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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第5章 バルバロンの闇と英雄の卵たち
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27.スティーブの物語 Year Four VSガロン

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 マリーの撃ったエレメンタルガンの魔力弾は何故か扉をぶち破ることなく弾かれる。焦った彼女は連射したが、全て雨粒の様に頼りなく弾かれ、扉は傷ひとつ付かなかった。


「嘘でしょ?」焦げ跡すらつかない扉に手を触れる。すると納得した様にため息を吐いた。


「それ、魔法防御されていて爆弾も通じないんだよね……」ソフィーがおずおずと口にする。


「早く言ってよ!! じゃあ、あたしが通ってきた通気口から脱出ね」と、自分が来た道へ顔を向けた瞬間、眼前を鉄塊が掠めて壁にめり込む。「ひっ?!」


 鉄塊の飛んできた先にはガロンが立っていた。


「さて、1人ずつ潰していくか……」指骨を鳴らし、一歩一歩踏みしめる。


「モリーさんは?! まさかやられたの?」と、マリーはエレメンタルガンを左手に右手にはグレネードガンを構える。同時にルーイもボウガンを構え、ソフィー達を背後に立たせる。


「それが通用すると本気で思っているのか?」


「どっちにしろ、かかってくるんでしょ!」セリフと同時に彼女は相手の脚元にグレネードガンを打ち、爆炎を立上らせる。それに合わせてルーイが風魔法で煙を呷り、ガロンの身体に纏わりつかせる。


「んむ……味な真似を!」


「今の内だ、ソフィー達は通気口を通って逃げろ! 俺の風が案内する!」ルーイはボウガンの矢を連続で放った。


「わかった!」と、ソフィー達は風を頼りに通気口方面へと向かった。


「ぬん!!」すると邪魔な煙を拳圧で吹き飛ばし、すぐさまマリーの間合いへ入り込む。彼女は逃げる様に後退しながらエレメンタルガンを乱射する。


「そんなモノは効かん!! 今、逃げたのは研究所から逃げ出したという水使いの女だな? あいつは生け捕りにしろって話だ……とっとと片付けさせてもらうぞ!」ガロンは地面に皹を入れて踏み込み、襲い掛かった。




「くそ! 返しやがれ!!」地面に這いつくばったスティーブは空を探る。未だに体内は捻じれる様に激痛を発し、喉の奥から熱がこみ上げていた。


「黙っていろ! 大人しくしていればすぐ終わる! お前の事は俺が匿ってやるよ。ほとぼりが冷めたら、また2人でよぉ……」


「そんなのは御免だ!! 俺は皆を助けるんだ!!」


「お前のその安い正義感はなんだ? 何故、自分の為に使おうとしないんだ!!」このセリフにスティーブは自分が住んでいたサンシャインシティのごろつき連中の事を思い出した。すると腹の底から怒りと同時に力が沸く。


「俺は……そういう自分の為だけに力を振るう奴らが大嫌いなんだよ!!」と、無理やり立ち上がりマーヴの手首を掴む。彼の手の中からブースターを奪い返し、躊躇なく胸に突き刺した。


「ば、バカやろう!!」



「う、うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



 スティーブは口血と血涙を垂らしながらその場から雷光を残して拳を一閃させる。マーヴの顎がすっ飛び、首が回転して彼はそのまま昏倒した。考える間もなくスティーブは雷速で組み立て工場へと数瞬で駆け、包囲する魔王軍兵らを悉く薙ぎ倒していく。その間、スティーブの肉体は徐々に崩壊していき、血煙と火花を散らす。ブースターによる魔力の高速循環は1分前後が限界であったが、2分以上持続させ、あっという間に工場を包囲していた魔王軍兵らを叩き伏せる。


「ぐっ……あ……ぅ」スティーブの魔力循環が止まり、彼の脚も止まる。全身から血が噴き出て、拳や足先は骨が見え隠れしていた。魔王軍からの攻撃は一切受けていなかったが、彼の体調と体内の魔石の限界、更に限界を超えた無茶が祟り、瀕死を通り越して死人の様にボロボロになってその場に倒れ込んだ。


