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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
347/601

40.久々の再開

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ

 ヴレイズ達は急ぎトール砦へと戻り、診療室へと向かう。


 そこは既に、ナイトメアソルジャーとの戦いで傷を負った兵たちが運び込まれ、治療を受けていた。


「エレンはどこだ?! キャメロンさんが重傷だ!!」ヴレイズは彼女を探すように大声を上げ、診療室内を歩き回る。


 エレンはそこで、砦専属の魔法医らの指揮を執り、迅速な処置を行っていた。その為、運び込まれた怪我人の処置はほぼ完了していた。


「ここでは大声を出さないで下さい。キャメロンさんですね? 直ぐにこちらへ運んでください」と、彼女は冷静に対応し、奥のスペースへ運ぶように促す。


 その間にエレンはキャメロンの容態を水魔法で調べ上げ、内心ゾッとする。


「……この傷でどうやって……」と、すぐさまヒールウォーターバスを作り出し、その中へ彼女を浸す。


「延命処置で体温を操作し、魔力循環で心臓を無理やり動かしているんだ。長時間は持たない、早く手術を」ヴレイズは今でもそれを続け、ヒールウォーターで身体が冷えない様に注意した。


 すると、そこへアリシアが顔を出す。


「あと、傷の汚染は除去し、呪術の類が仕込まれていないか検査したよ」と、ヒールウォーターバスに指を浸し、エレンの使う魔力の種類やレベルを一瞬で理解する。


「えっと、貴女は……うぇっ?!」と、彼女が何者か理解し、狼狽する。頭の中でここ数年の想いがこみ上げ、身体が固まる。


「おい、おい? エレン! 気持ちはわかるが、今は……」ヴレイズは彼女の肩を揺り動かす。


「は、はい! とにかく今は……すみません」と、エレンは首を振って己の顔を叩き、慎重に手術を始める。




「で、ロキシーは退けたのか」討魔団本部の指令室にて、ラスティーは報告を受けながら煙草を燻らせていた。


「1500中戦死者54、負傷者216.キャメロンは重症、ロザリアは拉致されたようです」と、レイは淡々と報告書を読み上げる。


「そんな状況で退けたのか?」


「突如現れた光使いに助けられたようです。その者の術でナイトメアソルジャーを退け、ディメンズさんが狙撃を成功させたそうです」


「光使い? その者の名は?」


「アリシア・エヴァーブルーだそうです。確か、指令と共に旅をした……」


「なにぃ?!」ラスティーはつい煙草を落とし、慌てながら拾い上げる。


「……続けても?」


「あ……あぁ……それからさっきの話を詳しく頼む……」


「黒いドラゴンですか?」と、書類の頁を遡る。


「あぁ。東の空から飛んできて、ケビンを噛み砕いたと?」


「なんでも、バンガルド国の向こう側……瘴気に覆われた大地から飛来したそうです。現在は、バンガルドの村々を襲い、甚大な被害を出しているとか」


「数か月前の魔王軍の動きとかかわりがあるのかもしれないな。あれにはヴァイリー・スカイクロウが関わっていると聞く」と、ドラゴンに関する資料に目を落とす。


「で、どうなさいますか? 計画通りに次の一手を?」


「あぁ。ドラゴンに関しては、交渉のいい材料になりそうだ。さて、行こうか。アリシアにも会いたいしな」と、ラスティーは腰を上げる。


「では、手筈通りに」


「あぁ。ここの運営はしばらく任せるぞ」と、彼は指令室から出て、用意された愛馬に跨る。「飛ばせば明日の夕方には着くかな」




「ふぅ……」額の汗を拭い、一息つくエレン。キャメロンの手術はひと段落終え、山を越えていた。


「どうだ?」ヴレイズは彼女の様子を伺うように声をかける。


「全身複雑骨折と内臓破裂、特に鳩尾の傷は塞ぎました。しかし、腰……背骨の亀裂が難しく……このままでは一戦を退くしか……」と、ヒールウォーターバスに手を浸し、魔力を慎重に注ぎ込む。


