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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第5章 バルバロンの闇と英雄の卵たち
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9.スティーブの物語 Year Two 特殊な使い手

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 4人は作戦会議の為に食堂へ向かい、小さな円卓を囲んでいた。


「で、依頼内容を詳しく説明してくれるか? 魔王軍絡みだと、どうせ複雑なんだろ?」スティーブは額に氷水の入ったグラスを当てながら口にする。彼は以前、魔王軍絡みの仕事を引き受けたが、依頼書を詳しく読んでいなかった為、仕事は失敗扱いにされて前金しか貰えなかった経験があった。


「複雑? まぁブリーフィングは大事だから説明してやろう」ボビーは喉を鳴らし、懐から作戦書類を取り出して目を走らせる。


 とある研究所から3人の属性使いが逃げ出した為、連れ戻すのが目的であった。が、その3人が激しく抵抗する場合は殺害の許可が降りており、最低1人を捕縛すれば良いと言われていた。


「なんで最低1人は捕縛しなきゃいけないんだ?」朝食セットを注文したマーヴがサンドイッチを食べながら問う。


「3人とも同じ特性を持った水使いのクラス2だからだ。研究所が必要としているのは1人だけ。まぁ出来れば3人とも捕まえて欲しいが、脱走の際に16人ほど職員が殺されている。中々の実力者故、簡単にはいかないだろう」


「成る程……まぁ、出来るだけ生け捕りにするさ」スティーブは水を飲みながら彼の説明を聞き、二日酔いの鈍痛に悶えた。


「で、作戦内容はこうだ。1人ずつ叩く。お前らハンターが囲んで戦う。隙を見せたら、我々で用意した封魔の首輪を嵌める。マリー、持ってきたな」ボビーが問うと、今迄、机に突っ伏していたマリーがガバッと起き上る。


「ぅわ、忘れた!!」未だに酒で燃え上がる眼をグルグル回しながら叫ぶ。


「貴様!! キャンプを追い出された上に作戦に重要なモノを忘れて来たのか!! だから貴様は出世できんのだ!!」ボビーは額に血管を浮き上がらせながら怒鳴る。


「余計なお世話だ!! こんな軍で出世が出来たところで、たかが知れているわ!!」マリーはやはり酒が残っており、本音を怒鳴り返した。


「なんだとぉ!!」


「まぁまぁ、落ち着けって! 2人とも朝飯食ってないだろ? だからイライラしているんだ」マーヴは2人を抑えながらおすすめ定食を3人前注文する。


「イライラの事なら昨日からずっと煮えたぎっているから、この調子だと治まらないわ」マリーは鼻息を荒くさせながら腕を組み、眼前の軍曹を激しく睨み付けた。


「食ったら作戦開始だ。終わったらお前の事は報告するからそのつもりでいろ!」と、ボビーも睨み返しながら食事が来るのを待った。


「おっかねぇ~ あんたも、何杯飲んだらそんな風になるんだよ」スティーブの問いにマリーは指を2本立てた。「そんだけ?」


「2樽」


「まじかよ」




 昼飯前になり、黒勇隊情報部からの報告書を片手にボビー軍曹を先頭に4人は潜伏場所へと向かった。そこには3人の内の1人が隠れていた。その者は研究所からの脱出の際に一番職員らを殺した危険人物であった。


「水使いか……クラス2だったら、俺たちでもなんとかなるな」マーヴは拳を唸らせながら自信ありげに唸る。因みにクラス2は属性使いと呼べるギリギリのラインであった。


「特性って言うのは何なんだ?」前から気になっていた事をスティーブが問う。


「なんでも、触れた相手の肉体、水分を通して思考や経験を読み取る事が出来る。更に魔力を込める事で洗脳も可能との事だ。研究所は、こう言った特性の使い手を集めて研究している施設だ」ボビーは淡々と口にする。


「触られたらヤバいって訳か。気を付けよう」スティーブは手の中でブースターを回しながら口にする。


「それ、何?」マリーはエレメンタルガンの調整をしながら問う。


「あんた魔王軍だろ? 知らないって事は量産されてないんだな」と、スティーブはエレメンタルブースターの事を軽く説明する。


「よくそんな欠陥品を使えるわね」


「適合しているみたいだから、うまく利用しているだけさ」と、話している間に潜伏場所である廃坑道に辿り着く。この行動はかつて、魔石が大量に眠っている場所であり、今は掘り尽され、野生動物の住処と化していた。


