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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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145.世界王の陰謀 傲慢なる世界王

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 バドこと『バドランド・ライクーン』は幼少期、エイブラハムが雷の賢者だった頃から弟子入りし、彼の一番弟子として雷魔法を学び、腕を磨き続けていた。彼は一番弟子として可愛がられ、ククリス魔法学校も首席で卒業し、未来有望な賢者候補生でもあった。


 本来なら次の賢者は彼がなるはずであったが、突如として師が賢者を引退し、バドの前から姿を消したのであった。それだけならまだしも、エイブラハムはバルバロンヘ渡り、魔王の手足として働く六魔道団のひとりとなった。


 この事にバドは失望し、賢者に選ばれたにも関わらず彼は辞退し、バルバロンヘ師を追い、彼に何故魔王の軍門に下ったのか問いただした。返ってきた答えは『魔王が実現しようとする世界平和への道の手助けをする為』だと語り、バドを跳ねのけたのである。その平和とは何かを問うても、彼はそこまでは答えず、かつての弟子をこっ酷く痛めつけた。


 これにより、彼は師であるエイブラハムを超える事だけを考える様になり、賢者もククリスも興味がなくなり、それ以降はひとりで強者と戦う旅を続けた。


その出来事もあり、雷の賢者の選抜で、まだ経験不足であったエミリーが選ばれたのであった。


 



「何が2人同時にだ! ザック、手を出すな! お前はパトリックの相手でもしていろ!!」と、バドは手にした雷剣を振り乱し、エイブラハムの間合いへ突撃した。それに応える様にエイブラハムは杖に淡い雷魔法を纏い、受け太刀をする。その衝撃波と雷撃が周囲に飛び散り、地面を黒く焦がす。


「前回と大して変わっていないのぉ~」かつての弟子を挑発する様に髭を撫でた。


「腕を上げたのは魔力だけではない!!」と、バドは雷剣を大きくさせ、ズイズイと押していく。


「ほっほっほ、ムキになる癖は変わらんなぁ~」押されるがままに後退し、バドの技術を味わう様にあらゆる攻撃を受け止めた。


「2人とも楽しそうに……じゃ、俺も行くかな」と、ザックは港を見下ろす崖上でくつろぐパトリックを睨み付け、一足飛びで彼の頭上まで飛び上がる。


「ん?」紅茶のカップをティーセットに置き、本から目を上げるパトリック。彼の眼前には既にザックの水の刃が近づいていた。




 ザックはチョスコの医療魔法学校の生徒であった。かつては世界一の魔法医と名高いホワイティ・バールマンからの教えを受け、学校で一、二を争う凄腕の魔法医として卒業し、地元で開業して瞬く間に有名になる。


 が、その裏では根無し草の旅人を診療所の裏から招き入れ、様々な呪術の実験や解剖を行い、己の腕を高めた。そのお陰もあってか、彼はクラス4へと至り、更に名声が轟く事となった。


 ある日、行方不明になった旅人の噂を聞き付け、彼の診療所にパトリックが現れる。


 この頃の彼は魔術学校の教員であったが、同時にザック同様に自分の練り上げた火炎魔法や呪術の実験台に旅人を使っていた。旅人失踪事件の噂を聞き付け、彼はザックの診療所まで嗅ぎつけ、自分の所業を棚に上げて彼の悪事を暴露したのであった。


 これに激怒し、ザックはパトリックに決闘を申し込む。結果は引き分けに終わり、彼はチョスコから姿を消す。


 その後、ザックは幾度かパトリックを闇討ちし、戦いを申し込んだが、その都度決着はつかず、今に至った。




「お前もいい加減にしつこいな」パトリックは紙一重で水の斬撃を避け、一足飛びに間合いを取りながら優雅に着地する。


「お前は他人のささやかな平穏を踏み付け、場所を奪った……お前も同じ目に遭わせてやる!」ザックは余裕の無い顔で無理やり笑い、間合いを徐々に詰める。


「だったらまず、私の名声を奪ってみたらどうだ? あぁ……最早、お前の話に耳を傾ける者はいないなぁ? 旅人を標的にする非道な殺人鬼の、な」と、パトリックは余裕に満ちた笑顔で彼を見下した。


