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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第4章 光の討魔団と破壊の巨人
312/601

5.塔の目覚め

いらっしゃいませ!

では、ごゆっくりどうぞ

 サンサ族集落跡地にて、遺跡の発掘調査が進む。グレイの部下はせっせと土を掘り返し、姿を現す遺跡に刻まれた文字をジャルゴがメモ帳片手に確認する。


「どうだ?」腕を組みながらグレイが急かす様に問いかける。


「焦るな。エルーゾ軍は、あと1週間は足止め出来るだろ?」


「ヴレイズが来た事によって戦況が変わった。それに、まだリヴァイアの分身が残っている。アレらは俺しか倒せない」


「中々実力のある炎使いが参加してくれないなぁ」嫌味混じりにジャルゴが口を滑らせる。


 すると気に障ったのか、グレイは額を痙攣させながら蒼炎の剣を作り出し、彼の喉元に突き付ける。


「余計な事を言わず、とっとと解読を進めろ」


「はいよ……」と、ジャルゴは含み笑いを殺しながら作業を続けた。




 その頃、砦ではグレイの軍とエルーゾ軍の戦いが行われていた。ミシェル現場で指揮を執り、炎属性対策で水の防御魔法を展開させる。その隙を突き、3体のリヴァイアの分身が畳みかける様に攻撃を仕掛ける。


 その間、グレイの軍勢に『後方の砦と拠点が潰された』という報告が入り、撤退が開始される。


「ヴレイズが上手くやったか?」リヴァイアの分身のひとりが口にし、感心した様に口笛を吹く。


「た、助かった……」剣を収め、息を荒げるミシェル。彼女らの到着が早かった為、砦の被害は少なく済み、軍の士気は上がっていた。


 そんな彼女らの前に伝令が現れ、ヴレイズが一仕事やったお陰で敵が引いた事、そして既に壊滅した砦はエルーゾ軍が押さえた事を伝えた。


「さ、流石ヴレイズさん! よし! このまま押してグレイを!」と、ミシェルは全軍に号令を出す勢いで腕を掲げる。


 すると、そんな彼女の前にリヴァイアの分身が立つ。


「待て。嫌な予感がする。確かにいい波が来ている。だが、グレイも無策ではないだろう。きっと何かがある。砦を押さえるだけに止め、様子を見よう」


「何を言うのです?! この勢いに乗じて奴を!!」ミシェルは目を血走らせ、鼻息を荒くさせる。


「復讐か?」もう1人の分身が彼女の背後から現れる。


「……えぇ……グレイは兄を……しかし、ヤツを討ちたいのは私だけではありません!」と、兵たちを見ながら奥歯を噛みしめる。


「……この怒りの炎、仇とならねば良いが……」分身は北の不穏な空を眺めながらため息を吐いた。




 その夜、荒野で気絶したヴレイズは目を覚まし、急ぎ城へと戻った。彼はそこで砦の防衛軍は攻勢に転じ、自分が潰した砦を奪還したと聞き、ミシェルの行方を問う。


「彼女は現在、グレイを捕えるべく黒い大地へと向かいました!」城の兵は敬令と共に口にする。


「まだ早い! あいつは戦況をひっくり返す策を隠し持っている! くっそぉ!!」と、ヴレイズは再び脚に炎を纏って北の空へ向かって飛び立とうと構える。


 が、何か躊躇をする様に踏み止まる。


「……悪いが、この城の書物庫に案内してくれないか?」


「……は?」兵はキョトンとした表情でヴレイズの顔を見る。


「少し、予習復習をしておきたくてな」と、ヴレイズはニヤリと笑った。




 次の日の明け方、ミシェル率いるエルーゾ軍がサンサ族集落跡地の10キロ手前まで近づく。彼女らは夜を徹して馬を奔らせたため疲労困憊していたが、この機を逃さんと、軍全体が鼻息荒くさせ、頭に血を登らせていた。


