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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第5章 バルバロンの闇と英雄の卵たち
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1.ケビンとバルバロンの反逆者たち

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 神器争奪戦から3か月後、聖地ククリス。


 世界王クリスは玉座に深々と腰掛けながら、正面で跪く各国の王たちを見下ろしていた。その中にはパレリア、グレイスタン、グレーボン、バンガルド、イモホップなど錚々たる王たちが集結していた。5年に1回の世界会議の日でも無かったが、クリスは世界王の命令だと高らかに号令を発したのである。


 それを光の議長にして彼の叔父であるシャルル・ポンドが抑えたが、その制止も無駄に終わり、世界中から集められた。


 クリスは満足げに微笑み、今後の世界のあり方を説く。


 まず、魔王の国であるバルバロンを孤立させる為に東西南の3大陸同盟を聖地ククリスを中心に成立させ、魔王包囲網を完成させる事。


 次に、各国王の意見を聞き、全て文章に起こして纏め、同盟の為の世界王直筆で契約書を書き、そして全ての王と大臣に目を通させ、印を押させる。これにて初めて同盟が成立する事となる。この時、討魔団の司令官ラスティーの息のかかる国王らは口裏を合わせ、同盟に賛成して印を押した。


 ここまでに1カ月以上の日数を要し、普段の世界会議以上のイベントとなった。


 そして最後に、クリスは再び玉座の前にズラリと王たちを並べる。


 彼はこの同盟の功労者はラスティーである事を知っており、面白く思っていなかった。が、ここで彼は主導権を全て自分で握る事に決めた。



「諸君! この時に皆を集め、大規模な同盟組ませた真意を説明しよう」



 と、クリスは懐から光り輝く珠を取り出し、皆に見せ付ける。それは紛れもなく天空の監視者シルベウスより奪った『創造の珠』であった。これはシャルルにも内緒にしており、ここにいる者ら全てが度肝を抜いた。


「ほ、本物なのか?」


「あれが、神の力?! それが人類の手に?」


「さ、流石は世界王……っ」


 各国の王らは目を丸くし、口々に感想を述べる。その中でクリスは更に自分の力を誇示する為に口を開いた。


「皆の者、安心して欲しい! 私はこの力を使い、魔王を追い詰めて見事、討伐せしめよう! 更に、バルバロンを解放し、あるべき国の形、世界の形に戻そうではないか!」と、拳を掲げると、同時に拍手が鳴り響く。が、中には拍手の小さい王が数人紛れていた。グレイスタン王もその中の1人であった。




 会議が終わった日の夜、シャルルはクリスを自室へ呼び出した。


「何の用でしょう、叔父上?」したり顔を隠し、平静を装って入室する。


「その創造の珠は、本物か? どうやって手に入れた? あの戦争か? アレは破壊の杖を得る為の戦いではなかったのか?」シャルルは鼻息を荒くさせ、目を血走らせる。


「まぁ、そうだと言っておきましょう」クリスはソファに座り、足を組む。


「得た所で使えるのか?」


「いえ、神聖存在にしか扱えません」と、今わかっている事を小出しにする。因みに預言の石板片の事は誰にも伝えていなかった。


「ならどうやって、それで魔王よりも優位な立場に付けるというのか? 三大陸同盟を明るみにするだけでバルバロンと完全に戦争状態となるのだぞ? 勝つ見込みはあるのか?」


「待ってくださいよ叔父上? 北大陸バルバロン以外の全国で包囲しているのですよ? その上で神器を得たのはこちら。どう考えても我が方が優位です」


「浅はかな! バルバロンには賢者と互角以上の実力者たちに軍事力、科学技術、得体の知れない兵器の数々……更にナイトメアソルジャーという無尽蔵の兵力。本当に優位と言えるのか?」


「言えます。まぁ見ていてくださいよ、叔父上。戦いはこれからですよ」と、クリスは彼の肩をポンポンと叩き、退室する。


「……中々手の内を見せない甥だ……これでいいのだな、ラスティー……」シャルルは大きなため息を吐きながら頭を抱えた。


 部屋の外ではポケットの中で石板片を握ったクリスがほくそ笑んでいた。彼の辿る未来にラスティーはいなかった。


「これで完全に主導権は私のものだ……ここからだぞ、私が真の世界王となるのは!!」クリスはニタリと笑いながら執務室へと戻った。




 バルバロン国西部にある廃砦。ここでは20年以上前に最後の反乱が起こり、鎮圧され、勇者の時代は幕を閉じた。本来なら取り壊され、新たな砦や関所が立つ筈であったが、魔王はそれを許さず、勇者の時代の墓標のようにこの砦を敢えて風化するままに残していた。


