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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
381/603

74.VSマシンドラゴン

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ロザリアらの眼前に立った機械龍は全身が浅黒いメタルで覆われ、目は紅く光っていた。その身体には生物らしい部位は一切なく、前足に備わった刀剣が如き爪を鳴らし、脚を一歩一歩踏みしめる。鋭い翼にはガルムドラグーンにも搭載されているフレイムジェットが4機付いていた。


「強者、化け物……色々な者と戦ってきたが、こんなのは初めてだ」初めて見る艶々したドラゴンを目の前にし、首を傾げるロザリア。


「生き物、と言うより軍艦とかの兵器寄りですね。生気を感じない……」3年ほど前、スカーレットは魔王軍の兵器と一度だけ一戦交えたことがあり、更に最近は軍艦持ちの海賊とも戦っていた為、兵器類は多少見慣れていた。


 機械龍は眼前の戦士2人の分析を終え、また一歩足を踏みしめる。龍の視線は真赤に染まり、ロザリアとスカーレットの肉体や装備、それが可能な動きを予想する。


「ゴウジさん! 我々がコイツをどうにかします! その隙に、エレンさん達を頼みます!」ロザリアは大剣を構え直し、パックリと開いた機械龍の口元へ集中する。


「御意!」と、ゴウジは手綱を握り直し、彼女らと機械龍の動きを注意深く観察する。


 次の瞬間、機械龍の口元が淡く光り、稲妻と共に極太の熱線が放たれる。それはサンダークリスタルとファイアクリスタルの両方を使い、調整した魔王軍自慢のエレクトリックファイアーキャノンであった。



「ふん!!」



 ロザリアは大地を蹴り、その衝撃を大剣の先端まで加速させて振り抜く。彼女の大剣には彼女自身の雷魔法がコーティングされており、無意識のうちに強力な魔障壁となっていた。それを刃と共に振り抜いた為、機械龍の熱線は真っ二つに斬り裂かれ、その威力を落として周囲に飛び散った。


「流石……私だって!!」と、同時にスカーレットは跳躍し、稲妻を纏った拳を機械龍の頬目掛けて振り抜く。


 すると、落雷が如き凄まじい轟音が鳴り響き、機械龍の身体がぐらりと傾く。顎が数センチずれ、目の光が一瞬消えそうになる。


「今だ!!」と、ゴウジは手綱を振るい、馬を奔らせる。馬車は無事に機械龍の脇を通り過ぎ、目的地の方角目掛けて奔った。


「ロザリアさん!! スカーレットさん!! 場所は地図でご確認を!! 先に行って待っていますから!!」と、エレンは窓から上体を出し、手を振った。


 一瞬グラついた機械龍だったが、直ぐに体勢を立て直し、ロザリアらの方へ顔をギロリと向ける。


「目的は最初から私たちの様だな」ロザリアは大剣を握り直し、更に稲光を滲ませる。


「やっぱりここでは有名人ってことね」と、スカーレットは上着のジャケットを脱ぎ捨て、ワイシャツの袖を捲った。


 機械龍は口内を今度は赤く光らせ、火の粉を撒き散らし始める。それはまるで雨の様に彼女らに降り注いだ。


「これは……?」


「……やばいかも!!」と、スカーレットは次の攻撃を察知し、火の粉から逃れる様に上空へ跳躍した。


 次の瞬間、機械龍の喉奥からカチリという音が響き、火の粉の範囲が燃え盛り、大爆発した。この爆発は夜空を赤く染める程に激しく、遠くの港町から見える程に大規模であった。


 スカーレットは間一髪で爆発範囲から逃れ、未だ燻る大地に着地したが、ロザリアはそのまま爆炎に呑まれていた。


「ロザリアさん!!」


 が、彼女の心配をよそに無傷のロザリアはその爆発の風に乗って大剣を振るい、機械龍の胴を薙ぎ払っていた。そのまま背後へと回り、大剣を背負いながら鎧に纏わりついた炎を誇りでも払う様に落とす。


「さ、流石……っ!」


「この手応え……思った以上に堅いな……」手に残る衝撃から相手の装甲の固さを感じとる。機械龍の胴はパックリと割れて体液の様な青い汁が垂れていたが、体勢を崩すことなくロザリアの方へ向き直っていた。


