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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
492/603

185.創造の珠争奪戦 作戦開始!!

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

「随分と楽しそうな顔をするのだね、君は。私は負けろ、と言ったのだが?」シャルルはラスティーの表情を伺い、何か懐かしいモノを感じる様に微笑んだ。


 ラスティーはその表情のまま頭を押さえ、天井を仰いだ。


「大戦を前にした司令官に対して負けろって普通、言いますか?」


「普通は言わないな。だが、それに対して怒るか、困惑するのが普通だが……?」


「好奇心が勝ったというか……まず事情を聞かせて下さい」と、ラスティーは落ち着くために煙草を胸一杯に吸い込み、喉を鳴らして用意された紅茶を飲む。


 シャルルが言うには、世界王クリスの持つ預言の力は不安定であり、自分が見たい瞬間の未来をダイレクトに見る特徴があると語った。その未来がどんな過程を辿っていても、クリスは自分の見たい結果のみを知る事が可能であった。


「成る程……つまり、俺が無様に負ける姿を今の内に見せてやれ、と? ……って、それは難しいな」今迄の無理難題の中で特殊なパターンであり、内心頭を抱えていた。


「あいつは自信過剰で完璧主義者だ。自分の手に入れたいモノを手に入れた未来が見えるまで策を張り巡らせる筈だ。それをラスティーと私で見せてやるのだ」シャルルは淡々と口にし、葉巻の煙を吐く。


「簡単におっしゃりますが……何か策でも?」


「あぁ、簡単な策だ。邪魔をしてやらない事だ。更に言うと、魔王軍の注意を引いてクリスのやりたいようにやらせてやるんだ。そうすれば、あいつの見たい未来を見せる事が可能なはずだ」


「成る程……じゃあ、そこまで策は変えなくていいな。が、貴方からのコンタクトが無ければ、俺は良い様にされていたって訳だ……」


「私からも援護は送ろう。賢者2名を自由に使ってくれ給え」


「その2人は本部の防衛に寄越して頂ければ……だが、あえて負けるか……」ラスティーは2本目の煙草に火を点け、思案にふける様にソファに踏ん反り返る。


「わかりやすく敗北しているような姿を見せればいい。迫真の敗北を見せてやれ」


「……俺もグレイスタンでクリスに会ったが、そこまで愚かには見えなかった……わかりました、やってみましょう」と、ラスティーは煙草を灰皿で消し、紅茶の最後の一口を飲み干す。


「精々、あいつの見たがっている芝居を見せてやってくれ」と、言い終わると同時に彼の加えていた葉巻がゆっくりと燃え終わった。




「で、どうやって負けるんだ?」マリオンが問うが、ラスティーは意地悪そうに微笑んだまま口を継ぐんだ。「秘密か」


「勿論。だが、俺はただで負ける様な真似はしない。作戦は成功させた上で、上手に分かり易く負けるつもりだ。誰も犠牲を出さないようにな」


「それはすごく難しくないか?」マリオンは首を傾げながらも別のカルテを捲りながらチェックを進める。


「ま、それは後のお楽しみって事で。あとの事はエディに任せてある」


「エディに? 彼には全て話してあるのか?」


「いや、俺に万一の事があればって話だ。お前もそれに合わせて動いてくれ。いいか? 俺の敗北は迫真でなくてはならないんだ」


「敵を騙すなら味方からってヤツか……まぁ、精々上手に芝居をしてくれ。だが、敗北する上で誰も犠牲を出さないというのは無理な話じゃないか?」訝し気な表情で問うマリオン。


「そこは俺の策の見せ所ってヤツさ。まぁ、見ててくれ」と、いつの間にかラスティーは診療室を後にしていた。ドアが閉まり、マリオンがひとり部屋に残される。


「……まーたひとりで背負うつもりか……ま、好きにさせるけどさ」彼女は半ばあきらめた様にひとり呟いた。




 ミッドオーシャン上空、討魔団の輸送機団は嵐の中、順調にデストロイヤーゴーレム目掛けて飛行していた。ベンジャミンの設計した輸送機は突風や雷で煽られてもバランスを崩さなかった。が、乗組員らは轟音に冷や汗を掻き、雷に肝を冷やしていた。


