表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
441/601

134.破壊の杖争奪戦 弱点を探れ!

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 スレイヤーフォートレスがデストロイヤーゴーレムの背を捉え、艦内の者らに戦慄が奔る。作戦開始の号令をニックが轟かせ、乗組員が気合を入れる様に応え、コンソールを叩く。他の者らは銃座につき、また他の者はデータを取る為に紙とペンを握り、データ収集の準備を進める。ベンジャミンは甲板の一番先頭に立ち、眼鏡を光らせながら高性能の双眼鏡を片手に持っていた。そんな皆には目もくれず、ラスティーは腕を組んで目を瞑り、煙草の煙を吐いていた。


打って変わってマリオンは興味なさそうに診療所のデスクにつき、カルテを片手にため息を吐く。



「皆、油断するなよ!」



 ニックは艦長らしく声を上げ、スピードを緩めさせる。デストロイヤーゴーレムの予想攻撃範囲のギリギリ外側を飛ぶように指示し、その周りを旋回する様に口にする。


 するとベンジャミンが鋭くニックの方へ顔を向ける。


「いや、予想攻撃範囲よりも100メートル近く飛んでください! 僕の予想だと、まだ副砲の無属性砲も撃てない状態です。それなら、もう少し近くても大丈夫です!! それに、副砲の方ならこの艦のシールドでも防げます!」と、早口で伝える。


「わかった。徐々に近づけよう。で……アレがデストロイヤーゴーレムか……」肉眼で見えるそれは、大海原に半分沈み凄まじい蒸気を上げていた。「何やっているんだ?」


「主砲を撃った後でクールダウン中なんです。海水を吸い上げて、エンジンやクリスタル、全身を冷やす必要があるんです。予想終了時間まであと、30分……うわぁ……」双眼鏡から目を離す。


 彼の歯や口の説明が止まったので、ラスティーは片眉を上げて彼に歩み寄る。


「どうした? 何か異変でも?」



「……カッコいい……」



「は?」ラスティーは首を傾げ、ベンジャミンが涙目で見つめるデストロイヤーゴーレムを同じく見る。「甲冑とはまた違う、角ばったデザインだな?」


「僕は完成予想図を見ただけで、実際にどんな形になるか知らなかった……完成した片腕を見た程度で……こんなカッコいい兵器になるなんて……僕も立ち合いたかった……」ベンジャミンは膝を落として涙を拭き、鼻水をかむ。


「気持ちはわからんでもないが、しっかりしてくれ! お前にはアレの弱点を探る義務があるんだぞ!」と、肩を揺らす。


「はい、わかっています! 絶対に探って見せる!!」眼鏡をかけ直し、気合を入れる様に咳ばらいをしてペンとノートを握り直す。


 スレイヤーフォートレスは当初の予定よりも早く旋回し、彼の指示通りより予想攻撃範囲内まで接近する。


「いいか、デストロイヤーゴーレムの攻撃は無属性砲だけじゃない! エレメンタルキャノンや高熱線砲、更にはあの長い腕で殴りかかってくる! どんな攻撃を仕掛けられても対応できるように頼むぞ!」ニックの指示と共に艦内全員が応え、デストロイヤーゴーレムに向かって攻撃を開始する。




「予想よりも冷却に時間がかかるな……まぁ、次の発射まで猶予があるから慌てる事は……ん?」デストロイヤーゴーレムコクピット内のウィルガルムはレーダーに反応する大型物体に目を向け、メインカメラに映る懐かしいスレイヤーフォートレスを見る。


「ガルムフォートレス……ベン、当然乗っているんだろう」と、コンソールに映し出されるデータを見る。「ほぉ、副砲の攻撃範囲内に入るか……撃たないと思っているのか、それともそれ相応の覚悟があるのか……」口にした瞬間、艦からの発砲を確認しまた嬉しそうに頬を緩める。スレイヤーフォートレスに積んでいる武装では傷ひとつ付けることは出来ず、コクピット内に衝撃はおろか少しも揺れる事はなかった。


「ベン、覚悟が出来ているんだな?」と、自動迎撃システムをオンにし、デストロイヤーゴーレムに備え付けられたエレメンタルバルカンや高熱線砲を容赦なく放つ。


 その殆どの攻撃は威嚇射撃の様なモノだが、8割ほどスレイヤーフォートレスに命中し、属性衝撃波と火花が激しく散る。


「シールド出力50パーセントか。無属性砲に備えているな? やはりベンが乗っているな」彼は嬉しそうに笑い、太い腕で操縦桿を握った。




「おいおいおい、大人げなく撃ってきやがったぞ!!」ニックは慌てた様に声を荒げ、急いで攻撃範囲から離れる様に指示する。


「ダメだ! この距離じゃないと見れない部分があるし、もっと近くじゃないと見られないとこだってあるんだ! シールドは働いているんだから問題ない!」ベンジャミンは目の前で炸裂するエネルギー弾に怯まず、ペンを奔らせ続ける。


