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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第5章 バルバロンの闇と英雄の卵たち
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116.魔王の剣

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 数日後のファーストシティの魔王城。アリアンは秘書長室のドアをノックし、秘書長の返事と同時に入室する。


「失礼します。先日『魔王の剣』の選抜試験が終了しました。主に元黒勇隊や魔王軍の腕っこき、解体されたウィルガルム機甲団員、バルバロン内で燻っている戦士が多く集まり、筆記試験から運動能力テスト、身体能力検査、戦闘能力測定などを行い30人ほど選ばれました」彼女は淡々と説明しながら纏められた書類をデスクに置く。


「『魔王の矢』の選抜の時とは違って、随分と淡々とした選抜ね」ソルツは置かれた書類を眺めながら眉を上げ下げする。


「今回は狩人ではなく戦士を求めていますので。それにある程度の知能も。筆記試験と面接でかなりの人数が落ちました」


「で、彼らを纏め上げるのが、あの剣術指南役のアラカゼ・カエデね。彼女で大丈夫かしら?」彼女が口にすると、アリアンが悩む様に唸る。


「あの人、今回の選抜をトーナメント方式で決めようと提案してきたんですよ?」


「あなたの選抜サバイバルと大して変わらないと思うけど?」


「さっきも言いましたが、狩人を選ぶにはあぁするしかなかったんです。今回必要なのは優秀な戦士です。それにあの人数をトーナメントで決めるって、どれだけのコストがかかると思いますか?」


「まぁ確かに。で、『魔王の剣』はもう機能しているのかしら?」


「10部隊に分け、その頂点にアラカゼと副官2名がつきます。彼らは魔王様の指令を第一に動きます。普段は情報部からの指示で働きます」


「いわば新生黒勇隊ね。そういえばゼルヴァルトは……」


「『魔王のポケット』に収監されています。いやに大人しく従ったのが不気味でしたが」


「そう……で、アラカゼは? 彼女の事だから鼻息を荒くして魔王の剣を動かそうとするんじゃないの? 今回の件で魔王の剣の価値を証明できれば、アラカゼ家がヤオガミの政治に影響を与える地位へ上る事ができるからね」


「現在はバルバロン国内で暗躍する討魔団残党の捜索や反乱分子の排除などを中心に動いていますね。噂ではラスティーが入り込んでいるとか……あぁ、そういえば」アリアンは何かを思い出した様に上を向く。


「何を思い出したの? 私の可愛いカーラを探してくれるとありがたいんだけど?」ソルツは未だに彼女の事を諦めてはいなかった。


「彼女は釣り餌として泳がせています。用が済んだら、私が連れてきますよ。恐らくアラカゼは国内に入り込んだロザリアの探索に躍起になっていますね。何か因縁があるみたいですし」


「そう……彼女の手に負えるかしら?」




 バルバロン南部のヴァライル地方の港。そこでアラカゼ・カエデが魔王の剣の局長として初めての仕事を始めようと鼻息を荒くしていた。その脇を元ウィルガルム機甲団のケンジ、そしてヨーコが固めていた。2人はつい最近までヤオガミ首都の城の警備を任され、裏では討魔団に情報を流していた。が、機甲団解体によってバルバロンヘ呼ばれ、魔王の剣立ち上げの際に選抜試験の手伝いをやらされた。


「この港で目撃情報があったと聞いたが、どうだ?」カエデは脇に差した魔刀嵐牙を強く握りながら問う。


「随分と張り切っているな? 殺気が漏れているぞ」ケンジが彼女を宥める様に肩を叩く。


「あのアスカだぞ? 今はロザリアと名乗っている様子だが……去年、ヤオガミで会ったんだな? 彼女は、今はどんな風貌をしている?」彼女は徐々に鼻息を荒くさせ、今にも鯉口を切りそうな勢いで周囲を睨み付ける。


「不思議と歳は取っていない、昔のままだ。で、去年の事件を経てアスカは自分を取り戻した、というかロザリアになった、というか……立派になった」ケンジは彼女の事を思い出し、ほくそ笑む。


「で、王風を渡したのか? あの魔剣を……それに蒼電も彼女が持っているんだったな? 魔剣を二振り使う剣士は聞いたことがない……それに紅色の甲冑を身に纏っていると聞いた。随分目立つ格好をしている筈だ! 虱潰しに探せ!!」