「おい、私を無視するな!!」スカーレットは無視されたと思い込み、機械龍の後頭部を鋭く蹴りつける。


 すると次の瞬間、機械龍はスカーレットの方を向き、前足を振るっていた。この一閃はスカーレットの前髪を斬り落すのみで留まった。


「危なかった!」寸でのところでブレーキをかけた彼女は間合いを取り、冷や汗を掻く。


 機械龍は完全にスカーレットの方へ向き直り、後ろ足を片方上げて蹴りの体勢になる。


「なに? 龍の癖に行儀よく蹴りつけるつもり?」と、スカーレットはそれを避けようと地面を蹴って飛び退く。


 しかし、機械龍は彼女の飛ぶ方向を予測し、着地点に向かって蹴りを放っていた。その蹴りの速度は凄まじく、彼女は腕をクロスして受ける他なかった。


 機械龍の蹴りは彼女に直撃し、凄まじい音と地響きを上げ、周囲の木々が揺れる。その一撃は砦の大門をぶち破るのに使われる破城槌が如き一撃であった。


「っくぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 重たいっ!」意外にも余裕そうな声を上げるスカーレット。彼女はその場で踏み止まり、数十トンはあろう蹴りをギリギリで受け止めていた。


 だが、機械龍は無慈悲にも再び蹴りの体勢に入る。


「何このドラゴン? 得意なのは蹴りなの?」と、また後方へ飛び退くが、再びタイミングを合わせて機械龍が狙いを定め、蹴りを放つ。


 それと同時にロザリアが機械龍の軸足の裏へ大剣を振り被り、露出した極太のコードを斬り裂く。堪らず機械龍はバランスを崩して転倒し、忌々しそうに唸った。


「弱点は生き物と一緒か。巨体故、脚が狙い目か」


「助かった……次のを喰らっていたら、腕が折れている所だったな……」と、痛みを堪える様に腕を摩る。例えガントレット越しに防いでも、その衝撃は凄まじく、二の腕の骨に皹が入っていた。


「さて、どうやってトドメを刺すか……」と、ロザリアは機械龍の弱点を探る様に中央部分を観察する。


 そんな彼女目掛けて、今度は機械龍の前脚が器用に素早く動き、ロザリアをガッシリと掴む。


「んぬっ……油断したか……」と、振りほどこうともがく。


 すると、翼に備わったフレイムジェットが点火し、彼女を掴んだまま上空へと飛翔する。


「一体何をするつもりだ?!」スカーレットはそれを追おうとしたが、彼女の跳躍限界よりも高く飛んでいってしまい、諦める。


 上空300メートルあたりまでくると、機械龍は急に前足を離した。


「単純に、落とすということか」冷静に分析しながら前足から解放され、落下を始める。が、ただ落ちる程彼女は甘くは無く、大剣を機械龍の身体に突き刺し、踏ん張る。


 機械龍は振り落そうと錐揉み回転しながらフレイムジェットの出力を上げ、速度を上げる。


 しかし、ロザリアは決して振り落とされる事なく喰らいつき、機械龍の背中へと取りつく。今度は背中へ向けて大剣を突きたて、深々と突き刺す。先ほどの胴払いの時よりも確かな手応えを感じ取り、更に力を入れて奥へと突き入れていく。


 すると、機械龍の飛行速度が落ち、高度も徐々に下がっていった。


「効いている様子だな!」と、そのまま背中から真っ二つにする勢いで斬り進んでいき、尻尾の部分までパックリと斬り裂く。体液の様な青い汁が勢いよく吹きだし、彼女の深紅の鎧を青々と汚す。ロザリアは返り血の味を確かめる様に頬に付いた青い汁を舐め、唾を吐き捨てる。


「血ではないな……ピリピリしているな」


 そのまま機械龍は真っ逆さまに落下し、大地へと叩きつけられ、轟音鳴らして砂塵を巻き上げた。


「ロザリアさん!!」機械龍の落下先へと高速移動したスカーレットは、砂塵へと突っ込み、ロザリアの安否を確認する様に名前を呼んだ。


「安心してくれ」と、ロザリアはけろりとした声で立ち上がり、首の骨をゴキゴキと鳴らす。


「あの高さから……大丈夫ですか?」


「受け身は取った」


「受け身が通じる高さ、なんですか?」


「無事なんだからいいだろう?」と、ロザリアは不敵に笑いながら大剣を振るい、返り血のように付着した青い汁を散らした。


 が、機械龍も僅かに動いており、ぎこちない動きでムクリと起き上る。顎は完全に外れて頭は半分潰れ、右翼と右前脚が完全に取れ、斬り裂かれた背中からは夥しい量の青い汁が噴き出ていた。目はまだ赤々と光っており、その光を未だにロザリアへ向けていた。


「まだやるのか……だが、再生能力が無いだけ、黒龍よりマシか」と、ロザリアは再び大剣を構え直し、目の奥に殺気を宿した。


「ここまでやったんだから、トドメもお願いしますね……」スカーレットは一歩退き、彼女の動きを目に焼き付けようと腕を組んで集中した。

如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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