で軍師として働く風使い、ゴラオン・マイガーロであった。


 彼はブリザルドと繋がっており、ブリザルドの立てた西大陸全土を手中に収める策に協力していた。


 だが現在、ブリザルドはおらず策は宙に浮いていた。


 その後釜に座ったのがこの男であった。ブリザルドの策は今でも動いており、このまま全て自分の手柄としようと企んでいた。


「このまま上手くいけば、出世間違いなしだね~」ゴラオンの個室にやってきていたローズが、卓上の果物に手を付けながら口にする。


「魔王様は、口では西大陸には興味ない、と仰ってはいるが……この大陸には聖地ククリス、そして膨大な資源の眠る山々がある。欲しくない筈がない」両手でテントを作り、足を組ながら口にする。


「何を考えているかわからないオッサンだけど、それは確かだろーね」


「それにしてもローズ。君は休暇中だろう? なぜここにいるのかね?」ソルティーアップルを彼女の顔を見ながら問いかける。


「ただの見物だよ。どっちに転んでも、眺めるだけなら楽しいしね」隻眼をギョロつかせ、にやりと笑って見せる。


「嫌な趣味だな。それに、どっちに転んでも、とはどういう意味かな? ブリザルド殿の完璧な策と、この私の完璧な指揮、そして新兵器を目の前にして!」


「……いや、ただ……ちょぉっと気になってね……」と、窓の外側を見る。外の広場には、木箱がズラリと並び、中から魔王軍から送られてきた新兵器が中から運び出されていた。



「そーいう風に構えて、吠え面を掻いた奴がいたからさ……」



「どういう意味だ?」眉をピクリと動かすゴラオン。


「い~えぇ、別にぃ~」ローズは楽しそうに鼻歌を歌いながらソルティーアップルを食べ終え、芯をゴミ箱へ投げ捨てた。




「え? 何も聞いていないんですか?」キョトンとした表情でエレンが首を傾げる。彼女は兵たちの傷の手当てを行っていた。


「えぇ、その……司令官殿から何か聞いていませんかねぇ……」腰を低く構えたオスカーが手を揉みながら問う。


「あぁ、そういえばコレを渡すように言われていたわ。忙しくて渡せなかったわ」エレンは少々ワザとらしく鞄から分厚い紙束を取り出し、彼に手渡した。


「これは?」


「ボルコニア、バルカニア、パレリアでかき集めた情報がここに記されています。これに目を通していただければ、良い籠城策が思いつくかも」


「あの、エレンさんは彼がここを離れる事を知っておいでで?」


「えぇ。そういう手筈でしたよ。大丈夫です、彼の策は上手くいきますよ」と、心底安心しているかの様な笑顔を見せる。


「は、はぁ……」オスカーは苦い表情で首を傾げ、紙束を持ったまま休憩所を後にした。


「ま、根拠はないんですけどね」エレンは舌をぺろりと出して小声でつぶやいた。




「で、この紙束だが……見てわかるか?」オスカーは4人に回し、どかりとその場に座った。


「情報の塊なんだって? 字が細かすぎて読めねぇや」ライリーは表情を険しくしながら紙束をキャメロンに渡す。


「あたしはどっちかって言うと、本能で動くタイプだから」と、目を通さずにローレンスに回す。


「僕はキャメロンさんを守れればそれでいいです!」と、流れる様にダニエルに渡す。


「お前ら、目も通さねぇのか……ったく、普段から活字に触れていないから……」呆れた様な声を出しながらダニエルは紙束を開き、目を落とした。


 彼は物を言わず、しばらく読み続け、時折唸り、頁を捲る。


 他の連中が野次を飛ばしたり、各々の文句を垂れても、彼は何も言わず、紙束を端から端まで読み進め、数分で全てを読み終わる。


「……ラスティーって男……何者なんだ?」眼鏡を外して目を擦り、首を振る。


「それ、何が書いてあったんだ?」皆が問うと、ダニエルは勿体付ける様に眼鏡を磨き、紙束を整え、咳ばらいをする。


「敵味方の個人情報や人間関係、布陣の敷き方、過去に使った策などなど……どこで手に入れたのか知れない恐ろしい情報がここには記されていた……正直、恐ろしいよ」


「それを使えば、この状況がどうにかなるの?」キャメロンが問うと、ダニエルは額を光らせながら目を光らせた。


「使い手次第だな。まず、このどうしようもない状況をどうにかしなきゃな……」


「もしかして、ここの指揮官の情報も書いてあるのか?」オスカーが問うと、ダニエルが指を立てた。


「全部だ。司令官、騎士団長、その部下、兵士長などなど……このパレリア軍は策を立てず、猪突猛進であり、全体的に声を上げて突撃すれば勝てると思ってる。救いようのないバカな連中だ」ダニエルは再び紙束を捲り、パレリア軍の頁を指さす。


「聞く耳持たず、って奴か」オスカーはため息交じりに呟いた。


「まず、総攻撃を阻止しなきゃな。でなきゃ、ラスティーの策が発動する前に、こっちが全滅するな」ダニエルはいつになく真面目な顔で口にした。


「お、久々にやる気が出たみたいだね」キャメロンは楽し気な声を出し、彼の肩を小突く。


「俺がいなきゃお前らはなんも出来ないからな! よし、やる気が出て来たぞ!!」


「ちょっと待て! ここの指揮を任されたのは俺だぞ! 俺が……」オスカーは慌てて立ち上がり、己の指揮権を訴えたが、他の4人の耳には入っていなかった。


「じゃ、俺は外の偵察に行ってくるわ。俺、偵察兵だし」ライリーは腰を上げ、素早くその場から消えた。


「んじゃ、あたしはいつでも動ける様に、身体を温めておきますか!」やる気を灯したキャメロンが腕を伸ばして、背筋をピンと真っ直ぐさせる。


「お手伝いします!」ローレンスも巨体を起こし、彼女に続いた。


「……じゃあ、……あー皆、準備だ! いつでも動ける様にしておけ!」オスカーが声を上げるも、聞いているのは彼の隣に立つウォルターだけだった。


「調子が出ないなぁ……」


如何でしたか?


次回、反撃開始?! お楽しみに

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