表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
427/601

120.破壊の杖争奪戦 VS大海の監視者

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ミッドオーシャンの海上は大嵐が吹き荒れ、大水流が数十本と荒れ狂い、飛沫が岩を削る程の勢いで飛び散る。その中心には厳めしい表情のリヴァイアが両腕を指揮者の様に振るい、大水流を鞭の様に操っていた。その攻撃は正確無比で、一振りで確実にガルムドラグーンを叩き落とし、軍艦に多大なるダメージを負わせた。


 蚊蜻蛉の様に落とされる護衛艦や飛空艇を見て焦ったメラニーが大水流を押さえながら大声を上げる。


「全軍、一旦退け!! この賢者は私達にしか抑えられない!!」彼女の号令と共に艦隊は回れ右をして退く。


「聞いていた以上の実力じゃないの!! このぉ!!」スネイクスは風使いでもないリヴァイアが嵐を巻き起こしているのを見て憤慨し、負けじと自分の嵐を起こそうと激しく風魔法を練り上げる。リヴァイアと彼女の嵐が駒の様に衝突して大海原は更に荒れ狂い、悍ましい空模様になる。衝突の影響か、落雷が発生し、空はさながら地獄と化した。


「調子に乗るなよ、リヴァイアぁ!!」メラニーが拳を握り込むと、彼女の周囲に伸びていた大水流が霧散した。が、新たな大水流が発生し、彼女に襲い掛かる。数十本の大水流が彼女を取巻き、一斉にウォーターブラストを放ち、殺人的な鉄砲水を浴びせかけた上、大爆発を起こした。この猛攻の中心でひたすら耐えたメラニーは余裕の失せた表情でびしょぬれになった前髪を鬱陶しそうにかき上げる。


「はぁ……はぁ……」防ぐのが精いっぱいなのか、反撃も出来ぬまま息を整える。


「二流の水使いが……ロクに修行を積んでないのでしょうね」


「そう言うお前は……一体どういう修行をすればこんな芸当を?! 賢者は相当暇なのね!!」実際、リヴァイアはドッペルウォーターと言う己の分身を20体ほど作り出して彼女らに賢者の主な仕事をさせ、自分は海底神殿でノインのもとでひたすらに過酷な修行を続けてきていた。メラニーにはそんな技術は無く、自分の任された国の運営や日々の仕事の為、己を磨く時間は微々たるものであった。


「六魔道団とは、情けない術者の集まりの様だな?」リヴァイアは片眉を上げ、揶揄う様に口にする。が、楽しむような素振りは見せず、更に大水流で猛攻を浴びせる。


「舐めるなぁ!!」スネイクスは瞬時に圧縮した風圧波を、リヴァイアを包囲する様に飛ばす。


「風使いのくせに遅いわね……」と、手の中に小さな魔力を練り、握りしめる。すると、一瞬でスネイクスを水球の中へ閉じ込める。同時に彼女の放った圧縮風圧波は消え失せる。


「ゴボガボゴポ……ッ!!」リヴァイアの水球はあっという間に彼女の肺を満たし、一瞬で溺死させる様に内臓を締め付ける。ほんの一瞬でスネイクスは風魔法で水球を弾き飛ばし、勢いよく嘔吐し、肺の中の水を吐き出す。同時に内臓に負ったダメージを風の回復魔法で癒し、一瞬で体勢を立て直す。


「そのぐらいは出来るか……ふんっ」と、休める暇も与えずに雨あられの様に水の大拳をふたりの頭上に振らせ、真下からは大水流を噴き上げる。そんな中、リヴァイアは反撃を貰わない為に海中へと身を隠す。


「ぐっぐぞぉっ!!!」血涙を流しながらも身構え、大水流を斬り飛ばすスネイクス。


「このままじゃ六魔道団の名折れ……死んでもここで倒すわよ!!」と、メラニーは殺気の眼差しで海中へと飛び込んだ。


 


 「リヴァイアが邪魔に入るのは想定していたが……あの2人がここまで苦戦するとはな」コクピット内で観戦するウィルガルム。その間でも彼はコンソールを太い指で器用に叩き、デストロイヤーゴーレムのエネルギー調整を行っていた。


 その瞬間、リヴァイアの分身であるドッペルウォーターがメインカメラの前に現れる。


「ウィルガルム。この大層な玩具を壊されたくなければ、すぐに引き返すのね」と、透き通った鬼面を覗かせる。


「玩具? 玩具だと?! このバルバロンのありとあらゆるテクノロジーを集結させた決戦兵器を玩具だとぉ?!! 玩具に何が出来るのよぉく見せてやる!!」ウィルガルムは怒り心頭で顔を赤くさせ、ボタンを押す。


