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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第5章 バルバロンの闇と英雄の卵たち
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14.スティーブの物語 Year Three 施設の闇

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 スティーブ達はフラットマンの紹介でストルー率いる反乱軍へ入隊した。彼ら3人はそれなりの実力を持ち、ソフィーは水分を読み取る特殊能力のお陰で歓迎される。それからおよそ1年、4人はビーボルブ国内でゲリラ活動を行い、魔王軍や地元軍隊に対して少しずつ打撃を与えて行った。


 リーダーのモリー・ストルーは女傑で腕っぷしが強く、雷のクラス3の使い手であった。鎮圧部隊と正面から戦う時は彼女が先頭になって激突し、仲間たちの被害を最小限に撤退した。リーダーシップと判断力は素晴らしく、仲間からは尊敬されていた。


 そんな中、活躍がめざましいのがスティーブだった。彼は持続力こそないが、爆発力はモリー以上であり、彼女のピンチを幾度も助けた。


彼の背を守るのがマリーであり、後方からエレメンタルガンとグレネードで援護した。


 ソフィーは捕虜の尋問や口の堅い情報屋相手に役に立ち、反乱軍に違った形で貢献していた。回復魔法の勉強もしたが、何故か彼女には素質が無く肩を落とした。


 問題がマーヴであり、彼はあまり積極性が無く、いつもため息交じりキャンプで過ごしていた。戦いの時は笑みを浮かべて暴れたが、彼は協調性が無く、モリーの作戦には耳を貸さず、己の快楽に忠実に行動する姿は一部の仲間らを引き付けたが、反乱軍の方針にはそぐわなかった。




 スティーブ、マリー、ソフィーも当初は戦いに意味を持てずに乗り気ではなかったが、最初の作戦に参加した時に魔王軍の、そしてバルバロンの悍ましさを目の当たりにして考えを変えた。


 その作戦とは、ビーボルブ国内の砦に魔力を送り込む施設の破壊であった。その施設は、表向きは大量の魔石を組み込んで魔力エネルギーを各地の街や領事館、砦に送っていた。そんな魔力供給を断って足止めし、その間に領事館を襲撃するのが目的であった。


 モリーは丁度いいと4人を連れて潜入作戦を開始し、施設の警備網をスティーブに破らせ、難なく侵入する。そこから警備兵を静かに始末していき、施設の中心へと向かう。そこで目にした物は酷く悍ましく、身の毛もよだつ光景であった。


 なんと、人が1人ずつ機械に繋がれ、全身チューブだらけになっていた。皆、目を閉じており、生きている様子であった。口内に太いチューブが挿入され、そこからペースト状の食事が流し込まれていた。


 4人は我が目を疑い、モリーに『この施設は何なのか』問うた。


 彼女は、送魔施設は全てがこうではないが、少なくとも各土地に2カ所以上は存在すると説明した。彼らは皆、浮浪者や犯罪者などの世間の鼻つまみ者であり、いわば人間を再利用する効率の良い施設だと笑いながら言い、腹立たしそうに壁を殴りつける。モリーは他にも魔王軍の非人道的所業を目の当たりにしては歯噛みし、恋人と共に勇者の時代を闘い抜いた、と口にした。


 彼女の恋人とは、勇者の時代最後の反逆者ジャレッドであった。ジャレッドはエリックの戦友の1人であり、魔王軍黒勇隊総隊長を務めていた。その立場でいながらスパイとして魔王軍の情報をナイアらに横流しし、魔王に内部から抵抗を続けていたが、彼の性に合わず、最後は勇者たちをかき集めて砦で最後の戦いを始めたのだった。最初は魔王軍を何度か跳ねのけたが、ロキシーの放ったナイトメアソルジャーに皆殺しにされ、ジャレッド本人は魔王直々にトドメを刺されたのだった。モリーはナイトメアソルジャーとの激突前に砦から無理やり逃がされ、今は彼の意志を継いで小規模な反乱軍を率いてゲリラ戦で抵抗を続けていたのであった。


 この話を聞いたスティーブは送魔施設を一時停止するのではなく、怒り任せに破壊を始めた。モリーは止めようとしたが、彼は「ここにいる人たちの為だ!」と、目を充血させて暴れた。本音は彼女から聞いた魔王軍の残忍さ、過去に起きた戦い、そして自分の地元で起きていた裏の出来事を思い出し、居ても立っても居られなかったからであった。


 地元にいた頃、彼は裏路地から気のいいホームレスの男がいなくなっているのに気が付いていたが、何処へ消えたのか探そうとせず、今の今まで忘れていた。その行く先がこう言った場所なのだと気付き、己の不甲斐なさや無念さに身体が暴れたがり、ブースターの行動限界まで暴れ続けた。


