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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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173.研究都市大爆発!!

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

「おめぇ、何を考えていやがる?! 答えろ!!」耳障りな笑い声を我慢しながらディメンズはヴァイリーに一歩近づき、厳しく睨み付ける。相手は情報通りなら、数々の人体実験を繰り返し、時には村ひとつを実験場に変える程の冷血漢であった。更にナイアの故郷で呪術パンデミックを引き起こした黒幕でもある為、流石の彼も引き金を我慢するのに苦労した。


「見たかね? 頭の中にインプットした命令を無理やり逆らったぞ! そうだ、この人格はそれが出来てこそ合格なのだ! それでこそ君たちの知る『エリック』と呼べないかね?」ヴァイリーは興奮しながらコンソールを叩き、モニターに釘付けになった。


「何を言っている? 人造強化兵士は命令に従ってこそ、じゃないのか?」彼は世界の影が作り出した強化兵士を目の当たりにした事があった。世界の影支部の強化兵生産工場を破壊した時、その生産目的を聞いたため、今回の人造人間もそれが目的だと思っていた。


「時代遅れもいいトコロだ。あれの性能は量産型ウィリアムと変わらんよ。肝心なのは中身だ。それに関しては世界の影に感謝しなければな。私の持っているデータだけでは、エリック・ヴァンガードをあそこまで再現する事は不可能だった。やはり、黒勇隊をガルオニア国へ送ったのは正解だったな」


「ガルオニア……世界の影の拠点だった国か」


「あそこにはエリックの魂を封じた暗黒石が保管されていた。それを使い、世界の影らは魔王に対抗できる兵士を作ろうとエリックの分身を作り出した。お前らの分身も作ったそうだぞ? まぁ、それらは簡単に作成できたそうだが……」


「あぁ、グレイスタンで戦ったあいつか……」と、1年前の事を思い出す。あの時に戦った2人は今、ワルベルトの拠点で軟禁状態になっていた。


「だが、連中はエリックだけは精工に造りたかった。何とか魔王に対抗できるよう、覇王に認められし最強の光使いを作ろうとな。その為、ナイアからとあるサンプルを取り出し、それを存分に分析研究をしたそうだ。そのお陰で、エリックに迫る最強の兵士を作り出した。ヴァルコとかいったか……」


「ナイアの報告と一致するな……」


「だが、肉体に問題が生じ、起動実験中のトラブルで消滅したそうだ。しかし、そのデータと製作者の頭を手に入れ、私が研究を引き継ぎ、完成させたのだ……」と、モニターをうっとりと眺める。


「出来上がったのは、命令無視をする出来そこないじゃないのか? まぁ、確かにエリックらしいが」


「その通り! 今までの言動、思考、選択。エリック・ヴァンガードそのものだろう? そんな彼をかつての覇王が認め、かつてのランペリア国民が英雄と讃え、魔王が天敵と恐れ続ける……いま、その男の人格の再現に成功したのだ!」ヴァイリーは喜々とした表情をディメンズに向ける。


「それがどうした! 例え再現できても、あれは俺の知るエリックじゃない! ナイアも認めないだろう! というか、あいつを再現して何を企んでいるんだ?! まさか、あれでエリックが生き返った事にして、魔王にぶつけるとか言うんじゃないよな?」


「やはりお前は凡人だな……それでは世界は変わらん。人類の進化にはならん! 討魔団も、お前らも、魔王も、どいつもこいつも人類の進化の事を何も理解してはいない! 世界は何も変わらん! 私は世界を良い方向へ変えるのだ!!」ヴァイリーは手を広げ、声高々に口にした。


 次の瞬間、彼の頭の上半分が吹き飛び、背後のモニターが火花を散らして割れる。ヴァイリーの身体はグラグラと床に力なく崩れ落ち、血だまりが広がる。


「耳障りな野郎だ。これ以上生かして置いたら、間違いなく世界は悪い方向へ傾くだろうぜ! ナイア、約束破って悪いな……」ディメンズは血だまりを踏まない様に踵を返し、爆弾を置いてその場から立ち去った。




 その頃、ハーヴェイは訝し気な表情のまま飛空艇に乗り込み、内部に備え付けられている担架にナイアを寝かせ、腕に点滴を刺す。


「今のお前にはヒールウォーターよりマシかもな」彼は精神衰弱状態の患者にはヒールウォーターの効果が薄い事を知っていた。


 それを尻目に人造人間はコクピットに乗り込み、スイッチを丁寧に入れ、エンジンを点火させ、操縦桿を握った。


「どこへ向かう?」上昇させながら問う。


「そうだな、ここら辺りだと……ホワイティ・バールマンという魔法医が診療所を開いていたが、もう20年前か……まだいるかな?」ハーヴェイはここら一体の地図を広げながら難しそうに唸る。