 次の瞬間、デストロイヤーゴーレム全身から灼熱の熱気が排出され、一瞬でドッペルウォーターを蒸発させる。


「魔力エネルギーの排出だけで消える存在が……玩具? フンっ!!」と、更にコンソールを叩き、レバーを引き、足元のペダルを踏む。


 すると、デストロイヤーゴーレムは太腿と背中のバックパックからエネルギーを放出し、ウォータークリスタルの力を使って航行を再開する。


「狙いはリヴァイアではない。さぁ、早く出てこい、ノインとやら……」と、目を光らせながらレバーを引く。


 それに応える様に、デストロイヤーゴーレムの周囲が白い霧で覆われ始める。同時に半径数キロに渡って大海原に巨大な水の壁が出来上がる。それはまさに突如として現れた山の様であった。


「あらわれたか……」


 いつの間にか音も気配もなくノインがデストロイヤーゴーレムの眼前に姿を現す。彼女は腕を組み、不機嫌そうな表情を向けていた。


「本来……この様な悪ふざけ程度で私達、神聖存在は姿を見せないのだが……破壊の杖が目的で海底神殿を叩くのなら話は別。で、リヴァイアの話は聞いたかしら?」


「あぁ、聞いた。丁重のお断りさせていただく。そして、やっと出てきたか、大海の監視者ノイン。初めまして」と、風の拡声器を使って話す。


「自己紹介は必要ない。早急にこの玩具を破壊させて貰う」


「また玩具と言ったな?! 玩具かどうか見せてやろうじゃないか!!」と、ボタンを押す。デストロイヤーゴーレムは両腕を掲げ、無属性砲2二門光らせ、ノイン目掛けて発射する。


「無属性……この世界の者らがここまで器用に扱うとは恐れ入る。が、」と、口にした瞬間、彼女は無属性の紫光に飲み込まれる。何かがバチバチと弾ける様な音が響く。光の中からは無傷のノインが顔を出し、呆れた様にため息を吐く。


「やはり通用はしない、か」


「神聖存在を殺せると思ったのかしら? 残念ね」


「殺せないのはわかっている。が、肉体を消滅させることは可能だ」


「無属性で私を消滅させるのは不可能だ。さて、不細工な玩具を破壊させて貰おうか」ノインは両手首を軽く回す。すると、彼女が少しずつ変化を始め、男性の様な筋骨隆々とした肉体へと姿を変える。


「これはこれは驚いた……神聖存在に姿形は関係ないか」予想していたのか魔王から聞かされていたのか、彼は言葉ほど驚いてはいなかった。


「この姿になるのは久々だ……やはり人間どもを『わからせる』にはこの姿が一番だ」と、ノインは海の中へと姿を消し、次の瞬間、デストロイヤーゴーレムと肩を並べる程に巨大な姿で現れる。その姿はまさに大海を統べる神であった。


「……っ!! 今度は本当に驚いた……エクリスからも聞いてなかったぞ。だが、やり易くなったか!!」


「こちらこそ、やり易くやらせて貰う」ノインは不敵に笑い、巨大な鉄拳でデストロイヤーゴーレムの腹部を殴りつける。その衝撃は海に伝わり、ミッドオーシャン全土に激震を轟かせた。


「うぉう!! 予想を上回る衝撃だ!! だが、流石俺たちの20年以上の結晶……なんともないぞ!! これが玩具か? あぁ?!」と、レバーを次々と動かし、お返しと言わんばかりに殴りつける。「これがやりたかったんだもんねぇぇぇぇぇぇ!!!」その拳はノインの頬にめり込む。


「人類最大の英知で作られた結晶に、まさか殴り返されるとは思わなかったぞ……効かんが、なんだか不思議な気分だ」と、デストロイヤーゴーレムの横面を殴りつける。その衝撃は内部コクピットを激しく揺らし、ウィルガルムは気持ち悪そうに顔色を青ざめさせた。



「ははっはぁ!! 俺の夢が今まさに、最高の形で叶っている!! ずっとこのまま続けたい気分だ!!!」



 ウィルガルムは玩具で遊ぶ子供の様に大はしゃぎをし、またレバーを動かしてノインの腹を殴りつける。


「楽しそうで何よりだが……遊びに付き合う程、もの好きじゃないんでな。だが、こんな余興は数百年ぶりだ」と、ノインも心なしか楽しんでいた。


「さぁ、お遊びはここで終わりだ。デストロイヤーゴーレムが、なぜこのような名前を冠しているのか、教えてやろう!!」と、頭部の口元がパカット開き、紫光が光り輝いた。


如何でしたか?


次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