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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
507/600

200.創造の珠を手にした者

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ゴッドブレスマウンテン山頂の宮殿にて、ここ数百年ぶりにシルベウスは焦って追い詰められていた。ノインの肉体の再構築の為に力の半分以上を消耗し、彼女の代りに荒れ狂う大海原のコントロールをしていた。魔王を目の前に追い詰めようとしたが、逆に自分の切り札であるアリシアの方へと逃げられてしまい、彼は今までにない程に焦っていた。


「くそ! アリシア!! アリシア!! 応えろ!!」シルベウスは念波を何度も送るが、彼女は全く応答しなかった。


 彼女に意識を向け続ける事は出来ず、彼は直ぐに大海原のコントロールを続ける。海底神殿による制御が無くなったため、完全に海は地獄と化しており、人間だけでなくあらゆる生物の被害が甚大になっており、その二次災害で冥界へ向かう魂が飽和状態となり、ヘリウスが悲鳴を上げる事態となっていた。


 この出来事は後に『神々の大失態』と後世へと続く事になる。


「海を制御するのは久々で上手くいかんな……海底神殿消滅による均衡が崩れて……やってくれたな、魔王!!」と、水晶玉でアリシアがいる筈の空を見る。大空は全体的に嵐と暗雲で覆われている為、何も見えなかった。


「ノイン!! まだ肉体の定着は終わらないのか!!」背後の台座で寝そべる彼女に怒鳴りつける。


 その声に応えるように彼女の手がカタカタと動き始め、高速で瞬きを始める。それを合図に首、上体、脚と動き始め、ガバッと起き上る。


「喧しいな……確かにこんな異常事態は数世界ぶりだ……よし、海は任せて」ノインはスクッと起き上るとローブを纏いながら下界の様子を確認する。「私と海底神殿が無くなると、こうまで酷い世界になるのか……」


「これでも私が制御していたんだがな……少し休ませて貰おう」と、ヨタヨタとした足取りで椅子に近寄り、腰を下ろす。


「海底神殿と共に破壊の杖が吹き飛ばされたが、アレは無属性を弾く。あとで捜索にいかなければな」両手に神通力を纏い、急いで大海原の荒れを抑える。瞬く間に嵐が消え失せ、海は徐々に穏やかさを取り戻していた。


「それはお前がやるんだな……私はしばらく……ん?」と、机にある筈のある物が無くなっているのに気付き、目を剥く。


「どうした、シルベウス?」



「あ……あ、あ、あ、あの……創造の珠……ここに置いた創造の珠はどこだ?」



「お前が管理しているのだろう? それに私は肉体の定着中だったから触りようがない」ノインは顔を向けずに口にした。


「創造の珠が盗まれた……」シルベウスはこの世界始まって以来の最大の失態を犯し、両手で顔を覆った。


「…………は?」あまり人の事を言えないノインは顔を歪めながら彼へ向き直り、額に血管を浮き上がらせる。


「魔王の策に気を取られていたが、創造の珠を狙っていた奴が他にいたって事だ……」シルベウスは両手で顔を覆い隠したまま唸る様に口にした。




 20分ほど前。マーナミーナ国のホーリーレギオンズ基地。この基地に設置された大砲には魔力エネルギーが充填され、あとはボタンだけで発射が可能であった。その大砲の中へフルアーマースーツを着込んだクリスが武者震いを押さえながら入って行った。この大砲を設計した者、基地で防衛に付く者、そしてミラも彼の考えはイカレていると思い、皆が皆、首を傾げていた。


 が、誰も彼を止める者はいなかった。止めても彼は話を聞かず、半数以上は彼の事を嫌っていた。嫌うだけでみすみす死なせるわけにはいかなかったが、シャルル・ポンドの口入で好きにやらせるように命じられていた。


 クリスが命じた時間と共にボタンが容赦なく押される。


 すると、巨大な大砲から紫光が光り輝き、極太の無属性エネルギーが放射される。その勢いは南西へ一直線に飛んだ。パレリア上空を通過し、その砲撃は聖地ククリス方面へ向かう。が、エネルギー波はククリスを掠りもせずに更に直進する。