「はぁ……はぁ……は、はやく、み、ん、なを……」彼は工場の方へ手を伸ばし、血だまりを作りながらも張いつくばって向かった。




 ソフィーは通気口前まで到着し、仲間らを先に外へと逃がしていた。


「早く行って! 場所は例の隠れ場所で!」と、最後の1人の尻を押す。彼女自身はモリー達の安全と脱出を確認するまで逃げるつもりは無かった。


 が、そこへ通気口を塞ぐ様に何者かがすっ飛んできて出入り口の形を歪める。その者はマリーであった。


「マリー!!」血達磨になった彼女を抱き起す。


「ち……ば、けもんが……」マリーの両手はへし折られ、片足は膝が反対方向へ折れ曲っていた。


「いま、これを……っ」ソフィーは慌てた様に鞄からヒールウォーターの入った瓶を取り出す。が、それをマリーは遮った。


「モリーに使って……あいつとまともに戦えるのは彼女だけ……」


「もう一本あるから!!」


「じゃあ、残りはスティーブに取っておいて……あいつも危ないから……」半死半生の身で血を吐くマリーだったが、ヒールウォーターを拒み、ヨロヨロと立ち上がる。背に仕舞ってあるもう一丁のエレメンタルガンを取り出し、ゆっくりと近づいて来るガロンの方へと向けた。が、それを歪んだ通気口へ向かって乱射して出入り口を作り出す。


「早く逃げな!!」


「嫌だ!! みんなと……」


「今回はそんなに甘くいかない!! 早く!!」マリーの必死の説得を聞かず、ソフィーは自分の手にしたエレメンタルガンを取り出し、一緒になって構える。


「私だって……反乱軍の一員だから!!」


「ったく……分からず屋が!!」と、2人は一緒にエレメンタルガンをガロンへ向けて乱射する。が、その魔力弾は全て大胸筋を前に弾かれてしまう。


「立ち向かうのは立派だが……それだけでは意味が無いぞ?」ガロンは彼女たちの間合いに入り、巨大な拳を振り被る。振り下ろされた瞬間、その拳をモリーが間一髪で受け止める。金属が激しくぶつかるような轟音が鳴り響き、衝撃波が爆ぜる。


「間に合ったか」彼女は口血を拭い、回転蹴りを放ってガロンを後退させる。彼は効いていないと言わんばかりに胸を聳やかした。


「モリーさん……」ソフィーは目に涙を溜め、彼女にヒールウォーターの瓶を手渡す。


「この作戦は残念ながら失敗よ……プランB、無事にここから撤退しなさい。私が殿を務める」と、ヒールウォーターを飲み下し、瓶をガロンの顔面目掛けて投げつける。同時に間合いを詰め、雷速で殴りかかった。


「彼女の命令に従って退こう! これはモリーの意志なの!」マリーはソフィーの肩を揺さぶりながら口にした。


「やだよぉ……」涙して膝を震わすソフィー。彼女はモリーを姉や母親の様に慕っていた為、尚更死なせたくなかった。


 するとマリーは彼女の頬を強く張った。


「ソフィー!! アンタやあたしまで死んだら、全て無駄になるの!! 逃げるよ!!」


「……うん……」ソフィーは鼻水を啜りながら、戦うモリーの背に一礼し、通気口へ入ろうとする。


 すると、そこから血塗れのスティーブが這いずり出てくる。


「うわっ!! スティーブ?!」


「み、んな……助けに、きた……ぞ」壁を頼りにズルズルと立ち上がり、グラグラと座った首で周囲を確認する。彼の目には仲間の姿がぼんやりと映り、戦いの熱気と殺気だけを感じ取り、そこへ向かおうとする。


「スティーブ、ダメだよ、そんな身体じゃ死んじゃうよ!!」ソフィーが止めようとするが、彼は彼女の鞄からヒールウォーターの瓶を奪い取って飲み下す。激しく咳き込んだ後、ブースターを胸に押し当てる。


「スティーブ!! 死ぬ気か!!」スイッチが押される前にマリーが肩を掴んで止める。


「皆を生かす為だ……俺ぁ……ただいい様に踏みつけられるのは御免なんだ……特に、仲間が踏みつけられるのは嫌だ……」と、スティーブはスイッチを押し、再び魔力循環を高速化させた。同時に彼の体内で何かに再び皹が入り、心臓を射抜かれる様な激痛が奔った。が、その痛みよりも耐え難い何かに耐え、スティーブは雷矢の様にガロンの顔面を打ち抜いた。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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