 するとヨーコがぷっと笑う。


「普段からそんな恰好をしている訳がないでしょう? それにそんな恰好でうろついていたら目撃情報が沢山届いている筈よ。今やロザリアは伝説的存在となっているんだからね」彼女の言う通り、ロザリアはバルバロンでは名の売れた剣豪だった。『嵐薙ぎ』『海割り』と異名を付けられていた。


「……何が伝説だ! 魔剣に頼っただけに決まっている!」


「魔剣を振っただけで嵐は消し飛ばせないし、津波をぶった斬る事も出来ないでしょう? あんたが一番知っているでしょう」と、ヨーコは彼女が差している魔刀を小突く。


「気安く触れるな」


「あら、ごめんなさい。貴女は家名や刀に触られるのが嫌いなのよね? 大した家でもない癖に」ヨーコはアラカゼ家を毛嫌いしているような口調で話した。


「何が気に入らない? 私の副官になってからよく突っかかってくるが、なぜだ?」


「……まさか知らないの?」ヨーコは呆れた様に笑う。




 ヨーコは10年以上前の魔王軍のヤオガミ侵攻の際に最前線で戦ったヤオガミ軍兵であった。彼女は精いっぱい戦ったが、圧倒的な魔王軍には太刀打ちできず押し潰され、首都進攻を許してしまった。ヤオガミ軍兵の生き残りは彼女と数名だったが、首都進攻の責を問われ、最前線で戦った生き残りはタカ派の手によって嬲り殺された。その際、ヨーコは手足を切断されてしばらくの間、玩具にされた。


 彼女がアラカゼ家を恨んでいるのは、このアラカゼ家が軍の上層におり援軍を出し渋った為である。侵攻の際にはあっさりと投降し、ヤオガミ国に降参する様に呼びかけたのであった。




「当時の彼女はまだ無関係だっただろ」カエデを擁護する様にケンジが割って入る。


「それでもアラカゼ家だ。あのお高くとまったヘタレ共が。あんたもよくコイツの腰巾着ができるね?! あたし知っているんだよ? あんたもアラカゼ家から酷い目にあったって!」と、ヨーコは彼の義手を小突く。


「複雑な事情があるんだ」と、彼は奥歯で何かを噛み潰す。


 するとカエデは彼ら2人へ向き直り、殺気とは違うオーラを放つ。


「アラカゼ家への文句は私に言え! 殺したくば堂々と殺しにこい! 文句が無ければ、副官として大人しく働くんだな」彼女は2人よりも一回り二回りも年下であったが、気迫で2人を圧倒した。


 ヨーコは目の色を変え、得物であるロッドを取り出して伸ばす。


「殺したかったら殺せだと? あんたの腕は知っている……あたしじゃ勝てないだろうけど、一発ぶん殴らせろ! 出来れば一日一発な!」ヨーコも負けない気迫で構える。


 するとカエデは一瞬で彼女の間合いへ入り込み、当身を喰らわせてバランスを崩し、足払いを決める。バランスを崩したヨーコの胸に一発だけ指で突きを喰らわせると、回れ右をする。同時にヨーコは力が抜けた様に崩れ落ち、手足の義手義足がガラガラと取れる。


「何だこの技?! 喰らったことがない……力が抜ける……」ヨーコは地面に倒れ伏しながら呟き、もぞもぞと動く。


「このタイミングか……カーラめ、次に会ったら……」カエデはカーラが編み出した魔力循環を強制停止させる突きを学び、自分のものにしつつあった。


 それを見て感心する様にケンジが笑う。


「随分と腕を上げたな。流石はアラカゼ家の跡取り」


「……貴方は私に気を遣わず、普通に接して下さい。そしてアスカの探索にご協力を……」


「今はロザリアだ。で、全てが終わったらアスカに戻る、と」ケンジはヨーコを抱き起しながら口にした。


「チクショウ、ふざけやがって……何なんだよこの技!」




 その頃、近隣の森の中でローブを纏った何者かがボロボロの青年と立ち合っていた。青年はギラギラとした表情で舌なめずりし、襲い掛かるが手を吸い込まれる様に取られ、あっという間に地面へ叩き伏せられる。


「休むか?」ローブを纏った者が問うと、青年は一瞬で立ち上がり、また立ち向かう。そしてまた叩き付けられ、投げ飛ばされ、組み伏せられる。


「まだやるか?」ローブの者が問うと、青年はまだ立ち上がり、血液混じりの嘔吐をする。が、休むことなくまた立ち向かう。


「よし、いいぞ」ローブの者がフードを取りながら笑いかける。その者はロザリアであった。

如何でしたか?


次回もお楽しみに

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