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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
448/601

141.破壊の杖争奪戦 最後のピース

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 アリシアが塔から逃走する同時刻、バルバロン城にローリー誘拐の報が飛んで来ていた。慌てた様に警備兵が秘書へ伝え、その秘書がこの世の終わりの様な形相で魔王のいる仕事部屋へと駆けた。


 そんな彼女の前に澄ました表情の秘書長ソルツが立ち塞がり、彼女の落ち着くように言う。


「どうしました? この城では取り乱す事は許されないですよ?」


「秘書長! 大変なんです! これは一大事なんですぅ!!」と、彼女を押しのけてでも魔王のいる仕事部屋へ入ろうとした。それ程までに娘誘拐は一大事であった。


「ほら、これを飲みなさい。あと、深呼吸」耐え兼ねたソルツは彼女に水の鎮静の魔法を施す。因みにソルツは優秀な水使いであり魔法医でもあった。


「ありがとうございます……」水魔法と深呼吸で落ち着いた彼女は警備兵から聞いた内容をソルツに伝えた。


「成る程……今、魔王様は重要な仕事の真っ最中です。私が後ほど伝えるので、貴女は下がっていなさい」ソルツは眉ひとつ動かさず彼女の話を聞き、冷静に指示を出した。


 秘書は一礼して回れ右をし、自分の仕事へと戻る。


 ソルツは彼女の気配が消えたのを確認し、仕事部屋をノックして入室する。


 その中では魔王が椅子に深々と座り、書類に目を通していた。


「どうした? よっぽどの事が無い限り入室するなと伝えたが……?」魔王は書類から目を離さずに口にする。目で見ただけではわからないが、魔王は足元の闇魔法に集中し、闇を伸ばした先にあるゴッドブレスマウンテンへ神経を集中していた。


「ローリー様が誘拐されました」ソルツはさらりと報告し、魔王の表情を伺う。



「……餌に喰いついたか」



鋭い目を爛々と輝かせながら書類から顔を上げる。


「ローリー様が餌、ですか」


「あいつはダーククリスタルを限界まで作り出した。これが最後の御役目だ。スワート共々、しばらくは自由を満喫させるつもりだ」と、魔王は別の書類を手に取り、目を戻す。


「あえて、自由になさるのですか」


「可愛い娘には旅をさせろってな。それよりも、誘拐したのは確実にアリシアだろう。もうすぐあいつは俺様のモノになる……」魔王は楽し気な笑みを覗かせながら書類に目を通す。


「優秀な光使い……パズルの最後のピースですね」


「あいつさえ引き入れる事が出来れば……新たな世界が始まる!! さぁ、シルベウスよ! 創造の珠を出すのだ!!」魔王は足から延ばした闇に集中し、ゴッドブレスマウンテン頂上に向かって気配を殺しながらシルベウスを睨んだ。




 イモホップ国港で修理中のスレイヤーフォートレスの後部へ続々と輸送機が着陸する。ベンジャミンが設計し、短い期間で作られたそれらは一機も撃墜される事はなく、不調も起きなかった。


「ラスティーは、みんなは無事か?!」煙を吹いて上部の潰れたスレイヤーフォートレスを見て、ヴレイズが目を剥きながら周囲を見回す。


「うわぁ~、拳骨でも喰らったみたいだな」ケビンは口笛を吹きながら輸送機を降り、ボロボロになった上着を広げる。「くそぉ~ 繕うには限界があるか……」


 少し遅れてロザリアの乗った輸送機が着陸し、土煙を上げる。彼女は浮かない顔をしながら下船し、スレイヤーフォートレスの方へ向かう。


 ラスティーは煙草を吹かしながら地図を睨み、ヴレイズらの報告を聞いていた。


「ラスティー、もしかしたらこの戦い事態、魔王の罠なんじゃないか?」


「そうだ」ラスティーはさらりと答え、難しそうに唸る。


「やっぱ気付いていたか」ケビンは感心する様に口笛を吹く。


「罠と言うか、適当に相手をされているというか……この大戦の裏で魔王は別の方を向いている」


「どこを見ているって言うんだ??」ヴレイズは頭を掻きながら問う。今迄、彼はこの戦いにだけ集中しており、今更裏だの別の方角だの言われても混乱するだけであった。


「……全部説明すると、こんがらがると思うからやめておこう。今言えるのは、ヴレイズ達は目の前の戦いにだけ集中していてくれ。六魔道団を相手に良くやっているよ。で、ロザリアさんの報告は?」と、彼女の方へ顔を向ける。