「ホワイティ・バールマン。魔王から援助を受け、ウロボ地方北部でヒールウォーターや外科手術の研究に没頭する奇跡の魔法医」と、頭の中のデータを引っ張り出す様に口にする。


「知っているのか? なら話は早い、そこへ向かってくれ。彼ならなんとかしてくれる筈だ。またな……」ハーヴェイは昔を思い出す様にため息を吐く。


 すると、急に窓の外側に何者かが張り付く。



「大人しく乗せて貰おうか! 歩いて帰るのはちと面倒でな!」



 その者はディメンズであった。


「……あ! お前はあん時の人造人間野郎!!」


「ディメンズ」操縦桿を握ったまま目を細める人造人間。今は彼の殺害指令は鳴らない為、戦う気もなかった。


「……やる気はないみたいだな……」


「随分、強引に乗ってきたな、お前」ハーヴェイは呆れた様に鼻で笑いながら扉を開く。


「一足先に抜け駆けかお前ら! ナイアは大丈夫か? てか、ドミノはどうしたんだよ?」遠慮なく乗り込みながら空いている座席にドカリと腰を下ろし、煙草を咥えた。


「冥界へ送った。ナイアは重傷で、今から魔法医の所へ向かう」


「あの女もついにお陀仏か。重傷って、お前らしくないなナイア」と、煙草に火を点けながら眠るナイアに近づく。


 するとハーヴェイは彼から煙草を取り上げ、外へ投げ捨てた。


「ここで吸うな! 殺したんじゃない、冥界へ送ったんだ。お前こそ、ヴァイリーはどうした?」


「ちっ……同じ事じゃないのか? ヴァイリーは、現場判断で始末した。ナイアには悪いがな」と、自分の席へ座り、深くため息を吐く。


「そうか。少なくとも、あの博士と性悪女の企みを挫く事に成功した訳か……ん? 心臓部の爆破はどうした?」ハーヴェイは最後の爆発が無いのに気が付き、窓から煙の上がる研究都市を見下ろす。


「もうすぐドカンと来る筈だが……?」彼の隣に顔を覗かせ、ヴァイリーを始末した建物に注目する。


 すると次の瞬間、研究都市全体が大地をひっくり返す様な大爆発を起こし、濃い紫色のエネルギー波に包まれる。飛空艇はそれに呑まれない様に高度を上げ、ギリギリのところで爆発範囲から逃れた。


「お前、何処に仕掛けたんだ? いや、ワルベルトから渡された新作の爆弾か?」ハーヴェイは首を傾げながらディメンズを睨む。


「えぇ? いや、他の建物に仕掛けたヤツと同じだったような気がするが……アレぇ~?」彼は惚けた様な声を出し、腕を組みながら頭を捻った。


「アレは無属性のエネルギー波だ。しかも都市破壊用の大型無属性爆弾」人造人間は爆発範囲を分析し、淡々と口にした。


「お前、便利な頭してるんだな……てか、もう俺の事はいいのかい?」と、操縦する彼の背後に歩み寄るディメンズ。


「俺が誰だかわかり、わからなくなった……模索中ってヤツだ。なに、そのうちあんたと戦う理由を見つけてやるさ」


「コイツ、またエリックっぽい事言いやがって……気に入らねぇな……」と、彼は鼻で大きなため息を吐く。


 彼らのやり取りを横目で見ながらも、ハーヴェイは先ほどの爆発に頭を悩ませていた。


「あの爆発……まだ裏がありそうだな」




 無属性の大爆発で研究都市は完全消滅したが、ここに住む研究員らは皆、避難が完了し、ここで研究していたデータやノートは殆ど持ち出し済みであった。研究員の雑多の中へある者が歩み寄り、手を叩く。


「予定通り、避難完了ご苦労。次の研究場所へはもう直ぐ飛空艇が辿り着く予定だ。引き続き予定通り頼む」頭を吹き飛ばされた筈のヴァイリーが何事も無く現れ、愉快そうに微笑む。


「了解いたしました。で、起動実験は如何でしたか?」


「大成功だ。計画は次の段階へ移るぞ」と、ヴァイリーは肩を揺らし、また大声で高らかに笑った。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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