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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第三章 光の使者と闇の息子
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38.闇の探索

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ!

 裏手の大庭園から城内へと進んだレックスたちは早速、侵入者を待ち受けていたダークグールを返り討ちにしていた。


 レックスは大太刀『髑髏裂き』を内装ごと斬り裂き、血飛沫を天井まで撒き散らす。彼はダークグールの殺気や見た目には臆さず、気配を頼りに次々と薙ぎ倒していく。


 彼の共に付いた隊員たちはその姿をただ眺めていることしか出来なかった。


「さ、流石……」


「なんで隊長じゃないんだろうな……この人……」


「いや、ヴァーク隊長と比べるとさぁ……」と、各々がぽつぽつと口にし、ため息を吐く。


 それを見て、後ろからコソコソと付けてきていたフィルが呆れた様に首を振る。


「おいおい、隊員にも活躍の場を与えるのが副隊長のさぁ~」


「俺たちの仕事はここの調査だ! 戦いに来たわけじゃないだろう? なら、不要な戦いは俺が引き受ける! おら、お前らは言われた通り、調査と捜索任務にあたれ!」と、ダークグールの腹に大太刀を深々と突き入れ、縦に掻っ捌き、血の雨を降らせる。


「乱暴な副隊長さんっすねぇ~」フィルはため息を吐きながら歩み、一番大きな身体のダークグールの血を採取する。


 そんな彼を見て、レックスは大太刀に付いた返り血を一振りで払い、肩に担ぎながら近づく。


「てぇかさ……なんでお前は俺ん所にきたんだよ。さっきは一番安全だから隊長の隣がいい、とか言ってたじゃねぇか」


「裏から入った方が何事もやり易いんでね」


「ったく、何で俺がこんな芝生頭のお守りをしなきゃいけないんだよ……」


「あんたのお守は必要ないっすね」


 そのセリフを耳にし、レックスは怒り顔で彼の正面に立ち、胸倉を掴む。


「お前が必要なくても、ボーン主任から言われてるんだよ! ったく、余計な行動を取ったら置いていくからな!」と、突き飛ばして回れ右をする。


 その間、隊員たちは黙々と城内の部屋へとクリアリングしながら侵入し、調査を始めていた。


「……乱暴な副隊長さんっすねぇ……俺が何したっていうんっすか」と、口にしながらも利き手を背中に回し、何か機械部品を操作しながら口角を上げていた。




 リサは5人の隊員を連れ、水路を進んでいた。奥からは死臭が漂い、隊員たちの鼻と目を刺激する。ある者は堪らずその場で嘔吐し、またある者は弱音を吐いて足を震わせていた。


 流れる水は暗く淀み、何かしらの肉片と骨がドロリと流れ、浮き沈みを繰り返す。


「ハズレを引いたって感じだなぁ……大人しくヴァーク隊長と正面突破すればよかったな」隊員のひとりであるジップが鼻をつまみながら口にする。


「本当ですね……水路と言っても、まさかこんな酷い場所を通る事になるなんて……」エルも自然と続け、重たい溜息を吐く。


 そんな彼らの言葉を聞いてか、リサがくるりと回れ右をし、眉を吊り上げた。


「いえいえ、俺らは副隊長殿と行動出来て安心しております、はい!」ジップは慌てて敬礼する。


「あんた思い切りハズレって言いましたよね……」


「いや、あたしもハズレだと思うよ実際……てか、なんでよりによって水路なのよ……みんなでワッと突撃してチャッチャと終わらせて帰ればいいじゃない。なのにウチの隊長は効率がどうのって……」と、リサは隊員たちよりも一層にうんざりした様な表情で苦笑し、顔を正面へ戻す。


「そうですよね! まったく、隊長は何を考えているのだか!」と、ジップが調子に乗って話に乗っかる。



「でも、お仕事だし……それを難なくこなしてこその黒勇隊だからさ」



 リサは横顔を見せて微笑み、また眉を吊り上げて表情を戻す。


「で、ですよね!」エルが応え、何が来てもいいようにエレメンタルガンを構えて気を引き締める。


 すると、それを合図に水面が泡立ち、中から腐敗したダークグールが現れる。隊員たちは不意を突かれて慌てたが、リサは冷静にエレメンタルバスターガンを構えてバーニングショットで消し炭に変える。


