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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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159.お説教!!

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ロザリアとケビンは六魔道団の3人の気配に気付きながらも試合を続けていた。2人の剣撃は互いが気持ち良く続けたくなるほどに互角であり、まるでダンスであった。が、その様な優雅なモノではなく、周囲には発生した真空波や衝撃波、地響きで大地の皹が大きくなり、嵐の様な強風が2人を中心に渦巻いていた。


「いつまで続ける気よ……てか、あいつと打ち合う奴って、確か吸血鬼の……」メラニーは体内の魔力循環をさりげなく高速化させていき、先の戦いよりも更に気合を入れていた。


「情報によれば亡国エルデンニアのバハムント・シャルベルナー3世。ただの吸血鬼ではないと聞くわね」スネイクスは彼を探ろうと風魔法を忍ばせるが、剣撃の衝撃波で弾かれ、歯痒そうに奥歯を鳴らす。


 そんな2人の背後ではウルスラが未だに震えており、ロザリアに対する恐怖を拭えずにいた。彼女の修業時代はまだ戦場に立ったことのない無垢な少女であり、そんな彼女がアスカの獣の様な殺気を受けたため、完全にトラウマになっていた。


 そんな情けない彼女を見て、メラニーは再びため息を吐きつつ、彼女の前に立つ。


「ちょっと、あんたは何のためにここに来たの? 魔王様の命令を半分無視した様に威勢よくここに来たのは何のため?」


「……魔王様の信頼を取り戻すため……」ウルスラは俯いたまま口の中をもごもごさせる。


「だったら戦いなさいよ!! 私達、昨日からいいトコロないんだから!」


「う、うん……ぅ……」もはや戦える精神状態ではないが、無理やり立ち上がってロザリアらが戦う方へ向く。


 2人は相変わらず激突を繰り返していた。このレベルの戦いに遅れを取る3人では無かったが、気迫と殺気に押され、いつまでも乱入出来ずにいた。


「正直、私も強がってここに来るんじゃなかったよ……」スネイクスは本来、ソロモンと組んで討魔団の迎撃の任に就く予定であったが、屁理屈を並べ立ててこちらに来たのであった。因みにソロモンはただ黙って頷くだけで、何も文句は言わなかった。


「ったく、情けないわね! じゃあ私が!」と、勢いよく前に出ようとするメラニー。


 しかし、以前戦った時の記憶が蘇り、二の足を踏む。彼女の強烈な怒りと殺気、それを流し込まれた時の絶望感が首筋を撫で、足が震えて動かなくなる。


「く、くそ……この私が……」


 しばらくして2人の剣が激突して止まり、それを合図に戦いが終わる。ケビンは余裕の笑みを覗かせながら刃の赤くなった大剣を担いで一歩二歩と下がる。


 ロザリアは全身から蒸気を噴き上げ、目に紅雷を蓄えていた。王風を背に備え、腰に蒼電を納刀し、3人の方へ向き直る。目の合ったスネイクスは怖い教師に見つかった様に背を伸ばす。


「手を出さずにいてくれたことには感謝する。だが、3人の中から恐怖に怯えた者の匂いがするが……戦えるのか?」ロザリアは静かに口にし、凛々しい表情を向ける。


 そんな彼女をよそにケビンはその場に寝転がって目を瞑った。


「海が慌ただしいな。大海の監視者が倒された影響か……ま、そっちはそっち、こっちはこっちだよな~ 俺は寝るか。ロザリアさんに任せよう」と、ケビンは無警戒に目を瞑り、寝息を立てはじめる。


「戦うなら相手になる! だが、やる気がないなら、こちらから手は出さない。そこでじっとしていろ」と、ロザリアは鋭い眼光で3人を睨み付ける。この3人は他の戦地に行かせたら間違いなく脅威になる存在であった。それを3人とも釘付けに出来るだけで十分な戦果であった。


「こいつ……舐めやがって……」メラニーのプライドに皹が入り、間合いを詰めようと無理やり前進する。


 それを見てロザリアは動じず、じっと彼女を睨んだ。


「う゛……」蛇に睨まれた蛙の様に固まるメラニー。先ほどの魔力循環高速化も今は冷えてしまい、ウルスラ同様、戦えるコンディションではなくなってしまう。


「舐める価値も無い。が、私もこんな時期があった。恐怖で身が凍り、足が岩の様に動かなくなる……が、そんな恐怖を乗り越えてこそ、強くなれる。私は故郷へ戻り、自分を取り戻し、恐怖を乗り越えた! お前らはどうだ? 私を倒して、乗り越えたくはないか!」ロザリアは3人を鼓舞する様に一歩前に出て、大剣を地面に突きたて、強風を巻き起こす。