「……デストロイヤーゴーレムの整備ドッグの破壊に成功した。六魔道団の2人を退けたが……スカーレットが、戦死した」ロザリアは重々しく口にし、俯く。


「スカーレットが……そうか」ラスティーは煙草を揉み消し、溜息と共に煙を吐く。


 この報告の途端、騒いでいた隊員らが徐々に静まり返っていく。


「本当に死んだのか?」ヴレイズは疑問に思いながらコメカミに指を置き、目を瞑る。


「どうした?」彼の様子を見てケビンが問う。


「スカーレットの魔力は微かだが感じるぞ……確かに弱っているが……かなり遠くにいるな」と、難しそうな表情を浮かべながら口にする。


「本当か? 本当なのか!!?」ロザリアはくわっと頭を上げて目を剥き、両手でヴレイズの胸倉を掴む。


「あぁ、本当だ! だが、どこにいるのか……」



「海底だ」



 いつの間にか、この場にリヴァイアのドッペルウォーターが現れ、皆が仰天して跳び上がる。


「リヴァイアさん!! 海底ってどういう事ですか?」ヴレイズが反射的に問いかけるが、その前にラスティーが立ち、丁寧にお辞儀をする。


「初めまして、水の賢者殿ですね。俺が司令官のラスティーです」


「自己紹介を省いて早速本題に入りましょう」と、リヴァイアは淡々と現在の状況を説明する。


 まず、大海の監視者ノインの肉体を完全破壊され、海の均衡が崩れつつある事。デストロイヤーゴーレムはスレイヤーフォートレスとの交戦で負担がかかって制止し、まだ海底神殿侵攻には猶予がある事。そしてスカーレットは海底神殿で治療中である事を説明した。


「成る程、貴女が助けてくれたのですか……よかった」ヴレイズは胸を撫で下ろし、ロザリアも崩れ落ちる様に安堵する。


「……そういえば、アリシアは?」ラスティーが周囲を見回しながら首を傾げる。


「彼女は作戦から離れて……どこへ行ったんだ?」思い出した様にロザリアは顔を上げ、今になって疑問に思い始める。


「彼女の魔力も感じるから無事なのは確かだ。大丈夫だ、アリシアを信じよう」ヴレイズは彼女を宥める様に口にし、納得する様に頷く。


「アリシアが別行動を取るのも計算済みだ。半信半疑だったが、まじだったとは……」ラスティーはもう一本煙草を咥えて火を点けながら口にする。この事はワルベルトから臭わせ程度に聞いていた。


そこへ隊員の点呼や状況報告を終えたキャメロンがやっと現れる。


「で……今後はどうする? 戦いは余裕を持って終え、戦力は余り減ってはいないけど、休憩は欲しいかな」と、彼女は治療を終えた肩を押さえながら口にした。


「今日のところは隊員たちに休息を取らせるが、スレイヤーフォートレスの修理は交代でやってもらう。この戦いは一日で終わるもんじゃない。が、いつでも動ける様にはしておいてくれ」と、目を鋭くさせるラスティー。


「わかった。怪我人の治療は俺も手伝おう」ヴレイズは炎の回復魔法を両手に練り上げ、早速目の前のキャメロンの包帯に纏わせる。その炎は肉体を活性化させ、治りを自発的に早める効果があった。


「お、サンキュー。じゃ、あたしも皆に油断しない様に号令かけに行くか。で、ボス。敵さんの新兵器はどうだった?」と、キャメロンはラスティーに近づき、デストロイヤーゴーレムに付いて問いかけた。


 ケビンはヴレイズの顔色を伺い、隣に歩み寄る。


「本当は心配なんだろ、アリシアさんの事」


「彼女はそんなに弱くないし、大丈夫だ。そこの所は、お前もわかってるだろ?」


「あぁ……だが、弱い部分にも俺は気付いている……そこが心配だし、バルバロンで単独行動ってのも気になる……」ケビンはため息を押し殺す様に唸り、腕を組む。


「どういう意味だ?」


「……彼女は魔王の闇に幾度も触れている。その影響を受けて……いざという時に揺れなきゃいいんだが……」


「それはどういう意味だ?」ヴレイズは耳を疑い、ケビンに問い詰めた。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

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