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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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67.暗躍の副指令

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 砂塵がリノラースの第2撃の衝撃波によって晴れる。彼の攻撃は的確にドラゴンの正中線と思われる弱点を捉える。凄まじい轟音と共に直撃するも、ドラゴンは全く身じろぐことなく、静かにリノラースを見据えた。


「ただの拳は効かない、か……思ったより強くなっている」と、空を斬り裂く勢いの蹴りを放った。それはドラゴンの下顎を捉えたが、一歩も引かず、さらにダメージを負った様子もなかった。


 次の瞬間、ドラゴンの牙の間から黒煙が僅かながら漏れ出し、開口した瞬間、白熱閃光が光り輝く。


「ぬぐっ!?」リノラースはその攻撃にギリギリで反応し、身を躱す。


 ドラゴンの口から放たれた白熱線は彼の頬を掠め、背後に構える山を軽々と貫く。その衝撃が山全体を揺るがす。


「な、この威力は……っ!!!!」彼が冷や汗と共にドラゴンの次の一撃を両手で受け止め、遥か後方へ吹き飛ぶ。そのドラゴンの一撃は、リノラースが行う正拳突きの様なフォームであった。


「貴様、僕を真似たか?」巨木の様に太い脚で踏ん張る。止まった瞬間、既に眼前にはドラゴンの蹴り足が迫っていた。再び彼はその攻撃を防ぎ、山へと吹き飛ばされ、叩き付けられる。


 ドラゴンは容赦なく、瞬間的に間合いを詰めては拳を振るい、蹴りで薙ぎ払い、山に大穴を開ける勢いでリノラースを攻め続けた。


 



 攻撃の一発一発が大地全体に響き渡り、少しずつ山が姿を変える。土砂が崩れていき、木々が倒され、パニックになった動物たちが下山して逃げて行く。


「どうする? 俺たちも一旦退くか?」山頂で凄まじい揺れに襲われながら、這いつくばるケビン。


「いや、ここで踏ん張る! リノラースさんの戦いでヤツの弱点を捉え、一気にそこを突く!」と、アリシアは弓を構えながら脚を踏ん張る。


「だが、今は見えない場所に……」


「見るんじゃないの! 感じるの!」


「そんな無茶ぶりな……」


 そんな2人の会話には構わず、山はガラガラと崩れていき、反対側からリノラースが飛び出てくる。彼は防戦一方であったが、怪我ひとつなかった。


 彼を追ってドラゴンが迫り、また白熱線を吐き出す。


 その攻撃をリノラースは、今度は躱さずに正面から受け止めた。交差した二の腕で受け、凄まじい火花を散らしながら後退する。彼の分厚い皮膚は軽い火傷を負うだけで済んでいた。


「どんな肉体だ? あの賢者?」数十メートルも崩れて低くなった山の上で、ケビンが仰天する。


「凄まじい魔力循環と大地魔法の防御能力。更に大地と足の踏みしめが一体となった完璧な防御の構え。それらが合わさり、あの鉄壁を超えた不動の防御力ってわけね。流石、最強の賢者と呼ばれるだけあるわ」アリシアは冷静に観察を続けながら口にする。


 リノラースは両腕の一振りで火傷を回復させ、構えを変える。


「今度は僕の番だ」と、両拳を強く握る。


 すると背後に、先の戦いで見せた70メートル級のタイタンがその姿を見せる。が、その巨人は徐々に縮んでいき、ドラゴンと同じサイズにまで凝縮される。


「岩の様に固いが、粘度の様な柔軟さもある。タイタンよりも戦闘向きの魔人だ!」と、拳を突き出した瞬間、背後の大地魔人が駆け出し、ドラゴンの腹に拳を突き入れる。更に吹き飛んだその背後に土壁を作り出し叩き付け、そこへ打ち付ける勢いで拳を振るう。


「さぁ、どこまで耐えられるかな?」と、リノラースも突撃し、大地魔人と一緒になってドラゴンへ攻撃を加える。


「うわぁ……えげつないなぁ……分身との同時攻撃かよ。しかも、あの分身もただの人形じゃねぇな」ケビンは感心する様に唸った。


「70メートル級タイタンの体積を10メートル級ゴーレムに凝縮……あんな荒業、並の使い手じゃ無理ね。更にただでさえ集中力のいるゴーレムの操作と同時に攻撃……流石ね」


