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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
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13.魔人復活

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ!

 ミシェルは意識不明の中、不思議な夢を見ていた。2歳の頃の記憶は全くなかったが、今回の事が引き金となり、サンサ村集落にいた頃の事を想い出していた。


 彼女の両親はロゥ家という村の中でも屈指の炎使いであった。ヴレイズとグレイのドゥ家よりも強い魔力を持ち、村の守り手として皆から頼りにされていた。


 村には狩りに勤しむ者や炎魔法を教える者などがおり、活気に満ち溢れていた。その中で、ミシェルの両親は炎使い育成に勤しんでおり、村の若者らに教授していた。


 その中でミシェルは母親の後ろをヨチヨチと歩きながら村を見回していた。


 そんなある日、運命の日が訪れる。


ミシェルの父親は実力者だったからか、村へ接近するヴェリディクトの気配にいち早く気づき、敵わないと悟り、彼女の父親はテントへ母親と共にミシェルを匿った。


 彼女の母親は外の様子を覗き、ヴェリディクトが凄まじい魔力を上空へ溜め始めたのを見て、炎魔法で穴倉を作り出し、そこへミシェルを隠したのであった。


 その時の記憶をミシェルは夢の中で鮮明に、黒炎が焼ける匂いまで思い出した。


「私は……サンサ族の……」夢の中の焼け野原を歩み、辺りを見回す。先ほどまで生活があった集落は跡形もなく消え去り、燻っていた。


 そんな中で、ひとり立ち尽くして泣いている1人の少年の前で立ち止まる。


 その者は、当時のヴレイズであった。


 彼の周りは円形状に焼け跡が残っており、その中で彼は呆然としながら涙を流していた。


「君は……」と、彼の身体に触れる。


 すると、ヴレイズの炎が彼女の冷え切った身体に入り込み、血が巡る様に駆けまわる。


「これは?!」と、ミシェルはその場に蹲り、炎の激熱に耐える様に歯を食いしばった。


「受け入れて……」と、ヴレイズ少年がポツリと口にする。



 


 ヴレイズは深い眠りにつくミシェルの胸に手を置き、少しずつ自分の魔力を送り込んでいた。それは炎魔法とは少し違う代物であった。


「それは、炎の回復魔法か?」不思議そうにリヴァイアが問う。


「そうとも言えるし、違うともいえます」と、目を瞑りながら、魔力を纏った腕に集中する。


「どういう意味だ?」


「……巻物にあった文面……『炎は炎に非ず。与えるは生と死』これが何なのか考えたが、多分、こう言う事なのだと思う」


「……成る程、『熱』か」悟ったように頷くリヴァイア。


「サンサ族は、炎使いと言うよりも、熱の使い手なのかもしれません。だから、サンサの炎は燃やす物を選べたのです。そして、熱と回復魔法は相性がいい」


「温めて代謝を促進させての回復……だが、やり過ぎると寿命を縮める、か……」


「だが、彼女を助けるには……少し特殊な方法を使わなきゃな」と、目を開き、今度は頭に手を置く。


「どうするのだ?」


「彼女自身に覚醒して貰います。炎使いとして」


「炎使いとして?」


「彼女はサンサ族の成人の儀を行わず、更に魔法に触れる事も無く今迄生きて来たのでしょう。だから、炎魔法に対して免疫力がなかった。そんな身体で高純度のファイアクリスタルを無理やり作らされ、生命力がごっそり削られ、そのショックで意識不明になっているんです。まず目を覚まさせるには、俺が少しずつ生命の元となる熱を送り込む。そして……」と、ヴレイズは口を横へ結ぶ。


「そしてなんだ?」


「ジャルゴを倒し、彼女のクリスタルを取り戻す。アレが無ければ、ミシェルはまともに生き続ける事はできないだろう」


「成る程。また塔へ向かわなければな。奴らを倒すために……ん?」と、偵察に向かわせたドッペルウォーターからの情報を受け取る。


「どうしました?」


「……ジャルゴが倒された。塔は再びグレイの手に戻った」


「なに?! グレイが!?」


「ジャルゴは力を扱える器では無かった様子だ……で、グレイは……」




 リヴァイアの分身は更に偵察しようと、気配と魔力を殺しながら灼熱の塔へ潜入していた。彼女は人型から蛇型へと姿を変え、壁を這うように移動する。そのお陰か、塔内部の警備装置は作動していなかった。