「気を抜かない!」


「「「「「は!!」」」」」




 ナイアは黒衣の男に連れられ、部屋の奥へと案内されていた。進むたびに内装が綺麗に整っていき、行き付いた場所は小綺麗な研究施設となっていた。


「ここで何を作ったの?」胸の下で腕を組み、男に目を向ける。


 男は彼女の問いには応えず、笑みを覗かせながら口にする。


「我々はここで、闇を復活させる研究を続けてきた。だが、魔王が現れ、今迄の研究の全てが無駄となった。そう、あの魔王に闇の殆どを奪われたのだ……だが、我々は諦めず、あいつの作り出したダークマターを回収して闇を研究し、なんとか『世界の影』に闇を取り戻す方法を探った……」と、研究所の扉を開き、更に奥へと進む。周囲には肉片やクリスタルの入ったガラス管がいくつも立ち並び、機械が微かに音を立てていた。


「不気味な場所ね」ナイアは相変わらず表情を歪め、呆れた様に鼻を鳴らす。


「だが、全ては無駄だった。やっとダークマターの研究を終えたと思った瞬間、あの物質から魔王のメッセージが飛び出てきた。『楽しかったか?』とね。まったく腹立たしい……それから目的は闇の復活ではなく、魔王の討伐へと変わった。まだ闇を諦めていない者達と袂を分かち、私はここで研究を続けた」


「つまり、貴方はここで見捨てられたのね」


「いいや、私が連中を見捨てたのだよ」彼は不気味にほくそ笑み、研究所内の最も奥にあるガラスケースに手を置く。それは真っ暗になっており中身は見えなかった。


「で? その魔王に届く牙っていうのは何?」


「魔王の弱点はご存知かな?」男は意味ありげに振り返り、ナイアの目を覗き込む。


「光よ。でも、クラス4の光線で焼いても痛がるだけで、命には届かない。いえ、魔王には『命』なんてものは無いわ」


「よく知っているな。流石は私のナイア」と、口にした瞬間、ナイアの拳が彼の腹にめり込む。「んぐぉう!!」堪らず蹲り、目を剥く。


「誰が私のナイア、だ!! 誰が!!」堪えていた怒りが漏れ、怒りで震える。


「くくくくく……では、これを見るがいい」男はガラスケース脇のスイッチを押し、ケース内を明るくする。


 そこには大きな肉の袋が吊り下げられていた。下の方はポッカリと穴が空き、得体の知れない液体が滴り落ちる。


「なに? この趣味の悪いモノは……??」表情が固まり、口を押える。


「これは君から採取したサンプルを元に作り出した揺り籠だ。ここから魔王に届く牙を生み出し、そして……ダークマターの中で眠っていたあるモノをサルベージした。それは……」と、男は狼狽するナイア目掛けて注射器を振り下ろす。


 すると、ナイアは顔も向けずに彼の注射器を蹴り飛ばして壁に叩き付ける。


「……こんなくだらない物の為に私は……あたしは……」腹にある古傷を押さえ、ワナワナと震える。


「全く油断のない女だ……そう言えば、お前は『あの時』、泣き叫びながら許しを乞い、組織に忠誠を誓ったなぁ? あっという間に裏切って見せたが……」と、彼が言い終わる前に彼の腹にナイアは蹴りを見まい、顎を膝で蹴り上げ、倒れたところで踏みつける。



「あの時、無様に命乞いしたのはね……生きながらえて、お前ら全員、潰すチャンスを伺う為よ!」



「大した女だよ……ナイア!」と、男は勢いよく起き上り、手に持っていた球体を地面に叩き付ける。そこから真っ白なガスが噴射され、彼女に襲い掛かる。


「くっ」顔を押さえ、研究所の出口へと駆ける。


「残念だったな、このガスは吸わずとも肌から吸収される。もうすぐ動けなくなるぞ!」と、男は仰け反り、ケラケラと笑った。




 その頃、リサは水路から廃城の地下にある牢獄へとたどり着く。牢の中には腐り果てたダークグールが唸っており、彼女らに気付いた瞬間、鉄格子に体当たりした。


「うわっ、ホラーの世界ね……ここに何があるって言うの?」と、指令書を懐から取り出し、行方不明になった4番隊のリストを取り出す。


「あのゼルヴァルト総隊長がいた4番隊ですよね? 手練れが多いと聞きましたが?」エルが身を乗り出し、彼女のリストを覗き込む。


「ラト隊長と副隊長2名……ん?」と、足元に転がる黒勇隊の装備らしきモノを拾い上げる。それは粘液や血に塗れていた。「何人生き残っているのやら……」


 そんな彼女らに気付いてか、この牢獄に黒衣の者が音も無く現れる。その者は先ほど、ナイアに襲い掛かったツインブレード使いの女剣士であった。


 影の下で笑顔を歪め、目を光らせる。


「久しぶりね、リサ」小声でポツリとつぶやき、再び闇の中へと姿を消す。

如何でしたか?


次回もお楽しみに!

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