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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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101.ロザリアVSゼオ

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 光と炎の柱が立つのを尻目に、隙を見てロザリアは守りの固かったオロチの懐へやっと入り込む。腹部の装甲の隙間へ無属性爆弾を挟み、ピンを抜いてスイッチを押す。


「十分離れなければな」ロザリアは急ぎ、オロチの足元へと隠れて耳を塞ぐ。


 きっかり5秒後、眩い紫光とキンっという音と共にオロチの腹部に直径5メートルの穴が空く。その穴はロザリアの斬撃やヴレイズの爆炎で出来た損傷と違い、修復される事はなかった。


 彼女は急ぎ、オロチの穴へと入り込み、周囲を見回す。体内は見たことの無い機械部品がチカチカと光り、いくつも並んだシリンダーが活発に動いていた。


「これが内臓か? ……これらを斬り刻めばいいのか?」と、大剣を構え、豪快に振り下ろす。豪快な音と共に斬り裂かれ、オロチ全体が揺れ動く。切断されたマシンやシリンダー、骨組みは火花を上げて崩れたが、数瞬もしない内に修復されていく。


「やはり、大元を断たなければならないか……」と、ロザリアは太いチューブの伸びる先へと目を光らせた。




 ヴレイズとアリシアは息を合わせてオロチ上空を飛び回り、火炎熱線と光の矢を打ち、龍頭を一撃で破壊する。が、やはり一瞬で修復され、再び極太熱線を放つ。


「くそ、キリがないな! てか、何だよあれ! 魔王軍の新兵器、てか人工物なのかよアレ!!」ヴレイズは奥歯を鳴らしながら距離を取り、今度は首の根元向けて爆炎弾を放つ。龍首は一撃で千切れ飛んだが、努力虚しくまた修復される。


「言っておくけど、デストロイヤーゴーレムもこれと同じ素材で出来ているから、覚悟しておいた方がいいよ~」アリシアは何かを知っている様に口にした。


「何でそれを知っているんだよ?」


「ちょっとね~」と、光の矢を連射してオロチの攻撃を妨げる。


「しかし、キツイなこりゃ! ロザリアさん早くしてくれぇ!!」


「弱音を吐かない!!」と、言いながらも少し冷や汗を掻きながら光魔法を上手く操りながら飛び続けた。


 



 オロチの奥へと進むと、機械類の置かれていない部屋へとたどり着く。そこは兵器の内部とは思えないほど広かった。


「やはり来たか」その部屋にはゼオが腕を組んで立っていた。


「待ち受けていたか……」と、ロザリアは背負った大剣を取り、静かに構える。


「オロチを完全破壊するには、ここを叩くしかないからな。ベンジャミンが裏切ったなら、ここに誰かを寄越すと思ってな。外で飛び回るヴレイズ辺りが来ると思ったが、お前が来たか……」と、組んでいた腕を解く。


「前に一撃受けた時もそうだったが……妙な気配だな」片眉を上げて喉を鳴らす。


「俺は普通と違うのでな。今回は、逃げられないぞ」と、両腕を赤熱化させる。身体から蒸気が吹き上がり、部屋の温度が一気に上がる。


「逃げるつもりは無い!」ロザリアは轟と前に出て距離を詰め、彼を兜割りにする勢いで振り下ろす。


 大剣の刃はゼオの頭を捉え、額を真っ二つにする勢いで叩く。部屋中に凄まじい衝撃波が広がり、オロチ中に轟音が鳴り響く。が、彼の頭は割れることなく、刃がピタリと止まっていた。


「この手応え……人間ではないな!?」


 ロザリアの問いに対して、ゼオは歯を剥いて笑った。


「よく言われる……この感触でわかった。お前では役不足だ!」と、紅一閃で彼女の腹を叩き、部屋の壁まで吹き飛ばす。この拳は先ほどの衝撃波よりも激しく、鋭い一撃だった。


「ぐはっ!!」彼女は膝を折らず、何とか構えを崩さずにいた。


「頑丈さは大したもんだ。どれ、お前の全力を受けてやる。こい!!」ゼオは目を鋭くさせ、両腕を大きく広げて構えた。


 ロザリアは魔刀蒼電でゼオの胴へ向けて居合一閃する。


 が、ゼオは二本指でそれを受け止める。


 彼女は蒼電を鞘へ納め、一歩引いた。


「斬っても手応えの無い奴は何人も相手にして来たが……こんなのは初めてだ」ロザリアは久々に真っ直ぐに強いゼオに驚き、参りながらも、内心楽し気に微笑みを隠しながら再び彼の間合いに入った。


 彼女は大剣をいつもの様に小枝の様に振り抜く。


 ゼオはそれを一歩も動かずに受ける。周囲に衝撃波と火花が飛び散るだけで、ゼオにはかすり傷ひとつ付かず、代わりに上着や防具が斬り裂かれ、上半身裸になっていた。


 そんな彼の筋肉は明らかに人間のそれとは違っていた。完全に露わになった彼の顔は、若き頃のウィルガルムその者であった。


「練り上がった筋力、技量、タイミング……オロチを目の前にひとりで戦えるのも頷ける。だが……」と、ゼオが両拳を引いた瞬間、ロザリアの紅鎧がベコベコに凹んで再び壁まですっ飛ぶ。