 それどころか、蒼炎や紅紫炎で脈動していた筈の塔は、現在は火が消えた様に冷えており、不気味な静けさが流れていた。


 リヴァイアの分身は首を傾げ、更に奥へと向かう。


 グレイの部下は今や一人もおらず、この塔にいるのはグレイ本人だけの筈であった。そんな彼の気配や魔力は一切感じず、更に疑問が深まった。


「……?」何かの異変に気が付き、人型へ戻って辺りを見回す。塔が急に揺れ、地響きを上げた。この揺れ方は大地による地震ではなく、塔事態が揺れていた。


「なんだ?!」急に塔から炎の魔力が溢れ、熱風が吹き荒れる。リヴァイアの分身の水分が徐々に蒸発を始める。


「この原因は?!」と、吹き荒れる魔力嵐の中心へと向かう。そこは塔の頂上ではなく、地下方面であった。魔動昇降機の隙間へとニュルリと入り込み、下へ下へと落下する。


 魔力の中心は塔の動力源のあった部屋であり、グレイはそこで魔人の力の源を掲げながら己の魔力を吹き上がらせていた。


「これは……?」更に水分が蒸発し、リヴァイアの分身は子供サイズにまで縮んでいた。


「この微かな気配はリヴァイアの人形か……ちょうどいい、よく見ておけ。そして本人に知らせるがいい! これが塔の真なる姿だ!」と、力の源から熱線が如き魔力を放出させ、部屋全体、更に塔全体へと魔力を行き渡らせる。


 すると、灼熱の塔が激しく振動し、周辺の黒い大地に地割れが入り、砕けて盛り上がる。塔はせり上がり、大地へ向かって炎を吹かせる。


「なんだ!?」


「この塔はエルーゾ国の防衛拠点だ。だが、それだけでは対魔王用の拠点としては弱すぎるとは思わないか? 国全土を守るには……」と、意味ありげに笑うグレイ。


 灼熱の塔は根元から凄まじい火炎を吹き上がらせ、暗雲の向こう側へと飛び立つ。塔は青空へと飛び上がり、やがて太陽の真下で制止する。


「な……?!」彼らのいる地下室には窓が開き、ここがエルーゾ国上空である事が嫌でもわかった。リヴァイアの分身は仰天し、表情を引き攣らせる。


「幾ら貴様でも驚いたか。ここが魔人の隠れ家であり、最強の防衛拠点。そして、一国を制圧できる最強の兵器だ。ジャルゴは力を使いこなせず、塔の真なる姿を見せる事は出来なかった。そして同時に……」と、グレイは暗雲の遥か下を覗き見た。




 灼熱の塔のあった黒い大地には巨大な穴が開き、不気味な強風が吹き荒れていた。その奥底からは重たい唸り声が響き、紅紫色の炎が溢れだし、中から大熱球に覆われた何者かが姿を現す。


 その者は鬼の様な形相をしており、肌は人間のモノではなかった。


「……我を呼び起こしたのは何者だ……?!」と、灼熱の塔が飛んでいる方へと顔を向け、ゆっくりと浮遊しながら向かった。




「グレイくんは、炎の魔人の本体を復活させたか……面白くなりそうだ」エルーゾの国境付近で双眼鏡を覗いたヴェリディクトは楽しむ様に微笑む。


「どうなさいますか?」隣に立つフレインは鋭い目つきで問いかける。


「もう少し観察してもいいだろう。どうやら邪魔が入った様子だが、それを取り除き、グレイくんは目的のモノを手に入れつつあるな」と、感心する様に唸る。


「それは?」


「魔人を超える力。グレイくんは、炎の魔人に打ち勝ち、更に自分の力を高めようとしている。どうだね、フレイン君? 興味あるかな?」と、ヴェリディクトは彼女の表情を伺う。


 彼女は鋭い瞳のまま薄ら笑いを浮かべ、背中にはほんのりと黒い炎を纏っていた。


「どうやら、君の中にいる呪いも反応している様子だね。あれを喰らえば、完全なる覚醒が出来るかもな。更に、その兄を止めんとするヴレイズ君……これは面白くなりそうだな」と、ヴェリディクトはエルーゾ国方面へと脚を戻す。


「もうしばらく、この国へ留まろうか……」




「えぇ?! 魔人本体を呼び覚ましただと?!」ヴレイズは仰天した様に口をパクパクさせた。彼は城の書物庫でこの国や塔の歴史を読み漁ったため、魔人の具体的な力を知っていた。


「塔を掌握し、魔人を倒して自分が真なる塔の主となるつもりらしい。そして、この国を制圧し、次は魔王だと……」と、分身が聞く話をそのまま口にするリヴァイア。


「炎の魔人……巻物や書物の伝説が本当なら……魔王並みにヤバい!!」ヴレイズは頭を抱えながら唸り散らした。


 そんな中、ミシェルがうっすらと目を開いた。

如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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