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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
359/601

52.瘴気の国の調査

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 アリシア達は光のオーラを纏いながら、バンガルドと元ランペリアの国境へ足を踏み入れる。それと同時にどんよりとした風が彼女らを出迎え、闇色の瘴気が包み込む。


「うっぷぅ……ひでぇ臭いだ」ヴレイズは頬を膨らませて鼻を摘まむ。


 アリシアも鼻をヒクヒクと動かし、地面に手をつく。


「あのドラゴンの通った後だ。死肉と瘴気の混じり合う臭いだね」と、指先に付着した黒い粘液を観察する。


「アレはもうドラゴンとは呼べないな……何て呼べばいいんだか」ケビンは自慢の視力で遠くを眺めようと目を凝らしたが、色濃い瘴気のせいで数メートル先も確認する事が出来なかった。「忌々しい瘴気だ……」


「爆心地へ行けば行くほど、濃くなるね……これが魔王の闇か」と、アリシアは容器にドラゴンの残した粘液を入れて鞄へ仕舞う。


 彼女らは奥へと進み、踏み砕かれた枯れ木や腐った死肉などの調査を進める。


「瘴気に晒されて凶暴化した獣がいると思ったけど……龍の気配のせいで怯えて逃げたのかな?」と、アリシアは更に周囲の気配を探る。


「まだ奥へ行くのか?」と、更に色濃くなる瘴気の臭いを感じ取り、身震いするヴレイズ。


「……そうだねぇ……ヴレイズは先に戻った方がいいかもね」と、アリシアは地面の痕跡から目を離さないまま口にする。


「え? 一緒に戻らないのか?」


「うん……あたしはまだこの先を調査したいかな。ドラゴンの根城を調べたいし、ここの生態系ももう少しね。ヴレイズはこれ以上進んだら、どんなアクシデントで、いつ光のオーラが消し飛ぶか分からないしね」と、自信なさそうな顔を覗かせながら謝る。


「いや、そうだな、うん……」と、ヴレイズも納得した様に頷く。


「俺はどうする? 戻った方がいいか?」と、ケビンが自分を指さす。


「いや、貴方は残って」


「え? なんでケビンは残るんだよ?」


「だってケビンは不死身だし」と、彼女はしれっと口にする。


「そう言う問題なのかよ」と、この件に関しては附に落ちない様に鼻息を鳴らすヴレイズ。


「そう言う問題なの。ヴレイズはここで調べたデータをエディに報告して。きっと、彼も今回のデータを取っている筈だから、そこから次の戦いの作戦を立てられるはずだよ。だから一足先に戻って。あたしらも、数時間したら戻るからさ」と、今迄収集してきたサンプルを彼に手渡す。


「お、おぅ……気をつけろよ? ドラゴンを見つけても、2人でやろうなんて思うなよ?」と、ヴレイズは炎を脚から吹きだしながら口にする。


「そんな無茶はしないよ。心配しないで」と、アリシアは笑顔を覗かせながら手を振った。


「大丈夫、何かあったら俺が身を挺して守るさ」ケビンも親指を立てて頷く。


「おう、頼んだぜ!」と、ヴレイズは来た道を戻っていった。


 そんな彼を見送ると、アリシアは更に色濃いランペリア国の奥へ足を向ける。


「で、本当の目的は何なんだい? アリシアさん」と、ケビンは彼女の本心を知っているような口ぶりをして見せた。


「……急ぐよ……この先の爆心地に用があるの」アリシアは目を尖らせ、脚に光を纏い、高速で駆け始める。




 その頃、ドラゴンとの戦いの一部始終を記録したエディは書き留めた情報を纏めていた。


「あの巨大さの化け物相手に、3人でワンダウンを奪うなんてな。それに対してあの熱線……ただの熱線じゃなかったな」と、切断されたように裂けた大地を遠目で眺めながら口にする。裂け目は未だに燻っていた。