「だから、お前を殺して、全て奪ってやる!!」ザックは勢いよく駆け出し、再びパトリックの間合いに入り込み拳を振るう。


 次の瞬間、彼の眼前が爆ぜ飛び、右腕と顔面が飛び散って吹き飛ぶ。ザックは煙を上げながら転がるが、残った左腕で受け身を取って着地する。


「……ほぅ……流石、ホワイティを師事していただけある」彼が感心する様に口にしている間にザックの右腕と顔面は眼球含めて完治する。


「強力なのは回復力だけじゃない……覚悟しろ、パトリック。お前の想像を超える呪術を見せてやろう」ザックは禍々しい呪術で練り上げた水球を作り出して勢いよく飛ばした。


 が、それはパトリックの眼前で虚しく蒸発する。


「レベルが違えば、愛称はひっくり返る。私とお前とでは最悪ではないか?」と、片眉を上げた。実際に彼の言う通り、水使いは炎使いに強かったが、格が違えばその愛称は逆転した。今のザックは海を背負い、一見優位ではあったが、パトリックの圧倒的な魔力に押され気味になっていた。


「戦いはこれからだ……!!」


「そうかな? お前らは世界王の代表でここまで来たのだろう? 守るべき兵士を放っておいていいのかな?」と、パトリックはザックの背後へ指を向ける。


 彼の背後では、量産型ウィリアムに壊滅的な被害を受けた兵らが軍艦へと逃げ戻っていた。ウィリアム達はそれを許すはずもなく、エレメンタルウェポンを物ともせずに前進し、ゴミの様に蹴散らしていった。クリスの兵士らは最新式の防具を身に纏ってはいたが、それを上回る性能と力を誇る量産型ウィリアムには無力であった。


「今更、世界王なんざどうでもいい! お前と闘えればな!!」ザックは自分の戦いを止めようとはせず、パトリックの間合いの中で水球を作り出していた。


「あ~あ、少しは世界王の軍に協力すれば、私たちに牙が届いただろうに」パトリックは逃げる様に爆炎を上げながら交代する。


「逃がすか!!」ザックが間合いを詰めようとしたが、正面に量産型ウィリアムの一体が現れる。「邪魔だ!!」と、彼は水流を作り出し人造人間を一瞬で流し飛ばそうとする。


 しかし、腰を深く落として耐えたウィリアムは踏み込んだ脚で飛び、間合いを詰め、ザックの横っ面を一撃する。彼の頬はおろか左顔面が陥没し、首の骨がバキリと音を立てる。そのまま彼は白目を剥いて昏倒し、動かなくなる。


 そのまま2体のウィリアムは次にバドとエイブラハムの戦いに乱入しようと跳び上がる。



「邪魔はするな!!」



 エイブラハムが急に尖った眼付を覗かせ、ウィリアムらを停止させる。そのまま彼らは軍艦の方へと走って行った。


「無粋な真似はさせんよ。さ、続きだ」エイブラハムは手の中で雷球を転がしながら微笑む。


「ぐっ……ここからだ!」バドは既に満身創痍になりながらも得意の雷槍を振り回し、エイブラハムの雷魔法をいなした。




「では、第2陣、出撃だ」と、クリスが号令を発すると第二の矢となる軍艦10隻が出港する。そこにはグレイとリクター、そして最新鋭の装備で武装したホーリーレギオンの精鋭が乗艦していた。


「で、9割の戦力を向かわせてしまいましたが、これで良いのですか?」ミラは嫌味交じりに口にし、横目で睨む。


「9割? あんなもの、1割にも満たないよ。まだまだ私には無限の軍事力がある」


「なんですって?」初耳の様に首を傾げるミラ。


「ラスティーが纏め上げた魔王包囲網の同盟国。これらは全て私の私兵だ。そう、私を誰だと思っている? 世界王だぞ?」


「なんて傲慢な……」ついに本音を漏らし、呆れた様にため息を吐く。


「傲慢で結構、王様は傲慢なモノだ。叔父上から散々習った。さて、私の策は第二段階へ入るぞ」と、指を鳴らす。


 すると、激戦地であるチョスコ方面へ砲身を光らせていた長距離砲が旋回を始める。


「どこへ向けるおつもりですか?」


「なぁに、魔王はこの私を侮り過ぎた、と言うべきか……神聖存在を認識し、魔王の企みを知る者はラスティーだけでは無いという事だ……あ、因みに我が聖地へ向けるわけではないから早とちりしないでくれよ?」と、先の先まで読んだ様な事を口にし、ミラの目を睨みながら口角を上げる。


「なんですって……では、何処へ向けているのです?!」


「今回の戦いの最大の激戦地になるであろう場所へだ」クリスはそう口にしながら手の中で怪しく石板の欠片を見ながらクスクスと笑った。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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