 それを見てマリーもエレメンタルガンを取り、周囲を撃ちまくった。


 ソフィーはどうすればいいのかオロオロとしたが、マリーからエレメンタルガンを手渡され、大声のままに機器に向けて撃ちまくった。彼女のいた施設も似たような冷たさがあったため、スティーブに負けず劣らず暴れた。


 そんな3人を見てマーヴは理解できない様に首を傾げて腕を組んだ。いつもは一緒になって楽しむところだが、何が頭に来たのか、何が気に入らないのか理解できず、暴れる気になれずにいた。


 その日から3人はマーヴを置き去りにして反乱軍の活動に積極的になり、街の人々に真実を伝える為の運動にも参加した。マーヴは反乱軍の中に半数存在する戦う事が好きな連中の中に混じり、そこでお山の大将となって戦う時だけ楽しんで戦った。



 


 ある日、マリーは珍しくフラットマンに頼んで高速馬車を手配して貰い、チョスコにあるジェニットの工房へ向かった。そこにはスティーブとソフィーも同行した。


「何でついて来るの?」エレメンタルガンを弄りながら首を傾げるマリー。


「チョスコ地方では札付きだろ? ひとりじゃ危ないと思ってさ」スティーブは両手を上げて笑う。彼はこの1年で作戦の合間にブースターを利用した筋トレを絶え間なく行っていた為、今では筋骨隆々のインファイターとなっていた。ブースターを使わなくても半端な実力の魔王軍兵士を正面から殴り殺せる腕力をし、鍵のかかった鉄扉を一発で蹴破れるほどの脚力をしていた。


「あんたはわかるけど、何でソフィーまで!」


「好奇心」と、ピースサインを作って笑う。本音はスティーブに付いて行きたいだけであった。


「ったく……邪魔をしないでよ。結構高度な取引をするかもだからね。相手は何せ、ウィルガルムの一番弟子と名高いジェニットさんだからね!」と、マリーは2人に粗相をしないように釘を刺した。




「んな~っはっはっはっはっはっはぁ!!!!」ジェニットは工房の外で携帯型エレメンタルバルカンの試射テストを行っていた。毎分6000発の回転数で試射場の的を全て薙ぎ払い、上空に向かって撃ちまくっていた。


 それを3人は呆れた顔で眺め、義理のつもりで拍手を送った。


「いや~相変わらず凄いねぇ! それ新型?」


 マリーのセリフには顔を向けないまま、ジェニットはバルカン砲の調整とパーツの組み換えを行い、銃口と可動部を冷却していた。


「札付きの反逆者が1年ぶりに何の用?」


「手紙を送ったでしょ! あたしの愛銃がそろそろ限界でさ。診てくれない?」と、エレメンタルガンを3丁とエレメンタルグレネードガンを卓へ乗せる。


「アタシはそこまで暇じゃないんだ。帰れよ。ここにあんたらが出入りしているってだけで、アタシも色々としつこく聞かれるんだからさ」ジェニットは先ほどまでは狂ったように笑いながら撃ちまくっていたが、今は冷静であり、正論を放った。


「だったらフラットマンに断りの伝言でも渡しとけって!」マリーは語気を荒げ、鼻息を荒くして2人に「退散しよう」と苦い表情を向ける。


「早とちりするなって。アタシが言ったのは、長居するなって事」と、真新しいケースを取り出し、マリーの足元へ滑らせる。それを開くと、中には新型のエレメンタルガンが4丁に新型エレメンタルグレネード対応型グレネードガンが入っていた。更にその新型グレネードの入った箱を既に馬車に4ケース程、積み込み終わっていた。


「ジェニット……あんた……」


「このガラクタに愛着があるなら、調整して手を加えて、ビーボルブのアジトに送ってあげる。正直、あんたらの活動は正しいと思う。だけど、アタシはウィルガルムさんを裏切りたくないんだ。だから、それは魔王軍時代のよしみでサービスしてあげる」


「……ありがとう……お礼に、ビーボルブの地酒を送ってあげるよ。時間がある時、また一緒に飲もう」


「……その時はどちらかが勝って負けた時、だね……楽しみにしている。頑張りな」と、笑顔を覗かせた。


「いい友達だね!」ソフィーは安心した様に笑い、それにつられてスティーブも微笑んだ。


「親友よ……フラットマン!! 酒の件、頼んだよ!!」


「俺を配達員代わりにしないで欲しいんだけどねェ……」フラットマンは腰を痛めながらグレネードの入った木箱を馬車へ積み込み、うんざりした様に唸った。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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