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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
423/601

116.2人のど根性訓練

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ところ戻って討魔団本部。アリシアとヴレイズ、キャメロンとスカーレット、そして少し離れた場所でロザリアとケビンがバチバチと火花を散らしていた。彼らは互いに互角以上に技を噛みしめ、楽しむ様に打ち合っていた。


「そろそろキツくなってきたな……」アリシアのフラッシュブラストを正面から防ぎながら後退し、初めて冷や汗を掻くヴレイズ。彼は半刻以上もの間、アリシアからの難解な呪術混じりの光魔法を防ぎ、焼き払い、解呪していた。


「魔王軍を相手にしても弱音を吐くの?」アリシアは厳しい言葉を浴びせながら彼の周りを高速で飛び回り、容赦なくフラッシュブラストを浴びせる。彼女の光魔法は高度な呪術(失明、幻覚、神経鈍化、呪毒などなど)が練り込まれていた。それら全てはヴレイズを試し、鍛えるためのモノであった。


「そういう訳じゃないんだが……な!!」と、ヴレイズは炎分身と共に消え、一気に彼女の背後へと回り込み、火炎圧縮と爆発を一瞬で引き起こす。それは見物人からは太陽が爆発した様に見え、表情を引き攣らせた。


「あたしじゃなきゃ死んでいるよ。っても、本気じゃないでしょ?」爆発が掻き消えると同時にアリシアが頬の汚れを拭いながら笑って見せる。


「使いたくない技もある」


「やって見せてよ。ほら?」アリシアは挑発する様に手招きをする。


「……わかった」と、彼は静かに手を前に置き、目の前のアリシアに集中する。彼女の体温に集中し、熱を奪えるかどうかだけ試す。が、彼女は呪術プロテクトを施してあり、熱操作魔法は通じなかった。


 しかし、ヴレイズはそのプロテクトをひとつひとつ外していき、最後の呪術を解呪すると、アリシアの芯の熱を少し下げる。


「どうだ?」ヴレイズは少し得意げな表情を覗かせる。


「よぉ~く勉強したね、ヴレイズ。でも……」と、笑った瞬間、再び呪術プロテクトが復元していき、今度はヴレイズの芯が掴まれる。「油断したね?」


 彼女のそれはヴレイズではどう頑張っても振りほどく事が出来ず、芯を掴む力が少しずつ強まっていくのを感じ取るヴレイズ。


「くっ……参った、降参だ……アリシア」と、ヴレイズは手を上げながら笑い、2人の試合は幕を閉じた。


「実戦だったら、どうなっていたかな?」アリシアは片眉を上げながらにこやかに口にする。


「俺が負けていたかもな。だが、何でここまで本気の試合を?」ヴレイズはアリシアの魔法、呪術の技術にゾッとしながら首筋を摩る。


「もし魔王軍にあたしみたいな得体の知れない術者がいたら困るでしょ?」


「確かに……氷帝の時みたいな目に遭うのは御免だな」ヴレイズは呪術で魔石を凍らされた時の事を思い出し、身震いをした。




 時同じくしてキャメロンとスカーレットは規模が小さいながらも嵐の様な激しさで戦いを繰り広げていた。見物人としてはこちらの戦いの方が分かり易く、アリシアらの方よりも多かった。


「いってぇ……病み上がりの試合の中では一番厳しいなぁ……」血唾を吐き、外れた指関節を嵌めるキャメロン。背中から発せられる炎翼は歪に火花を散らし、魔力の限界を知らせていた。