 そのエネルギー波の中を、なんとクリスは悠然と泳ぎ、超高速で直進していた。彼自身、ヘルメットの中では大汗を掻いていたが、意外と快適且つ全て計画通りに事が運んでいた為、笑みがこぼれていた。


 彼の思いついた策というのが、無属性エネルギーの中でその勢いに乗って高速移動する事であった。無属性の中でなら空気抵抗で負担がかかる事も無く、魔力エネルギーが続く限り飛ぶことが可能であった。アーマー側は対無属性シールドで覆われている為、消滅する事はなかった。故に無属性砲が飛ぶ限りクリスもそれに乗って飛ぶ事が可能であり、目的地まで数分で到着する事が可能であった。無属性砲は焼く半刻で世界を一周する事が可能であり、目的地までは十数分で到着であった。


「もうじきだな」腕時計の様に装着した座標計算機を目にし、目標の座標まであと数百メートル地点まで接近し、彼は無属性エネルギーの外へと飛び出す。


 すると、凄まじい空気抵抗と共に彼の身体に負担がかかる。が、彼の装備するアーマーは飛行用に設計された代物であり、魔力の続く限り賢者の様に空を飛び回る事が可能であった。


 彼の目指す場所はゴッドブレスマウンテン山頂であり、そこへ向かって突撃し、宮殿上空で急停止する。そのまま急降下していき、アーマーに仕込まれたウィンドクリスタルによる無音着地機能でふわりとも音を立てずに宮殿へ侵入する。更にアリシアの使っていた光を屈折させて実現する透明化魔法を身に纏う。


 彼はそこから息を止め、予言の石板片に導かれるままに歩みを進める。今まさにシルベウスと魔王が対峙し、暗黒と光が繰り返され、魔王が影へ消えると同時にクリスはそこへ足を踏み入れる。シルベウスがそこで創造の珠に一瞥をくれ、大海のコントロールへ移る。


 全ては預言の石板片の示すとおりであり、クリスはそのまましゃがみ歩きで接近し、ついにその手に創造の珠を手に入れる。その形はまさに予言通りであり、彼は笑いを堪えるのに必死であった。


 その後、彼はゆっくり且つ無駄な動きなく宮殿を後にし、ゴッドレスマウンテンから身を投げた。


 宮殿で彼に気付き後を追う者はおらず、もしミランダを傍に置いておけば起こらなかった窃盗事件であった。


 そのままアーマーの飛行機能を使って飛行して下山し、着地した瞬間、フルフェイスを開き、外の空気を胸一杯に吸い込む。



「ふはははははははははは!!! やったぞ!!! 俺は、やったんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



 クリスは汗だくの前髪を掻き上げ、ぐにゃぐにゃに歪んだ笑顔のままに邪悪に高笑いをした。手には人類が手にしたことの無い創造の力が確かに握られており、預言通りの絵であった。


「どうだ叔父上!! どうだ魔王!! どうだ!! ラスティー!!! この大戦を制したのはこの私、クリス・ポンドだ!!!」


 彼は世界王としてではなく、自分として成し遂げ、戦いに打ち勝った為、今までにない達成感で心を満たし、笑いながらも涙を流していた。




「この戦いで創造の珠も破壊の杖も失ったのか……」シルベウスは数世界ぶりの敗北感を味わい、膝を折っていた。


「いや、まだ破壊の杖は人類に渡ったわけではない。それに一番肝心な事をお前は忘れている」ノインは取り乱さずに大海原のコントロールを続け、大シケを収めつつあった。


「いや、忘れていない……いないが、連中に神の力を盗まれたってだけでな……神聖存在としてのプライドが……な?」


「お前に傷つくプライドなんてあったのか」


「なんだとぉ?」と、シルベウスはいつもの調子を取り戻し、クリーム入りメロンパンをどこからか取り出し、齧る。「アレを手に入れた所で、人類では使う事ができないんよな~」と、鼻を穿りながら甘いため息を吐いた。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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