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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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85.大天才のちびっ子現る!

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ウォルターが捕まる少し前の事。ヤオガミ首都、機甲団本部上空に大型空中戦艦が飛来する。建物屋上が光を煌々と焚き、それを目印に着陸する。その戦艦はガルムドラグーンの5倍ほど大きく、まるで空中に浮かぶ指令基地であった。


 時間を掛け、突風を上げながら着陸し、しばらくしてタラップがおりる。中からは白衣と額縁眼鏡の目立つ少年が現れる。そんな彼を機甲団リーダーのゼオとドンオウが出迎える。


「夜分遅くにご苦労様です、ベンジャミン様」



「出迎えは君らだけか? 僕の事を軽く見ているの?」



 ベンジャミンと呼ばれた少年は不遜な態度で鼻息を鳴らし、ゼオに一瞥をくれる。


「いえ、そんな事は……貴方の為に特別な部屋を用意させていただきました」珍しくゼオは及び腰になりながら、ベンジャミンの顔を覗き込む。


「僕の機嫌を伺っても、何も変わらないよ。僕は僕のやる事をしにきただけだから。例の兵器に関するファイルの全てと、暖かいココアを用意しておいてくれ。あと、その戦艦の整備を頼む」と、ベンジャミンはテクテクと歩き、本部内へ入る。


 そんな彼の態度が気に入らないのか、ドンオウは舌打ちをし、指骨をボキボキと鳴らす。


「あのガキ、何才なんです?」


「12才だ。我が父が拾った子で、3歳でアンチエレメンタル爆弾の構造を理解し、武器工房で手伝いをしていたそうだ。5歳でガルムドラグーンの魔動エンジンを組み、8歳で次世代パワードスーツの基礎を作り上げた。お前が着ているそれも、ベンジャミン様が作ったモノだ」


「なんだと?! あのガキが?! バカな?!」と、自分の着用する鎧を見て、納得できない様に唸る。



「ガキ、と言ったか?」



 いつの間にかドンオウの背後にベンジャミンが立ち、眉を怒らせていた。片手にはスイッチのたくさん付いたリモコンを持ち、押す。すると、ドンオウの鎧から淡い光が消える。


「ん? な、何をした?! う、動かん!!」


「ロックしたんだよ。しばらくそこに立ってろ」と、ベンジャミンは不機嫌そうに鼻息を鳴らし、回れ右をした。


「おい、コラ! ベンジャミン、様! 勘弁しろ!!」ドンオウは固まったまま首だけ動かす。が、一ミリも動けなかった。「馬鹿な!!」


「あーあ、着脱できない様にロックまでされてるな……ま、自分でどうにかしろ」呆れた様にゼオが彼の肩を叩き、その場を去る。


「おい……おーい! ふざけるな! …………助けて」結局、彼は明け方までその場に放置される羽目になった。




 ところ戻って地下牢。ウォルターはエンジャからこっ酷い拷問を受け、全身所々に重度の火傷を負っていた。が、彼自身は堪えた様な表情は覗かせず、じっとりと相手を睨み返していた。


 エンジャは着用した鎧を赤熱化させ、出鱈目に拳と脚を振るっていた。が、その攻撃に重さは無く、ただ肌を焦がすだけにとどまっていた。


「ドウヤラ、イタミニタイスルタイセイガ、アルヨウダナ」籠手からは相変わらず熱気を上げていた。対してウォルターは黙殺し、ただ睨み続けていた。


「デハ、ヤリカタヲカエヨウ」と、籠手から炎を絞り出し、ウォルターの目の前で揺らす。それは彼の瞳に映り込み、一定の揺らめきが彼の脳を揺さぶった。


「ん……ぐ……」目を瞑ろうとするが、何故かそれが出来ず、首も動かす事が出来なかった。


「ソウダ、イイゾ……炎は人の隠す物をさらけ出す。例え強引に隠しても、炙り出せる」エンジャの声がウォルターの脳内に直接響いた。


 すると、彼の身体が炎で包み込まれ、急に身体が縮み、子供の頃の彼に戻る。記憶が現在から数年前へ戻り、荒野へ放り出される。


「な……ここは?」急な事で狼狽し、辺りを見回すウォルター。当時の彼はボロを纏い、人間らしい暮らしをしていなかった。


 そんな彼の目の前に悪魔の様な鎧を纏ったエンジャが炎を纏いながら現れる。口元が禍々しく開き、トカゲの様な舌が飛び出る。



「そうか、育ちの悪いただのガキか……そんなナリじゃ、母親ぐらいしか愛してくれないなぁ? いや、親すらいないか? はははははは!!」



 エンジャは彼の頭を掴み、地面へ叩き付ける。荒野はいつの間にか熱された鉄板の様になり、顔面が叩き付けられる。それと同時に、彼の周囲には見覚えのある者らが立ち、ひとりひとりが燃え、黒焦げになり、バラバラになって消し飛ぶ。


「ぐわぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」精神が幼少期へ戻った彼は、あらゆる負のイメージと激痛を叩き込まれ、泣き叫んだ。


「さぁ……下拵えは済んだな」と、黒く焦げた彼の頭に力を咥え、体内へ炎を流し込む。すると、ウォルターは意識のないままポロポロと話し始めた。




 明け方になると、エンジャは満足げな足音を立てながら地下牢を出た。それを見て、副隊長のリクトが駆け寄る。口を開こうとした瞬間、それを遮る様にエンジャが首を向けた。


「オマエカ。アイツハコワレタ。ステテオケ」脚を止めぬまま口にする。


「は? 今、何と?」


「ステテオケ」


「は……はぁ……」と、リクトは地下牢へ急ぎ、そこで転がるウォルターへ駆け寄る。


 彼は目を力なく半開きにし、涎を垂れ流していた。微かに呼吸はしていたが、心拍は弱く、今にも止まりそうな頼りなさだった。


「おい、ウォルター! しっかりしろ!!」リクトは力強く彼を揺さぶり、参った様に頭を掻き毟った。「くそ! こんな事になるとは計算外だ!!」




 ウォルターは診療室へ運び込まれ、ロザリアの隣に寝かされた。リクトは取り敢えず、皮膚の火傷をヒールウォーターで癒そうとしたが、何故か火傷は治らなかった。


「なんだよ?! どうしてだよ!」歯噛みし、地団太を踏む。


 そんな騒ぎを聞き、徹夜明けのケンジが現れる。


「お前がここにくるなんて珍しいな。そいつは死にかけの捕虜だろう?」


「ケンジさん! 早く魔法医を呼んでくれ! 俺ぁこいつにだけは死んでほしくないんだ! 頼む!!」リクトは今までにない程に切羽詰まった表情で頼む。


「お前がそんな風に頼むなんて珍しいな」と、ケンジは急いで診療室の魔法医を呼び、ウォルターの治療にあたらせる。ここの魔法医は優秀な風属性使いであり、ある程度の重症は数時間で治療が可能だった。が、そんな彼でもウォルターの火傷は癒せず、首を傾げるばかりであった。


 そこへ朝食を終えたエレンが現れ、彼らを見向きもせずにロザリアの隣に座り、カルテに目を通す。「さ、今日で決着をつけますよ」


「あ、エレンさん。ちょっと、この人を診て頂けませんか? なんか、特殊な火傷を負ったみたいで」と、ケンジが彼女の肩を叩く。


「今日は集中したいんですが……ま、いいでしょう。さてさてどんな人でs……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ウォルターさん!! 彼に何をしたんですかぁ!!」と、エレンは形相を変えてケンジに掴みかかる。


「いや、俺は何も……こいつに聞いてくれ!」と、リクトの襟首を掴んで彼女の前に突き出す。


「貴方は私をここへ連れて来た……彼に何をしたんですかぁ!!!」


「いや、俺じゃねぇし! あんたはどうにか出来るのか?! 助けられるのか!!」


「もちろん全力を尽くしますよ!! あぁん、もう!! アスカさんに集中できると思ったのに!!」と、エレンは急遽ウォルターの診察に移った。




 エレンはウォルターの肉体の水分から記憶を読み取り、拷問の内容と吐いた情報を知る。炎を纏ったエンジャが行った炎の催眠魔法に舌を巻き、目に涙を溜めながらカルテを作る。


「で、どうなんだ? 助けられるのか?」リクトは我慢できずに問う。


「瀕死の重傷ですね……皮膚の火傷は大した事ありませんが、心の衰弱が治癒を阻害しています。心が焼き潰され、全身大火傷状態ですね」


「で、どうなんd」と、質問を繰り返そうとした瞬間、ケンジが彼の首根っこを掴む。


「静かにしてろ!!」


「アスカさんには申し訳ありませんが、ここはウォルターさんを優先させて貰います!」と、水の生命維持魔法をかけ、心の治療を開始する。

如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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