「ぐっ……くっ……」目を剥き、何とか折れそうになった膝を伸ばして直立する。落としそうになった大剣をギリギリで握り直す。


「タフだな……そうこなくては」と、今度はゼオが距離を詰める。


「……ぐ……」ここで初めてロザリアは大剣を盾に防御態勢をとった。彼女が防御に移るのは守る者が背後にいる時だけであったが、今回は自分の身を守る為に大剣を盾にした。


 ゼオは遠慮なく赤熱化した拳を握り込み、彼女の大剣に対して激しく打ち込んだ。彼の拳の1発1発全てが強烈な必殺の一撃であった。


 次第に大剣に皹が入り始め、その異変に彼女が気付くと同時に刃が砕け散った。ぶち破った拳がそのままロザリアの脇腹へ突き刺さり、肋骨を砕く。


「ぐぁお!!」堪らず柄を投げ捨て、逃げる様に彼から距離を取る。


 しかし、ゼオは逃がさない様に彼女の後ろ髪を掴み、鳩尾を突く。


「どうした? それで精一杯か? ロザリア……いや、アスカ」と、彼女を蹴り上げ、宙に浮いた彼女を拳の連撃を喰らわせる。


「が! ぐぁ! がはっ!!」滅多打ちにされたロザリアは最後の一発を喰らって吹き飛んだが、まだ膝を折らずに直立する。が、代りに紅の鎧が悲鳴を上げる様にガラガラと地面に崩れ落ち、血みどろの下着姿となった彼女がふらふらと立っているだけになった。咳をする様に吐血し、頭をフラフラと揺らす。


「アスカ。俺はお前をぐちゃぐちゃに甚振って、殺してやりたいと思っている。それは何故か……わかるか? 本当ならこの国を潰した後でやりたかったがな……」


「な……に?」


「ウィルガルム……我が父はアスカであるお前の帰りを待っていた。そして、お前の為にこの国を完全制圧し、贈り物にするつもりだった様だ。そんな父の想いを、踏みつぶしてやりたいんだ」ゼオは次第に本格的に殺気を帯び、声に怒りを孕み始める。


「なん……だ?」息を荒げ、とぎれとぎれに聞こえる彼の言葉が理解できず、首を傾げる。


「悪戯に俺を生み出し、自我を与え、今の今迄苦しめて来た父に復讐してやりたいんだ……そして、俺が生まれたという傷痕をこの国に残し、父……そして魔王の記憶に刻んでやる!!」と、生身になった彼女の胸に拳をめり込ませる。


「ぶがぁ!!」胸骨が砕け、心臓に凄まじい衝撃が叩き込まれ、ついにその場に倒れ伏すロザリア。ダメ押しに腹に蹴りを喰らい、転がされる。


「その為のオロチだ! デストロイヤーゴーレムの海上護衛なんぞ知った事か!! こいつの真の力を教えてやろう!!」と、指を動かす。すると、部屋の壁が開き、コンソールが現れ、ゼオがそれを軽快に叩く。




 アリシア達と交戦していたオロチの龍首の動きが急に止まる。今迄殺気全開だったのがピタリと止まり、2人は揃って首を傾げた。


「何?」


「やったのか?」ヴレイズは休憩できると一息吐き、額の汗を拭う。


 すると、オロチの首8本が一斉に真下を向き、極太熱線とは違った種類の黄色い炎を吐き出し始める。大地は粉塵と瓦礫が吹き上がり、4本の脚がふわりと浮き上がる。


「一体何をする気だぁ?!」ヴレイズはうんざりした様に声を上げ、アリシアは黙ってその行動を見守った。




「何をする気だ?」真下で起こるオロチの異変に狼狽するニック。飛空艇は未だに上空で旋回を続け、いつでも攻撃に移れるように準備していた。


 すると、ベンジャミンが前に出て目を細める。


「……本来、オロチは海上護衛艦だが……まさか……」と、眼鏡を光らせる。


「ゼオが取り付けた機能か?」ラスティーが問うと、彼はコクリと頷いた。


「あの炎……飛空艇を飛ばす用のジェットファイアー……飛ぶつもりだ」


「飛ぶぅ? あのデカブツがぁ?!!」と、全長100メートルを超えるオロチを指さすニック。


「飛んでどうする気だ?」ラスティーが問うと、ベンジャミンがため息を吐いた。


「わからない。だが、ロクな事はやらないだろうな。飛んで出来る事は……まさか!」と、ベンジャミンは卓に広げていたオロチの図面へ顔を向け、冷や汗を掻いた。


「わかったのか?」ラスティーの問いに、ベンジャミンは慌てた様に乗組員に駆け寄り、急ぎライトニングハンマーの発射準備をする様に命令した。


「勝手にどうした?! いったい、あの兵器で何をするつもりだ?!」ラスティーが慌てた様に問うと、ベンジャミンは明らかに取り乱した様に口にした。


「ゼオは、この国を潰す気だ!!」

如何でしたか?


次回もお楽しみに

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