「このまま一気に畳みかけて……」ミシェルは腰の剣を強く握り、全軍に号令をかけようと抜刀する。


 それを見たリヴァイアの分身は眼前に出て、彼女を制する。


「皆疲れている。相手の士気は落ち、確かに今が攻め時だが、このままでは掴める機も掴めないだろう。一旦、引いた方がいい!」


「いいえ! この勢いに乗り、叩き潰します!! 皆、私に続けぇ!!」と、ミシェルは分身の忠告を聞かずに勢いよく剣を掲げ、手綱を振るう。


 軍団長である彼女の号令を聞き、着いてきた数千の軍勢は怒号を上げて馬を奔らせた。


「……どうなっても知らんぞ……」と、3体の分身は同時にため息を吐いた。




 夜通し作業を続けたグレイの部下たちは疲労し、手が止まりかけていた。そんな中、ジャルゴは解読が済んだのか、グレイに声をかける。


「ずいぶん時間がかかったな……」


「なにぶん、数千年前の古代文字が使われていたからな。鍵は、サンサの血を引くお前にかかっている」と、遺跡の中央にある窪みを指さし、そこに立つように口にする。


「ここでどうする?」


「ここで『サンサの炎と大地が一体となれば、魔人の住処が現れる』と記されている。一体とは……?」


「成る程……理解した」何かを悟ったのか、グレイは己の体内にある魔力循環を窪みから遺跡へと流す。そこから更に炎を吹き上がらせ、遺跡全体を燃え上がらせる。


 すると、土色だった遺跡が紅蓮色に脈動し、激震と共に盛り上がる。被っていた土やグレイの部下らを吹き飛ばし、遺跡がズンズンと姿を現す。


「これが魔人の住処?!」ジャルゴは踏ん張りながら遺跡を注意深く観察する。


「成る程……伝わってくる……」と、真っ赤な炎を灯した瞳を青く染める。


 すると、遺跡が蒼く光り輝き、天高く伸び始める。遺跡だと思われた部分は数百メートル高く上がり、あっという間に塔へと変貌する。


「灼熱の塔……魔人の帰還する場所だ」グレイは心地よさそうに煙を吐き出し、魔力を収める。


 塔は魔力が漲っている様に炎を滾らせ、呼吸する様に光っていた。


「で、わかるのか? この塔の扱い方を」ジャルゴはグレイの背後から伺う様に近づく。


「魔力を通した瞬間に理解した。これで、この国は俺たちのモノだ!」と、腕を掲げる。


 すると、塔の頂上から蒼い暗雲が一気に吹き上がり、エルーゾ国上空に広がっていく。雷鳴の予兆の様な音を立て、落雷が如き熱線が大地へ降り注ぐ。それは雷とは違い、着弾すると地面を薙ぎ払い、草原を一気に焼野原へ変える。


「す、素晴らしい……」それを塔の頂上から目の当たりにしたジャルゴはうっとりした様な声を漏らした。


「さて、早速、あの小五月蠅い軍を蹴散らすか」グレイは遥か下のエルーゾ軍へ狙いを定めた。




 眼前に聳える塔に仰天し、更に摩訶不思議な蒼い暗雲を見て目を丸くするミシェル。同時に全軍は馬を止め、暗雲の様子を伺う。


 すると先程は出鱈目に降り注いでいた蒼熱線がエルーゾ軍へ放たれる。兵たちは馬ごと一瞬で消し炭なり、バラバラになって消し飛ぶ。


「な!! これは!!」ミシェルの狼狽と同時に、全軍に恐怖が伝播する。彼女の次の命令を待とうとするが、恐怖が伝わったのか軍馬の方が辛抱できずに勝手に奔りだす。


「ミシェル! 早く命令を出せ! 撤退だ!!」同行していたリヴァイアの分身3人が声を揃える。


「は、はい! 全軍、砦まで撤退!!」と、声を張り上げる。


 すると、追撃する様に蒼暗雲から収束した熱線が放たれる。数千の軍は一気に散らばって吹き飛ばされ、500以下にまで減少する。


 ミシェルたちは灼熱の塔の一番近くにある奪還したばかりの砦まで後退し、分厚い門を閉じた。


「ヴレイズ……今何処にいるんだ?」少々苛立ったようにリヴァイアの分身が声を荒げながら空を仰いだ。


 蒼暗雲からの熱線は止み、不機嫌な音を立てた。




 蒼暗雲に気が付いたヴレイズは書物を閉じ、書物庫から出る。


「一足遅かったか……だがもう、やられっぱなしじゃあないぞ」と、空を仰ぎ、脚から炎を吹き上がらせて一気に跳び上がる。蒼暗雲へ突っ込むと、その中で蒼炎に絡みつかれたが、己のサンサの炎で振りほどき、雲の上側へ出る。


「サンサの炎は、同じサンサの炎で振りほどける……か……単純だが、意外とわからないモノだな……さて、次は同じようにはいかないぞ、グレイ!」と、ヴレイズは塔の方角へと飛んだ。

如何でしたか?

次回もお楽しみに!

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