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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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196.創造の珠争奪戦 魔王VS天空の監視者

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ


 魔王は勝ち誇った様な笑みを蓄えながら影から現れ、一歩一歩、宮殿の中を練り歩く。


「神聖存在の割には簡素な造りの宮殿だな」と、絵の一枚も飾られていない壁を見て鼻で笑う。


「招いてもいないのにズカズカ入ってくるとは、礼儀知らずだな」シルベウスは力の抜けた腕と足を振るい、何とか弱味を見せない様に振る舞う。彼は大体8割ほどの力を使っていた。が、それでも神聖存在と言う事もあってか、賢者以上の存在感があり、魔王でも簡単には近づけなかった。


「20年以上前になるな……創造の力には世話になった」と、彼は指先から闇を滲ませる。


「まさかお前が闇属性を願うとはな……私利私欲の願いは叶えない様に調整してあったのだがな」


「その通り、私利私欲で闇を願ったわけではないのだ。俺様は世界平和の為にこそ願ったのだ。希望の龍の像はそれを理解し、俺様に闇属性を与えた、いや、返したのだろう」


「その言い方、遥か昔の話を知っている口ぶりだな」


「勿論。俺様はクラス5となり、闇の中であらゆる話を聞いた。遥か昔の戦いや、お前らの犯した過ち……恨み辛みはまぁ置いておいて……俺様はこの世界をお前らから解放する」


「くだらんな!! お前の言う平和や解放はまやかしに過ぎない! 私は13世界以上もの世界を見て、お前みたいな奴を飽きるほど見て来た! どいつもこいつもつまらない独裁者となり、無様な最期を遂げた! お前のそのくだらん野望の為に世界を巻き込むんじゃない!!」シルベウスは声を荒げて怒鳴り、一歩だけ魔王に詰め寄る。


「くだらんだのまやかしだの……地上に降りてきて見てもいないクセに言いたい放題だな? お前の放った覇王が何をしたか知っているか? 戦争を世界から取り上げ、つまらん世界にしたぞ! 地上の事は全て使者に任せ、自分は高みの見物か? あぁ、そういえば一度地上に降りてきて大失敗したんだっけなぁ?」魔王は余裕の笑みを張り付けたままシルベウスの顔を覗き込んだ。


「貴様……」


「で、話を戻そう。創造の珠はそこだな? 今やお前の力は半分以下……俺様の力でもお前を出し抜く事は容易だ」と、彼の背後にある創造の珠を覗き見る。


「これは決してお前には渡さんぞ。たかが魔王如きが!」


「今や俺様は魔王以上。闇の支配者と言ってもいいだろうな。そんな存在なら、天空の監視者ぐらい倒せそうなモノだ」魔王はまた更に一歩近づく。足元や宮殿内の影からは闇がジワジワと広がっており、魔王の領域になりつつあった。



「お前の様な闇使いは、飽きる程相手にしてきた」



 シルベウスはが指を鳴らすと、宮殿中が光で包まれ、魔王の闇が一気に消え失せる。


「光魔法か? いや、違うな……」と、激しい光に照らされた魔王は腕をクロスさせて顔を背ける。


「お前の居場所は闇の中だ。それを奪えば、力は半減する。それに、ここまで光を叩き付けられれば、そう上手くは動けまい」と、魔王を鼻で笑う。


「残念だ……お前は俺様を侮り過ぎだ!」と、腕を力強く広げる。すると、彼を中心に宮殿中に爆発した様に闇が広がっていき、全てを暗黒色に塗り潰す。更に光の発生元である天井すらも真っ黒に染め上げ、光が完全に遮断される。


 彼の闇の力はバルバロン全土に届く程に広大なモノであった。その力を今はここへ来るためだけに一点集中している為、全ての力を解放したらこんなモノでは済まなかった。このゴッドブレスマウンテンはおろか西大陸の半分以上を闇で覆う事が可能であった。


