177.クリスの野望
いらっしゃいませ!
では、ごゆっくりどうぞ
クリス・ポンドは幼少期、ククリス魔法学校にて賢者の子以上の英才教育を受けて育った。彼自身は父であるバーロン・ポンド以上に自信に満ち溢れ、運動神経や頭の回転など才能豊かな子として育った。叔父である光の議長、シャルル・ポンドは彼を次期世界王として恥ずかしくない様に厳しく育て上げる。
クリスが12歳を超える頃に、彼は他の者が並び立てない程の秀才として学校を卒業した後、こつ然と行方を眩ませた。この出来事はククリス内では密かに大事件として取り扱われ、父親であるバーロンの寿命が10年ほど縮んだと言われていた。
が、シャルルはクリスの事は全て御見通しであり、当時から小間使いとして使っていた風使いミラを監視に付けていた。
クリスはひとりでバルバロンヘと渡り、放浪の旅を6年間も続けていたのであった。彼がバルバロンにいる間は所謂『勇者の時代』であり、バルバロン中が混沌としていた。そんな中、彼は世界中で起こる様々な事件、戦い、謀略を目の当たりにした。それはククリスでは決して学べないモノであり、とても刺激的であった。
16歳になる頃、彼はバルバロン国内で世界の影との接触に成功し、自分の身の上を明かし、ククリスでの情報と引き換えに、とある物の情報を得たのであった。
それは、三種の神器の在処であった。創造の珠、破壊の杖、予言の石板。この3つの所在を突き止めたクリスは世界を掌握する野望を胸に秘めた。
しかし、クリスの野望は出鼻を挫かれたのであった。ハーヴェイの手によって石板を破壊されたのであった。
これを耳にした彼は手中に収めていた世界の影のひとりから情報を搾り取り、急ぎダークビルの森へ向かった。そこで彼は石板の欠片をひとつ残らず拾い、全て粉々に砕いたのである。彼は石板を万遍なく砕かなければ全て取り除けないのを知っていた。
それにより彼は預言の力の半分を手に入れ、有頂天になった。人や地域、建造物を見るだけでそのモノの未来を見る事が出来た。
彼は帰国前にファーストシティへ潜入し、魔王の顔を一目見てその未来を目に焼き付けた。魔王の未来は、流動してハッキリと見る事は出来なかったが、彼の手には創造の珠が握られていた。自分の手にそれはなく、歯痒く思ったクリスはその日から如何に創造の珠を手に入れるかだけを考えた。
更に、自分の預言の力は具体的にどこまで使えるのかを実験した。グレイスタンでのラスティーとの問答は全てコレであり、預言の力である程度は先を読むことが出来、未来を曲げる事が出来る事を知った。
そこから更に彼はホーリーレギオン結成、巨大大砲建造などを進め、ついに自分の手の中に創造の珠が握られる未来を目にし、高らかに笑ったのであった。
「さて、魔王よ……動け、動け、動け……私はいつでもいいぞ!?」クリスはホーリーレギオンの兵らが身に着ける最先端アーマーを身に着ける。それは他の者のとは色も性能も違った。これには魔王軍にもない技術が使われていた。
そこへミラが飛んで現れる。
「これは一体? 何をされるつもりですか?」彼女はドッペルウォーターが爆散するところを見ており、何事かと焦っていた。
「準備だよ。創造の珠を手に入れる為のな」
「創造の珠を……?! 一体どうやって? 在処を知っているのですか?」ミラはクリスを探る様に命じられていたが、実際は3割程度しか把握していなかった。
「コレの後は破壊の杖だ。あれも私が手に入れる。そして、預言の力の残りだ。全て手に入れれば、私はククリスの世界王ではなくなる。正真正銘、世界王クリスとなるのだ!」力強く拳を握り、笑顔をフルフェイスヘルメットに隠す。
「……これは、シャルル様に……」
「報告する頃には全て終わっているだろう! なぁに、神の力を手に入れた所で、何も変わらんさ。ただ、ギャフンと言わせたい者が3人いる」
「それは?」
「叔父上と、魔王と、そしてラスティー・シャークアイズだ……」
如何でしたか?
次回もお楽しみに
 