「手を貸そうか?」あまり顔を見せない様に気を遣っていたアリシアが顔を覗かせる。


「アリシアさん?! ん、その……」彼女に対して言いたい事が多く、感情が爆発するのを抑えるのがやっとであった。


「ちょっと、いいかな?」と、彼女はエレンの腕を取り、目を瞑る。


「なんですか?」


「あたしの光魔法は他属性の回復補助も得意としているの」と、エレンの水の回復魔法の波長を読み取る。


「つまり?」


「こう言う事」と、小さな光の粒を作り出し、それをヒールウォーターバスの中へ落とす。すると、バス内に眩い光が満たされていく。


「こ、これは?!」と、エレンは慌てて手を入れて中がどうなっているのかを確認する。自分の恐れている事態が起きていないかだけを確認し安堵する。


「安心して、急速回復させて彼女に負担を掛ける様なことはしていないからさ。ただ、背骨の治療は難しいから、少し手を加えさせて貰っただけだよ」と、優しく微笑むアリシア。


「……こんな技術を私は知りません……一体?」


「ま、話せば長くなるかな」


「アリシアさん!!」我慢できなくなり、エレンはアリシアの胸に飛び込んで涙を流す。彼女には言いたい事、特に謝りたい事があり、喉を詰まらせながら泣いた。


「大丈夫。あの時のみんなの判断が正しかったから、あたしはまだ生きてられるの……誰も悪くないし、エレンの判断も正しかった」と、彼女の心中を読み取り、安心させるように頭を撫でる。


「でも……それでも謝らせてください!!」


 あの時、エレンはアリシアの重傷を治せないと判断し、延命処置だけ施してヴレイズの治療に専念した。状況だけを見れば正しい判断であったが、結果だけ見ればアリシアを見捨てたのは事実であった。


 その時の自分を今迄ずっと許せず、エレンは心中ずっと重たい後悔の念を抱えていた。


「うん、大丈夫だから……ね?」と、アリシアも目に涙を浮かべ、笑顔を見せる。


「ありがとうございます……あ、そういえば! アリシアさんに紹介したい人がいるんです! ロザリアさんと言う……」


「そうだ、ゴタゴタしていて言えなかったが……ロザリアさんが敵に捕らわれたんだ」と、ヴレイズが恐る恐る口にする。


「う゛ぇえ?! え、えぇじゃhjwhgづあshg!!!」と、エレンの心と頭に限界が訪れ、そのまま昏倒してしまう。


「ちょっと、エレン! 大丈夫?! エレン! エレェェェン!!」と、アリシアは彼女を抱き起し、激しく揺さぶった。




 その頃、ロキシーはバンガルド軍が呼び止める声に足を止めず、とある平原へと向かう。


「っち……久々にあいつの矢を受けたなぁ……」と、完治させた肩に触れ、未だに残る屈辱の感触に苦み走った表情を覗かせる。


 そんな彼女の頭上から強風が吹き荒れ、巨大な塊がゆっくりと降りてくる。


 それは、魔王軍の飛空艇であるガルムドラグーンであった。


「お迎えに上がったっすよぉ」と、真っ赤な髪色をした男が降りてくる。その者は黒勇隊諜報員のフィルであった。


「ご苦労様。流石に早いわね、このデカブツ」と、機体を軽く叩く。


「アップグレードしたっすから。てか、そっちも時間通り……お仕事の方は?」


「こっちも想定外な事が起きてね。早めに引き上げさせて貰うわ。で、貴方が引き継ぐわけ?」


「俺はヴァイリー博士の命令で、あのドラゴン君のデータを取らせて貰おうと」と、特殊双眼鏡を取り出す。


「そう。じゃあ、私はこれで」と、タラップに足を掛けて颯爽と乗り込む。合図と同時にガルムドラグーンは上昇を始め、高速で北の空へと消えて行った。


「さぁて、お仕事お仕事ぉ!」と、フィルは軽快な足取りで近場で火の手の上がる村へと向かった。

如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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