「噂以上の強さね……ヤオガミの機甲団以上」と、火傷した脇腹と太腿を指でなぞり、小さく唸るスカーレット。


「さて、次でいい加減に終わらせようか?」と、脚に炎を纏う。


「そうね。まだ本番があるしね」スカーレットも拳に雷を纏い、構える。


「まだやる気? 元気な子ね~」


「私が次の戦いで役に立つには、まだまだ足りないからね」


「あんた、まさか六魔道団のひとりとやり合うつもり?」


「パトリック……あいつは私が倒す!」と、雷速で跳び、キャメロンの顔面を狙って振り抜く。


 対してキャメロンは一歩も動かず、身体に残った全魔力を片足に全集中させ、回し蹴りで迎え撃つ。


 その結果、彼女の蹴りがスカーレットの腹部を突き、雷拳が届く事はなかった。


「っぐぁあっ!!」目を剥き、吐血しながら倒れ込むスカーレット。


「心を乱す方が悪いんだよ」


「乱してなんか無い!!」スカーレットは目を血走らせながら睨み付ける。


「あたしは復讐心に蝕まれて、結果……隊を全滅寸前に追い込まれて、腰骨を砕かれた。あんたもそうなりたくなければ、下手な復讐心は捨てた方が良い」


「……くっ……ぁあ……っ」最後の蹴りは腹に深く突き刺さった為、中々起き上る事が出来なかった。


「その一撃を喰らった後でも、まだ何か訓練できるの?」


「えぇ……丁度いい……」スカーレットは無理やり起き上り、ヨロヨロとした足取りである場所へと向かった。


「丁度いい、か……あたしも来るべき決戦へ向けて準備しますか」




 ロザリアとケビンは試合を終え、互いに武器を置いて海の方を向いていた。2人の戦いは他の者らと違い、数撃で互いの実力を察し、早々に武器を置いていた。


「次の戦いであんたの配置は?」ケビンは一息吐きながらその場に腰を下ろす。


「飛空艇でバルバロンヘ向かい、デストロイヤーゴーレム破壊作戦へ参加する」ロザリアはその場で腕を組んで仁王立ちをし、地平線を見張る様に眼を凝らしていた。


「ほぉ~。俺は別働隊で魔王軍、もしかしたら六魔道団の誰かとぶつかるかもな。互いに頑張ろうぜ」


「……ウィルガルム……」ロザリアは何かを想い出す様に眼を瞑った。




 スカーレットは巨大飛空艇の元へと向かい、一足飛びで甲板へと上がる。そこで艦長のニックへある事を頼んでいた。その内容とは……。



「お前酔っぱらっているのか?! そんな事できるわけないだろう!!」



 ニックは目を剥いて仰天し、指令室中に木霊させる。


「お願い……今の私にはそれが必要なの」


 そこへ遅れてヴレイズがやってくる。彼は彼女と約束をしていた。


「話って何だ? 俺と試合をしたいと言っていたが?」


「試合? 試合って、後でか? 今か?!」ニックは半ば混乱気味に問う。


「試合はそれの後でお願い。限界まで振り絞った後でやりたいからさ……」と、スカーレットは深呼吸をする。


「それって、なに?」キョトンとした様にヴレイズが首を傾げる。


「コイツ、自分に向かって最大出力のライトニングハンマーをぶっ放せって言うんだぞ?! 正気かよ?!」ついに声が裏返るニック。


「……スカーレット、お前大丈夫か?」ヴレイズも彼女の肩を掴んで揺り動かす。


「本気よ」




 同じころ、キャメロンは試合を終えたアリシアの前に立っていた。彼女は明日の光魔法授業の準備を進めていた。


「何か用?」


「アリシア。あたしとあんたはまだ一度もやり合った事がないわね?」


「その傷のままやり合うつもり?」と、キャメロンの体中に刻まれた打撲傷と火傷の痕を見る。今の彼女はアリシアと戦えるような実力もコンデションもなかった。


「戦場ってのは常にアンフェアよね? それに、自慢じゃないけど、あたしはあんたよりも多くの修羅場を潜って来たと思うの。あんたにも収穫はあるんじゃない?」


「因みに貴女は、呪術の解呪とか勉強した事はある?」


「ないけど?」と、口にした次の瞬間、彼女の眼にチラリと光が奔る。すると、キャメロンはその場で直立し、動かなくなった。


 アリシアは鼻でため息を吐き、何事も無かったように作業を進める。


「少しは勉強して。じゃないと、魔王軍を相手に前線で戦う事なんて無理……ん?!」と、背後から気配を感じ取り、飛んできた拳を受け止める。



「舐めんな、光使い」



 キャメロンは血涙を流しながらも不敵に笑って見せる。彼女は瞳の中に張り付いた光の呪術を独力で本能的に解呪した。が、その解呪は当然不完全な物であるため、片目が失明し、もう片方も視力を大幅に落としていた。


「本能と根性で解いた人、初めて見た……」

如何でしたか?


次回もお楽しみに

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