「戦うのは平気だが、こう言うのは苦手だな……わかる奴いる?」


「わかる……地震とかも苦手だわ……なんでだろ?」


「天災とか、人の力ではどうにもできないヤツだからじゃないか」


「それをどうにか出来るのは賢者くらいなもんだろ」乗組員らは軽口を叩きながら乾いた笑いを漏らした。彼らは嵐や地震は怖がったが、眼前の戦いは恐れず前を向いていた。


「そろそろだな。この視界不良じゃどこに奴がいるのか……」パイロットが目を凝らして窓の外を見る。すると、助手席のベンジャミンが慌てた様に計器を小突いた。



「レーダーを見て下さい!!」



 その声を聞いてパイロットが確認した途端、操縦桿を捻って慌てた様に旋回させる。中の者らは急旋回に対応して吊革に掴まる。


 デストロイヤーゴーレムは鼻先50メートル地点まで接近しており、幸運にも相手も輸送機の接近に気付いておらず、微動だにしていなかった。


「あ、危ねぇ……皆、戦闘準備!!」と、輸送機の武装を展開させる。乗組員2名が銃座につき、他の属性使いが魔障壁や攻撃魔法の準備をする。


「よし! 行こうか!!」戦いを今か今かと待っていたキャメロンは機体から乗り出し、魔力を上げる。弾丸の様に降りしきる雨をその身で受けながらも瞬きひとつせず、徐々に見えてくるデストロイヤーゴーレムに視線を向け続けた。


 上空は嵐、海は津波と戦場は地獄そのものであったが、討魔団の皆は敵を目の前にして一切怯みを見せず、輸送機団はキャメロンの作戦通りに飛び回った。


 その姿に気が付いたのか、デストロイヤーゴーレムの目に光が赤く灯り、顔が輸送機団の方へ向いた。




 ウィルガルムはレーダーで敵の気配に、ニンマリと笑った。彼は退屈で死にそうになっており、嵐以外の刺激がやってきた事によって退屈からの解放に歓喜し、機体を戦闘モードへ移行させる。


「さて、どんな戦略でくるか……? そんな小粒では、傷ひとつ付かんぞ? と、言っても油断はせんがな。では、手始めに」と、自動迎撃システムを起動させる。無駄なエネルギーを使わない為、絶対必中距離まで退き付けたら連射する様に設定し、様子を見る。


 輸送機団は左右へ展開し、回りを飛びながらも攻撃はせず、間合いを測る様に中々近づく事は無かった。


「やはりこちらの無属性兵器は怖がるか……で、ベンが乗っているのは?」と、6機の輸送機の内のどれに乗っているのかを探す。右舷から回る先頭を飛ぶ輸送機に彼の姿を確認し、納得する様に頷いた。


「いい覚悟だ。身を置くは戦場! 互いに遠慮はナシだ!!」と、彼は中距離用の自動迎撃システムも作動させた。途端、サンダーキャノンが火を噴き、開戦の火蓋が切って落とされた。




 無人島で作戦開始を待っていたヴレイズとミランダはその時まで今迄の旅について話し合っていたが、示し合わせていた様に会話を止め、首をミッドオーシャン沖の方へ向ける。


「始まったみたいだな」無機質な魔力を感じ取り、その場でフワリと浮き上がる。


「えぇ、行きましょう!!」と、ヴレイズも瞬時に魔力を身体に灯し、飛び上がり、デストロイヤーゴーレムの方へと飛んだ。


「ミランダさん! 相手は無属性兵器を使う大巨人です! 油断はしないで下さい!」


「むぞくせい……? むぞくせい?」聞いたことの無い言葉に首を傾げるミランダ。彼女は無属性についての知識は無く、見た事も無かった。


「あ、もしかして知らないんですか?」


「……馬鹿にしているのか?」額に血管を浮き上がらせ、尖った眼を向ける。


「いいえ、全然!!」と、無属性について簡単に説明をする。彼自身も良く知らず、ただ紫色に光るヤバい破壊魔法だとアバウトに説明した。


「成る程……まだまだ私の知らない魔法があるという事か……それはどういう原理で出す攻撃魔法なんだ?」


「え? し、知らないですけど……?」


「いいかヴレイズ! 何事も疑問を持って好奇心を持て! さもなくば技術の向上はない!」


「今、お説教は勘弁して下さい!」


「兎に角、その大巨人を一目見てみたいな」と、ミランダは何か楽しそうな表情を覗かせながら飛ぶ速度を上げた。


「見たらぶったまげますよ」


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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