 そんな廃砦にケビンが現れる。彼は相変わらず大剣を担ぎ、真新しいロングコートを着ていた。


「ここで、あっているのか? 本当にここに人がいるのか? 良くて賊の潜伏場所だろ」と、周囲を見回して鼻を動かす。「いるな」


 すると、今にも倒れそうな見張り塔から何者かが顔を出す。その者の手にはエレメンタルランチャーが握られていた。


「何者だ?!」と、銃口を向け、物騒な音を鳴らす。魔力の充填音が鳴り響き、引き金に指が置かれる。声は女性であった。


「討魔団司令官ラスティーの使いだ。オタクらを国外へ逃がせってさ」ケビンは腕を組んで胸を聳やかす。


「……あんた1人だけぇ?!」銃口を向けたまま目を真ん丸くさせ、愕然とした声を上げる。


「あー……そうだ」


「討魔団も人手不足ってトコロか?」ケビンの背後から何者かが歩み寄る。その者は彼よりも一回り大きく、筋骨隆々の青年であった。


「あんたがここのリーダーか? そんな匂いだ」ケビンは鼻を動かしながら彼に顔を向ける。


「あんたが魔王の手先でない証拠を見せて貰おう」と、背後の青年が指と首の骨を豪快に鳴らす。


「どうやって?」


「仲間に正体を見破るスペシャリストがいるんだ。が、彼女に見せる前に、あんたを気絶させる。不意を突かれて彼女を危険な目に遭わせる訳にはいかないのでな」と、一気にケビンの間合いに入り込み、拳を振るう。が、そこにはすでに彼はおらず、背後を取られていた。


「要人なのは良いが、少しは信用してくれ。ほら、指令直筆の指令書だ」と、指令書をヒラヒラとさせる。が、それには血が付いており、妖しさが際立っていた。


「何故それに血が付いている? 本物の使いから奪ったんじゃないのか?」


「あ……誤解するのも無理はないよなぁ……」頭を掻きながら苦笑いする。実際に、彼はここに来るまでに幾度も賊に襲われており、返り討ちにしながら賊のひとりからロングコートを奪ったのであった。その際に指令書が血糊で汚れたのであった。


「大人しく気絶するんだな。マリー、エレキ弾に切り替えろ」と、青年が指を鳴らして見張り塔の彼女に指示を飛ばす。


「了解。流れ弾に当たるなよ?」と、マリーはスコープを覗き込み、引き金を引く。


 次の瞬間、ケビンの周囲に3発ほどエレキ弾が着弾し、エレキトリックフィールドが展開される。アーマーベアを一瞬で捕獲できるほどのエネルギーが放出され、彼に襲い掛かる。青年はその爆発範囲を見切っており、すぐさま離れていた。


 が、ケビンは大剣を抜くことなく回転蹴りを放ち、その衝撃波だけでエレキ弾の魔力を掻き消した。


「ん~気絶するにはほど遠いかな?」と、にこやかに笑う。


「成る程。援軍だったら頼もしいが、敵だったら……この場で始末しなきゃな……」と、青年は懐から小さな機械筒を取り出し、スイッチを入れる。


「信じて欲しいんだけどなぁ~ ダメかい?」


「信じられないね。俺たちは何度も騙されて、ここまで数を減らしてきたんだ。残り8人だぜ? もう失いたくないんだ!!」と、胸に機械筒を突き刺す。すると、彼の全身に稲妻が奔り、目が発光する。その魔力はクラス4にも匹敵する程に強力であり、筋骨隆々の肉体が更に強靭さを帯びる。


「なんだそれ? クラス1程も感じなかった魔力が……?」


「あんたが実力者なら、手は抜けないからな? 覚悟しろよ!!」と、青年は走る体勢に入った瞬間、その場から稲光を残して消え去った。


 瞬く間にケビンの腹部、顔面が歪み、血煙を残して吹き飛ぶ。代わりにそこには蒸気を上げる拳を引いた青年が姿を現した。



「俺の名はスティーブ・サンダーブレードだ」



 ケビンは吹き飛びながらも受け身を取りながら着地し、スクッと立ち上がった。


「俺は討魔団のケビンだ。よろしく」と、血唾を吐いて微笑んだ。彼は未だに大剣は握らず腕を組んだままだった。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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