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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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195.創造の珠争奪戦 真の狙い

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 デストロイヤーゴーレムが跡形もなく爆発し、嘘の様にその場から消え失せる。海底神殿が崩壊するのと同時に荒れていた海原がより一層荒れ狂う。先ほどまでは数年に一度の激し嵐であったが、それを超えた神話の世界の様な国を飲み込む勢いの大嵐と化し、竜巻が海原を抉り、魚どころか鯨までもを上空へ巻き上げ、雷が大地を殴りつけた。


「やったみたいね、ウィル」バルバロン国内、ロキシーが統治する地域の城内にて主である彼女は絨毯の敷いてある上に座り込み、目を閉じて集中していた。


 今回の戦いにて彼女並びにナイトメアソルジャー達が参加しなかったのには、彼女には重要な役割りがあるからであった。それは『冥界へ向かう前にウィルガルムの魂を呼び寄せる』事であった。


「前もって冥界へ向かう様にアドバイスをしておいたけれど、言う通りにしてくれたかしら?」と、冥界の入口へと意識を集中させ、彼の魂の気配を探る。死後の魂には冥界へ向かうか、現世に留まるか選択する事が出来た。現世に留まった魂を探すのは非常に困難であった。が、冥界へ向かう魂は待ち伏せれば確実に見つける事が出来る為、ウィルガルムには大人しく冥界へ向かう様に指示してあったのである。


 しばらくすると、数日前に確認しておいたウィルガルムの魂を感じ取り、それを自分の元へ吸い寄せる。


「見つけた!」冥界へ吸い込まれる前に手繰り寄せ、自分の手の中へ納める。傍らに用意しておいた容器の中へ青白い魂を入れ、蓋をする。


「さて、新しい貴方は果たして、いつもの貴方なのかしらね?」ロキシーは普段の冷たい笑顔とは違った柔らかな笑みを覗かせた。




「嵐の激しさが変わったな」迫りくる嵐や竜巻、津波を薙ぎ払ってきたロザリアは片眉を上げ、首の骨を鳴らす。眼前には世界を喰らう勢いの大口を開けた様な大嵐が迫り来ていた。大竜巻が数十本も立上り、建物を破壊する勢いで雨が横殴りに吹き荒れ、更に稲妻が龍の様に暴れ狂っていた。この天災を大地へ上陸させたら、間違いなくこの港町はひっくり返り、甚大な被害が出るのは明白であった。


「何が来ようと、私はここを守るだけだ!」と、魔刀蒼電と魔剣王風を両手に振り上げ、天災から来るエレメンタルを剣に集中させる。すると、彼女の両腕には巨大な属性エネルギーの刃が生えた。ロザリアはそれを両手に広げて構え、目をギラつかせた。そんな彼女の身体からは今までにない程の殺気が正面の天災に匹敵する程に立上った。


眼前の天災が龍だとすると、彼女はそれを打ち破ろうとする鬼と化していた。


「来い!!」彼女は大地に己の脚を踏みしめ、勢いよく剣を振るった。




 その頃、ゴッドブレスマウンテン頂上の宮殿ではノインが大慌てでシルベウスに掴みかかろうとしていた。が、彼女は霊体である為、すり抜けるだけであったが、鬼気迫る表情で彼に怒鳴りつけていた。


「シルベウス!! 私の海底神殿が破壊されてしまったぞ!! これは予想外だった!! あいつら、破壊の杖が狙いではなかったのか?!」ノインの肉体並びに神殿を破壊されると、完全に海が彼女の手から離れてしまい、大海原は完全に制御不能になってしまうのであった。その為、海は先ほどよりも荒れ狂ってしまい、大陸の形を変える勢いで岸壁を削り、海岸や港に襲い掛かっていた。


「これが狙いか……我々を追い詰めるとは、やってくれるじゃないか……魔王め」シルベウスは悔しそうに拳を握り込んでいた。


「駆け引きしている場合か!! 早く私の肉体を創れ!! じゃないと、破壊の杖を使うまでも無くこの世界が滅ぶぞ!! この被害で冥界も大変な事になっているだろう!!」彼女の言う通り、この嵐で数十万人以上も被害が出ており、魂の半数以上が冥界へと雪崩れ込んでいた。それにより冥界は大変な騒ぎになり、ヘリウスはこの駆け引きに参加できず悲鳴を上げていた。