「で、アリシアさん? ドラゴンの弱点は見えたのか?」


「うん……でも、決め手にはやっぱりヴレイズの力が必要みたいね。あれじゃあ、また引かせる事は出来ても、倒す事は出来ない……」




 その頃、バンガルド城下町は激しい同様に包まれていた。ドラゴンを陰で操っているのはこの国の王であると実しやかに囁かれ、その噂が城内に広まっていた。


 城内の騎士たちも疑問を抱き始めていた。


 王は事態の収束を待つように自室に閉じこもり、外で騒ぐ部下たちの相手は大臣に任せていた。


「まさか、あの計画が漏れたのか? いや、たかが噂が飛び交っているだけだ。じきに収まる……」と、グラスに酒を注ぎながら深々とソファに座っていた。



「果たして、そう簡単に収まるでしょうか?」



 どこからか侵入したエディが彼の背後に立つ。


「き、貴様は!」と、衛兵を呼ぼうとベルを鳴らそうとするも、エディがそれを素早く止める。


「止めておくんだな。ここで俺を摘まみ出すと、このままこの噂は収束できず拡大し、最終的には内戦が勃発する事になる。それを止めたくはないですか?」エディはワザとらしく笑い、グラスをもうひとつ用意して酒を注ぐ。


「どういう意味だ?」王はシラを切る様に彼から目を反らし、酒を一口啜る。


「今流れている噂は事実であり、貴方が魔王とかなり深く繋がっているのも事実。そして、ドラゴンの強さを計る為の実験場として自分の国を差し出したのも……」


「違う!! ただ実験場にした訳では……っ!」と、つい勢いよく立ち上がり酒をひっくり返す。


「のちにドラゴンを手懐け、国内の再建に力を注ぎ、仁君となる。そしてドラゴンを次の戦争で使うつもりだったんだろ? あのドラゴンの威力なら、グレーボンもひとたまりもないな」


「それを暴露しても、証拠はない!」


「確かに。しかし、ドラゴンがいる。襲われた村がある。そして、噂も蔓延している。証拠が無くとも、国民の不満は溢れ、じきに……」と、グラスを傾ける。


「何が目的だ! この私を強請る気か!!」


「いえ、ただ……貴方の悩みを解消する代わりに、もっとましな交渉がしたいだけですよ。あぁ、ドラゴンは我々で処理させて貰います。今回の黒い噂も解消させましょう。その代り……」


「その代り、なんだ?!」


「同盟に加わってもらいたい。ただそれだけだ」エディは必死になって笑いを堪えながら口にした。




 リノラースは大地魔人と共にドラゴンを攻め立てた。拳同士が激しくぶつかり合い、悪夢龍の鱗が剥がれて行く。が、その下からより一層固い鱗が生え変わる。


 ドラゴンの喉の奥から先ほどよりも熱量の高い白熱線を吐き出し、薙ぎ払う。その攻撃が大地魔人に直撃し、軽々と真っ二つに斬り裂いてしまう。


「なら、これで!」と、二つに分かれたゴーレムを巨大な拳に作り替え、叩き付ける。


 ドラゴンはその拳を迎撃し、一発で破壊する。


「な、この戦いの間もこいつは!!」と、目を剥いて驚くリノラース。


 次の瞬間、ドラゴンの一撃が彼の横っ面に直撃し、血煙と共に遥か彼方へと吹き飛ばされる。


 ドラゴンは確かな手ごたえを拳で感じ取り、満足げに天高く咆哮した。




 意識を刈り取られ吹き飛ばされたリノラースを、ひとつの火の玉が助けに向かう。


「っとぉ! 大丈夫ですか?!」と、彼の巨体を抱き起すヴレイズ。


「ん……? 君は、ヴレイズ殿! ははは、油断してしまったよ」と、口血を拭いながら砕けた奥歯を吐き出す。


「貴方がこんなダメージを負うなんて、相当な強さなんでしょうね……あいつは」と、咆哮響く方角へ顔を向ける。


「あぁ……残念ながら、今の君では勝てないだろう」


「それでも、仲間が呼んでいるんでね」と、ヴレイズは再び空へ跳び上がり、禍々しい殺気の方角へ飛んでいった。


如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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