「……気付いているか?」未だに警戒を怠らないロザリアは、エディとは別方向へ顔を向けていた。


「何がだ?」


「誰かが私たちを見ている……かなり遠くでな」


「バンガルド国の見張りか?」


「いや、そんな気配ではないな。ただ者ではない……どうする?」と、ロザリアは脚に雷光を纏い、その観察者を捕まえに行く準備をする。


「放っておけ。今はあのドラゴンに集中だ」


「そうか……む?」ロザリアは、今度は飛来するヴレイズの気配に気が付く。


 彼はゆっくりと減速して彼らの元へ着地し、アリシアから渡されたドラゴンのサンプルをエディに手渡す。


「ん? アリシア達はどうした?」


「まだ残っている」と、アリシアに言われた事を説明し、キャンプへと戻る。


「仕事熱心なのは良いが、大丈夫なのか? そんな瘴気色濃い場所、光使いでも危険なんじゃないか?」と、エディは首を傾げる。


「そこの所は大丈夫だろ。アリシアは自分の実力を過信するような事はしないし、用心深いからな」


「それならいいが……」と、エディは双眼鏡でランペリア国を眺めた。




 そんな彼らを眺めながら、フィルは熱々のコーヒーを啜っていた。


「赤熱拳のヴレイズ、か……氷帝ウルスラを倒した炎使いらしいが……俺じゃ相手にならないな、残念ながら」と、自嘲気味に笑い、もう一口コーヒーを飲み、望遠鏡に目を戻す。


 すると、眼前がいきなり黒くなり何も見えなくなる。


「ん?」目をパチクリさせ、望遠鏡から顔を離す。


 そんな彼の眼前には、ロザリアとヴレイズが腕を組んで目を尖らせていた。


「お前、何者だ?」ヴレイズは腕に炎を纏い、戦闘準備をする。


「殺しはしないが……妙な真似をすれば、骨の2本や3本は覚悟して貰うぞ」と、ロザリアは大剣を掴み、いつでも振り下ろせるように腰を落とす。


「……降参します」と、フィルは抵抗する素振りも見せず、眼にも止まらぬ速さで両手を天高く上げた。


「「はやっ!!」」




 高速でランペリア国を突き進むアリシアとケビンは、ついに瘴気の最深部である爆心地へとたどり着く。そこはまるで台風の様に暗黒の風が吹き荒れ、黒紫色の稲光が鳴り響き、地上は淡く黒い炎が燻っていた。


「ここが爆心地か……ひでぇな」と、ケビンが更に進もうと足を踏み入れる。すると、彼を纏っていた光は弱まっていく。


「少し眩しいけど、光を強くするよ」と、アリシアは彼を纏ったオーラを太陽光の様に輝かせる。


「うぉ! 目を開けてられない程に眩しいな!」と、彼女の光に怯むが、周囲の瘴気に押されて光が抑えられる。


「長時間は厳しいかな……さて」と、アリシアは爆心地へと脚を進める。


 そこは巨大なクレーターとなっていた。本来はランペリア国の首都であり城下町のあった場所であった。


「ここが……あたしの父さんの……故郷……」と、その場でしゃがみ込み、真っ黒な石の欠片を持ち上げる。その石からは色濃い瘴気が放たれていた。


「で、ここで何をするんだ? 長居は無用だぞ」と、周囲のただならない気配に気が付き、身構える。ここはドラゴンの縄張りとは違う方角であったため、瘴気の魔物が数多く生息していた。更に、人の原型を失ったダークグールも数多くいた。彼らはアリシアの放つ光を嫌ってか、近づいては来なかった。


「ヴレイズを連れて来なかったのはもうひとつ理由があってさ……絶対に反対されるから……」と、アリシアは表情を曇らせる。


「何をする気なんだ? 内容によっては、俺も止めるぞ」


「ここの瘴気は魔王の闇魔法による物なの。当時のモノとはいえ、魔王のから放たれた闇……これに触れれば、魔王の思考や経験を読み取る事が出来ると思うの」と、腕に光を纏わせ、魔力を込める。


「闇に触れる? どういう事だ?」


「つまり……この瘴気にあたしの身体を晒すの……そうすれば、一気にあたしは闇に包まれる。でも、これをすれば、魔王の野望や計画を知る事が……」



「そんな事、俺がやらせるわけがないだろうが!!」



 ケビンは珍しくアリシアを怒鳴りつけて肩を揺さぶる。


「大丈夫……あたしの身体が闇に染まり切る前に、これをあたしに振りかけて」と、鞄から水筒を取り出す。


「これは?」


「ヒールウォーターに解呪の光を込めた一品だよ。これを使えば、闇に蝕まれた人間を浄化する事が出来る。これであたしを正気に戻して。大丈夫、あたしは絶対に闇には負けないから!」


「しかし、な……無茶だ……」と、ケビンは水筒を受け取りながら複雑そうに表情を歪めた。

如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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