「ここで間違いないな。出番だぞ、ハンター。お前もいけ、マリー」と、ボビー軍曹は2歩下がった。


「閉所での戦闘は不利にだな。どうやって炙り出すか……」スティーブは悩む様に唸り、マーヴも両腕の筋肉を唸らせたが、攻め方が浮かばず、攻めあぐねる。


「役に立たないハンターだこと」と、マリーは懐から小型グレネードガンを取り出し、廃坑道へ向けて1発放つ。それは坑道内の奥へと向かったが、爆発音も何の手応えもなくカランとした音だけ響いた。


「何を撃ったんだ?」マーヴが腕を組みながら首を傾げる。


「悪臭ガス弾よ。堪らず出てくる筈」


「出て来なかったら?」スティーブが問うと、マリーがグレネードガンにもう一発装填して構える。


「この焼夷弾をお見舞いする。今撃ったガスに引火するから、坑道が吹き飛ぶぐらいの大爆発を起こすわ」トリガーに指をかけ、目を光らせる。


 すると、坑道の奥から統一感の無い服装をした男が現れる。顔を押さえながら怒りに満ちた表情をしており、いきなりマリーに向かって殺気を飛ばした。


「こいつがお目当てのヤツか。妙なファッションセンスだな」マーヴはやっと出番だと言わんばかりに構える。


「逃走の際に特徴的なローブを脱いで服を盗んだのだろう」4歩引いた場所でボビーが腕を組んで観察し、データを取っていた。「さ、はじめろ」


「言われなくてもやってや、ら……」マーヴが意気揚々と一歩前に出ようとした瞬間、回れ右をして急にマリーに襲い掛かった。


「な! 何をするの!!」と、彼女はエレメンタルガンを抜きながらも発砲は出来ず、抵抗できぬまま顔面を一発殴られる。


「おいマーヴ!! 何をしてや、が……」と、スティーブは首元にひんやりとした感触を覚え、頭の中が何者かの声で塗りつぶされる。


 眼前の標的からは細い水の触手が生えており、それがスティーブとマーヴの首筋に刺さっていた。さらにもう1本がマリーへと伸びていた。


「遠隔操作も出来るとは厄介だな」ボビー軍曹はこの様な事態になっても手を貸そうとはせず、静かに観察を続けていた。


「こいつ!」と、マリーは怯みながらもすぐさまグレネードガンを構え、坑道へ向けて焼夷弾を放った。次の瞬間、廃坑道が凄まじい火炎を噴射させ、標的の男の背後を焼き尽くして吹き飛ばした。その衝撃で水の触手が断ち切れる。


「今だ!!」と、スティーブはブースターを胸に刺す。次の瞬間、彼は雷の化身となって襲い掛かり、標的の顎を打ち抜き、一発で気絶させた。その間、0.2秒であり、すぐさまブースターを停止させる。彼はこの1年で使いこなしており、最長で30秒以上の持続を可能としていた。


「とりあえず、ひとり、だな! マーヴ、大丈夫か?」と、倒れた彼を引き起こす。


「あ、頭ン中が……こいつの声? で、埋め尽くされて……俺は何をした?」己の拳に残った手応えを不気味に思って問う。


「あたしの顔面に1発見舞った……詫びに1杯奢れよな!」と、頬を摩りながら血唾を吐く。


「1杯で許してくれるのか?」


「訂正、1樽の間違い」


「で、あと2人だな? 居場所は調べがついているんだよな?」スティーブは得意げに口にしながら稲妻の燻る拳を摩る。


「あぁ。この調子なら今日中に片付きそうだ」と、ボビー軍曹は速足で近づく。その足のまま気絶した標的へと駆け寄り、エレメンタルガンを構えてその者の頭を撃ち抜いた。


 それを見たスティーブは仰天しながら目を剥いた。


「おいおいおい!! 捕縛するんじゃないのかよ!!」


「こいつは研究所の職員を10人以上殺害した。この作戦の際、こいつだけは殺せと頼まれたほどだ」と、煙立ち上る銃口を吹き消し、回れ右をする。


「死体はどうするの?」マリーが呆れながら問う。


「後で研究所の者らが回収に来る。今、連絡を入れる」と、エレメンタルガンのモードを切り替え、信号弾を撃ち出す。


「……そう言うのは最初に言えよな……で、次の2人は捕縛でいいんだよな? 片方は殺せ、とかないよな?」スティーブは少々憤りながら口にし、拳を握る。


「安心しろ。次の2人は捕獲で構わん」と、そのまま4人は次の潜伏場所である小さな村へと向かった。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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