「魅せたがりの魔王だな。だが、神聖存在を舐めないで貰おう」と、手足から光を放出させ、一気に魔王の間合いへと詰め寄る。


 魔王はすぐさま闇の中へと姿を隠し、明後日の方向からダークブラストを放つ。


「無駄だ」と、魔王の放った闇の奔流を簡単に弾き、魔王の気配の方へ光球を投げつける。着弾した瞬間、一気に宮殿内が光に包まれ、魔王の居場所を奪う。


「成る程。お前にとって明るかろうが暗かろうが関係ない、と」


「お前が動きやすくするのが気に入らないだけだ」と、また指を鳴らす。同時に宮殿内が再び光が照射され、魔王に襲い掛かる。


「なら、俺様にもこんなモノは意味がないと証明してやるか!」と、眩い光の中で魔王は駆け出した。


 彼はダークブラストを放ちながら自分の領域を広げて行き、シルベウスに闇魔法を浴びせかかる。


 が、シルベウスにはいかなる闇属性や呪術は効かず、鬱陶しそうな表情で魔王を睨み、腰を落とした正拳突きを放つ。


「ぐぉう!!」不意の一撃を脇腹に喰らい、距離を取る。


「この手応え、対して身体は鍛えていないらしいな」シルベウスは呆れた様にため息を吐く。


「この身体になって、鍛える必要が無くなったと思っていたが……甘かったか……」と、冷や汗を掻きながら距離を取る。彼は言葉の通り、クラス5になってからは呪術研究や魔力増幅、技術の探求に費やしていた為、身体を鍛える事はしていなかった。そもそも、どんな強力な物理攻撃も闇と成って受け流せた。最後に殴られたのは4年前、ナイアに光の拳を顔面に喰らった以来であった。光属性を纏っていない攻撃は無力化出来たが、何も纏っていない拳を喰らうのは実に20年以上ぶりであった。


「言っておくが、魔力循環で身体を強化しても無駄だぞ? 神聖存在は全てのルールを無視できるのでな」と、シルベウスは中肉中背の優男の姿から筋骨隆々に姿を変え、巨大な拳で襲い掛かる。ノイン同様、彼らは好きな肉体、性別、年齢、更には大きさに変わる事が出来た。


「見かけ倒しだな。神通力はこんなモノではないだろう?」と、ぬるりぬるりとシルベウスの攻撃を避ける。実際にその通りであり、シルベウスは万全の状態であれば理不尽な神通力で魔王から魔力を吸い取る事が出来た。本来なら属性を引き剥がしてただの魔法の使えない一般人に変えることも出来たが、魔王がクラス5である為それは不可能であった。


 それだけノインの肉体復活に神通力を使ってしまったのであった。


 が、シルベウスは一気に間合いを詰め、魔王の上半身が吹き飛ぶ程の拳を5発めり込ませ、吹き飛ばす。魔王は血達磨になって無様に転がった。


「言った筈だぞ? 舐めるな」


「あ゛ぁ~……痛みはあるが……決定的ではないな?」と、鼻血を拭うが、数瞬で完治し、無傷になる。彼の言った通り、一時的な痛みはあるがダメージは皆無であった。



「お前はここで徹底的にお仕置きし、二度と地上には返さん」



 と、シルベウスは目を閉じた。




「アリシア、今だ!!」シルベウスの合図と共に彼女は大きく頷き、用意してあった光球を炸裂させる。すると、眼前のダークロードが真っ二つに割れる。ところどころで闇の糸が道を修復しようとしたが、アリシアはそれを全て断ち切り、完全に闇の道を分断した。


「終わりました! これで魔王はバルバロンヘは帰れません!!」


「よし、よくやった! 後は任せろ!」と、頼もしい声と共にシルベウスからの念波が途切れる。


「これで、終わる……これで、あたし達の戦いが……っ!」アリシアは両手を震わせ、どんな表情をしていいのかわからない複雑な表情を暗雲の影に隠した。空は未だに大嵐で雨が降り注ぎ、不吉の予兆を知らせる様に稲光が鳴り響いた。




「もうお前は逃げられんぞ」シルベウスは今から本気を出す勢いで指骨を鳴らし、今までにない鋭い眼差しを見せる。


「その様だな……ダークロードが途切れてしまった……」魔王もそれを感じ取ったのか、観念した様にため息を吐き、頭を抱えた。


「お前の様なクラス5は13世界を見てきた中で初めてだが、対処法はある。お前の精神を封印する。創造の珠につられて姿を現したのが運の尽きだ」


「残念だ……俺様はな、お前が俺様の気配に気付いている事に気付いていた」


「いや、私こそお前が気付いている事に気付いていた。故にここまでお前を、私がここまで疲れて隙を晒してまで引き吊り出したのだ!」と、シルベウスは魔王を封印する準備を完了させ、両腕から神通力を僅かに絞り出した。



「だぁかぁら、それを全てひっくるめて、気付いていたと言っている」



 魔王は再び勝ち誇ったように笑いだす。足元から闇が伸び出し、少しずつ沈んでいった。


「俺様が真っ直ぐ破壊の杖や創造の珠欲しさに、ここまで作戦を企てると思うか? まぁほしいが、それよりも優先して欲しいモノがあるのだ……」


「何だと? それはなんだ?」



「それはな、お前の大切に育てた光使いだ」



 と、口にした瞬間、魔王はダークロードへと瞬時に移動した。その先にいるのは、アリシアであった。


「な……?! し、しまったぁ!!!」シルベウスはここに来て初めて狼狽した。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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