「で、ライトニングハンマーは効くのか? 予想ではどうだ?」この艦の切り札である主砲は要塞を一撃で粉砕する破壊力があったが、オロチに決定打を与えられなかった様に。デストロイヤーゴーレムに効くとは思えなかった。


「まだ早い……僕の言うタイミングで撃ってほしい」


「そのタイミングってなんだ? 急に言われても対応できないから、今、具体的に言ってくれ!」ニックは様々な指示を乗組員に伝えながらベンジャミンに問う。


「デストロイヤーゴーレムが副砲を撃つ瞬間、その周りが紫色に光る。その瞬間、光が一番近い部分に撃てば、砲撃不可能になるはずです!」と、眼鏡を光らせる。


「上手く行けば、副砲に恐れず観察できるってわけか。わかった、監視チームは頼んだぞ!」ニックが声を上げると、監視する隊員らが声を上げる。


「だが、この弱点は恐らくウィルガルム自身も知っているんじゃないか? すでに対策されている可能性もある」ラスティーが口にすると、ベンジャミンは手を止めずに頷く。


「あれだけ多機能高性能の兵器です。確かに対策はするだろうけど、全てに対策を施せるとは限りません。恐らく、不具合や弱点に対する対策は全て主砲や脚部に集中されています。副砲にまで対策をしているとは考えにくい。けど、されている可能性込みでのこの動きなんです!  現在のシールド出力は50パーセント以下ですが、もし副砲の砲撃を許した場合、80パーセントの出力で防ぐことが可能です」


「……50パー80パーとよくわからんが、100パーじゃだめなのか?」ラスティーは聞き慣れない情報に眉を顰めながら問う。


「いきなり100パーセントに上げたらきっきにオーバーヒートしますからね。丸裸になったら、あの高熱線砲だけで落とされますよ」と、現在防いでいる熱線を指さしながら口にする。その砲撃はヴレイズが放つような熱線の様であった。


「あー……わかった、そこの所は任せる」と、ラスティーが頷いた瞬間、またデストロイヤーゴーレムからの砲撃が艦を叩き、凄まじい衝撃に襲われる。「うわっ! やっぱ近くないか?」


「これでいいんです。出来ればもっと近く……」ベンジャミンが眼鏡を光らせると、ニックはそれに応える様に乗組員に指示を飛ばす。同時にスレイヤーフォートレスが徐々にデストロイヤーゴーレムへ間合いを詰めて行く。


 すると、デストロイヤーゴーレムの脇腹に備え付けられたライトニングキャノンが起動し、射撃を開始する。それはライトニングハンマーほどの威力はなかったが、連射が可能であり、他のエレメンタルキャノンより頭ひとつ強力な兵器であった。


「おいおいおい! あれはヤバいんじゃないか?」ニックが慌てた様に指を差す。


「アレは腰下部に付けられているから、背後へ回れば撃たれる事はない!」と、口にしながらまたペンを奔らせる。


 それを見ながらラスティーが心配そうに口を開く。


「何を書いているのかわからないが、弱点は見つかりそうか?」


「いま、デストロイヤーゴーレムに備え付けられている装備やそれを動かすための機構、どれだけエネルギーが回されているか、何が出来て何が出来ないか……全てを書き記し、あとで照らし合わせて、そこでやっと弱点を見つけるんです! 邪魔しないで下さい、指令!!」と、彼は汗だくで声を荒げる。


「そっか、悪かった、すまない……」と、ラスティーは口を結び、定位置へと戻っていった。


 それを見てニックは苦笑した。


「あの指令がたじたじとは……まぁ、俺もギリギリなんだが……背後に変な武装は無いよな?」


「ヒートバルカンとウィンドボムぐらいです。正面の武装よりははるかに軽いので、シールド出力をもっと落としましょう!」


「大丈夫だよな? 結構この、エレメンタルシールドって奴を弄る時が一番ハラハラするんだが……」と、ニックは乗組員に指示を飛ばしながらゆっくりと深呼吸をした。同時にスレイヤーフォートレスが激しく揺れ、同時に心臓が撥ねる。「本当に大丈夫だろうな!!」


如何でしたか?


次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