「わかった……だが、いいか? 俺が創造の珠を使えば、隠れ潜む魔王が姿を現すだろう……2人でかかるぞ」


「お前も経験済みだろうが、霊体と身体が定着するのに時間がかかる。それに、創造の珠で神聖存在の身体を作るには神通力が相当必要だ。私が加勢する前に、隙を見せない様にするんだ」ノインは彼に警告し、神殿の影に潜む気配を睨み付ける。


「わかっている……ヘリウスもいればな……」


「魔王ひとりに対して我々がここまで追い詰められてどうする。我々は神聖存在であり監視者だ! 奴に侮られるな」


「身体を破壊されたお前が言うな」シルベウスは余裕を取り戻そうと皮肉を口にしながら次元の狭間へと隠した創造の珠を取り出す。それは虹色に艶やかに輝いていた。


 シルベウスは目を閉じ、身体全身から魔力とは違った別の力を滲み出す。それは一般人には使う事が不可能とされる神通力であった。この力が創造の珠を巧みに操り、神聖存在の肉体を形作っていた。


 その作業を影で魔王が覗き見ており、チャンスを今か今かと待っていた。




「準備は終わっているな?」マーナミーナのホーリーレギオンズ基地にてクリスがワクワクを抑えきれないように笑みを零しながら大砲の整備士に向かって問うていた。


「はい、いつでも行けます! が、確認ですが……本当にこの方角でいいんですよね?」と、首を傾げる。彼を始め、この巨大な大砲の座標計算をした者達は皆、この方角を指示してきたクリスの命令に首を傾げていた。方角的には聖地ククリスへ向かっている様には見えたが、正確には聖地からは外れていた。


「何度も言わせるな!! これで良いのだ!! さて、私も腹をくくらなければな!!」と、彼は最新鋭のアーマーを着込み、ヘルメットを被った。このアーマーは魔王軍の技術を盗み取って作ったモノとは違い、完全にホーリーレギオンズオリジナルの武装であった。


「ですが、この技術は幾度もテストを繰り返しましたが……クリス様自らが使うには余りにも危険ですが……」


「何を言う!! これでいいのだ!! 私の計算では、無事に作戦は成功する!! そして……ふははははははははは!!!!」と、クリスは高らかに笑い、作戦準備を進めた。彼の懐には未だに預言の石板の欠片が仕舞われていた。そこから読み取れる未来は未だに変わっておらず、彼の手には創造の珠が握られていた。




 バルバロンからゴッドブレスマウンテンを結ぶダークロードの傍ら。凄まじい嵐の元、アリシアは雨に打たれながらその場でじっとしていた。彼女は光の保護で嵐や竜巻に巻き込まれる事なかったが、それ以上に目の前の闇の道に肝を冷やしていた。


 この先に確実に魔王がいる。そう思うと手足が震え、奥歯がカタカタと鳴っていた。


「これが上手くいけば、魔王は討たれ、この戦いは終わる……でも、本当に終わるのかな……? シルベウス様、本当に終わるの?」と、今迄の知識が、世界を旅して見て来た景色や人々が脳裏に流れる。



「本当に世界は、平和になるの……?」



 アリシアは素朴な疑問に苛まれ、また心に暗い影を落とす。彼女は毎日の様にこの問いを自分自身に投げかけては頭を悩ませていた。これを考える度に今迄の自分たちの旅の意味を考え、涙していた。


 が、手の中には未だにヴレイズの炎の温もりが残っており、仲間たちの顔を思い出す。


「そうだよね、難しい事は考えなくていいんだ……魔王を討ち、そこから考えればいいんだよね、うん……」と、拳を握り込み、シルベウスからの連絡を待った。




「よし、完成だ」台座の上には顔の無い神聖存在の肉体が横たえられていた。そこへノインの霊体が入り込むと、カタカタと痙攣を始める。同時にシルベウスは数百年ぶりに疲労に襲われて膝が抜けて跪きそうになる。


 が、背後から邪悪な気配が伸びてきて、そこへ向かって振り返る。


「常に背後から覗き込みやがって……今回の世界の魔王は相当臆病な様だな」と、背後の影に向かって話しかける。


「天空の監視者とあろうものがお疲れの様子だな、シルベウス」影からは真っ黒なスーツを身に着けた魔王が涼し気な表情で現れた。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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