「なんであんたに説教されなきゃいけないのよ!!」



 メラニーは恐怖よりも怒りがギリギリで勝り、再び魔力循環を高速化させる。


「ま、ビビっていたのは事実だけど……」スネイクスにもやる気が灯り、メラニーに合せるように風魔法を纏う。


 2人は互いの呼吸を合わせる様に魔力を高めていき、じりじりと間合いを詰める。


 その間、ウルスラは未だに彼女らの背後でしゃがみ込んでいたが、震えは止まり、ブツブツと何かを呟いていた。



「六魔道団を舐めるなよ!!」



 メラニーはついに駆け出し、それにスネイクスが続く。


 メラニーは波打ち際から巨大な波を引き起こし、ロザリアの背後と正面から大津波で挟み潰す。スネイクスは上空へ跳び上がり、逃げ場である左右と上空に大竜巻を荒れ狂わせ、真空波でロザリアを狙う。


 対してロザリアはその場から微動だにせず、そのまま真空波を王風で掻き消し、大津波に呑まれる。


「このまま畳みかける!!」と、メラニーは津波を天へと上る水柱を作り上げる。それに合わせてスネイクスが柱を絞る様に大竜巻で覆って掻きまわす。海水の塔の内部には壊れた軍艦の瓦礫などが混ざっている為、閉じ込められたロザリアはただで済んでいる筈は無かった。


「私達を舐めた罰だ! このままあっさり終わらせてやる!!」と、大竜巻の回転力を更に上げる。


 そんな中、ケビンは寝たまま欠伸をし、そこから動く気配どころか心配する表情すら見せなかった。


「このまま終われ!!」メラニーは風に合わせて柱内部を竜巻と逆回転させ、更に圧縮させる。まるで握り潰す様に腕を振るわせて力を入れ、このままロザリアが力尽きてくれることを祈る。2人は接近戦では彼女に勝てない事を先の戦いで痛い程に思い知っていた。


 が、圧縮されて半分以下の小ささになった水柱が周りの竜巻と共に青白い光と共に一気に蒸発し、鼓膜を劈く程の轟音と共に激震する。立ち上る水蒸気の中から無傷のロザリアが現れ、蒼電を納刀していた。


「溺れると思った……」無傷の表情とは裏腹に焦った様な声色を漏らし、深呼吸をする。


「ば、化けモンめ……」メラニーは表情を強張らせ、声を震わせる。水柱にかけた圧力は水深3000メートル程であった。常人でなくともクラス4の身体能力の者でも瞬殺できる圧力である筈であった。


「こいつ……いったいどういう?」スネイクスも今までメラニーと何度か共闘してきたが、今まで以上に上手くいった合体魔法であると自信を持っていたが、それを折られた。


「で、どうする? 言っておくが、ここから逃がすつもりはないぞ?」ロザリアは変わらぬ眼光を向け、じりじりと迫る。


「こうなったら、海に落として……」メラニーはせめて自分のテリトリーへ突き落し、そのまま深海へ沈めようと企み、再び前進する。


 その歩に合わせてロザリアは間合いを潰す様に高速移動し、軽く体当たりをして吹き飛ばす。その威力は彼女の体勢を崩し、胸骨に皹を入れる程であった。


「意図は読めている。そこまでやらせる訳にはいかない」ロザリアはそのままスネイクスの間合いにも入り込み、あっという間に投げ飛ばす。意表を突いたその動きに2人はついていけず、元の位置まで転がされる。


「くっそ……何でこんなに強いんだ……?」大地を殴りつけ、悔しさに震えるメラニー。そんな彼女の隣では未だにウルスラが丸まっていた。「あんたはどうする気を! 悔しくないの?! 昔は凍らせたんでしょ? それをやればいいんだよ!!」


「……私は……」ウルスラは目の前で転がる2人を見て、涙を浮かべた目を瞑り、立ち上がる。「氷をひとつの属性として認めさせる事が目標なんです!!」


「「う、うん……?」」急に口調の変わったウルスラを見て首を傾げる2人。


「この化け物を倒して、それを証明して見せます!!」と、ウルスラは威勢良く飛びかかり、いきなりロザリアを凍結魔法で閉じ込める。そのまま内部が見えなくなるほど低温魔法で冷やし、彼女を一生閉じ込める勢いで凍らせる。


 しかし、ロザリアは一瞬でその中から氷を木っ端微塵にしながら飛び出す。


「あの頃より腕を上げた様子だな。だが、私もだ」


「まだまだ!! ここにはあの鬱陶しいヴレイズはいないんだ!! 私は勝てる!!」と、周囲に氷柱を展開し、矢の様に飛ばし始める。


「これに乗じるしかないね!!」と、メラニーとスネイクスも立ち上がり、ウルスラの魔力に合わせて水と風の魔法を展開し始める。


 そんな中でロザリアは楽しそうに微笑を漏らしながら魔剣王風に手をかけていた。


 それを見ながらケビンは呆れた様にため息をついていた。


「どっちが悪役だかわかったもんじゃないな。ま、あいつらを釘付けにできれば上々だからいいけど」 

如何でしたか?


次回もお楽しみに

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