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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第三章 光の使者と闇の息子
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16.エディの価値

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ!

 カジノを出て直ぐに、エディたちは首都の裏道から通じるブラックマーケットに来ていた。ここではあらゆる非合法なブツが流れており、ここを仕切るのはベルバーンの部下、フォルスウッドであった。


「武器に傭兵、薬に情報……なんでも流れている。ここを利用するのが一番ってな」エディは両手を合わせてにんまりと笑う。


「お前に売るものなんてあるのか?」ウォルターは鼻で笑う様に問いかける。


「お前が頑なにコインを返さなきゃ、もっと早くこの任務から解かれたろうになぁ~ 残念残念」


「……さっきから聞いているが、お前はカジノで稼ぐのが目的じゃなかったのか?」


「さっきから言ってるだろ? 俺の目的はここだよ。それに、あそこで800万手に入れても、俺はここに来ていたぜ。正直、今の俺にとって金はおまけみたいなもんさ」と、意味ありげな笑みを覗かせるエディ。


「金はおまけ? 1カ月に1000万ゼルを返すのが目的だろ? それで金がおまけ……?」ウォルターは頭を悩ます様な声で首を傾げて唸る。


「ま、見てろって」


 彼は早速、このブラックマーケットを仕切るフォルスウッドの部下の元へと向かい「貴重な情報を売りたい」と、持ち掛けた。


 ここで売れる情報は様々であり、貴重且つ鮮度の良い情報程、高く売れた。


「どんな情報だ?」フォルスウッドの部下である小男は興味で目玉をギョロつかせながら口にした。


「この情報を利用すれば、ハイリスクハイリターンな……そうだな大体1億ゼルの稼ぎは固い情報だ」


「ほう……そういう危険なのは、丁度いま、立ち飲み酒場にいるブルーゾーが欲しがっている」と、酒場方面を指さす。


「ありがとうよ。ほれ」と、隠し持っていた500ゼル相当のカジノコインを彼に手渡し、エディは立ち飲み酒場へと向かう。


 彼は、ブルーゾーと言う男に気さくに話しかけ、酒を一杯奢り、自然に取引を始める。彼のやる気やスキル、道具、仲間を聞き出す。


 それから首都のカジノに付いて話し始める。


「カジノをやるのか?」興味あり気な顔でブルーゾーはエディの話に喰いつき、酒を一気に呷る。


「今日、俺は中に入って警備状況や、誰が何処を守っているか、金はどこにあるのか……さりげなく下調べしてきたんだ。1日で2億ゼルが動く、魅力的な場所だ。仲間はそうだな……エキスパートが6人いれば出来るだろう」


「お前も来るのか?」


「いや、俺は情報提供だけだ。代金は1万ゼル。払うなら、ついでに盗みのプロを2人紹介してやる。どうだ?」と、ブルーゾーの顔色を窺うように覗き込む。


「……何が目的だ? 普通なら分け前が欲しいだろ?」


「……恥ずかしい話、あのカジノでイカサマがばれてさ、俺の顔はもうカジノ中にバレて、仕事に参加したら迷惑をかけちまう。それに……わかるだろ? あのカジノに痛い目を見て欲しいのさ」不敵に笑いながら手を差し出す。「やるか?」


 ブルーゾーは喉を鳴らしながら唸り、また酒を一気に呷る。懐から札入れを取り出し、薄い札束を取り出す。


「1万でいいんだな?」


「おう」




 その頃、ラスティー達はカジノのVIPルームで手厚い接待を受けていた。彼は罠がないか、さりげなく且つ注意深く観察していたが、裏の意図を全く感じず、このカジノの警備を任される男と会う。


 その強面男は先ほどのエディとウォルターの話をし、ラスティーの機嫌を伺う。


「成る程……」ラスティーは全て察したのか、意味ありげに含み笑いをし、肩を揺らす。


「どういう事?」キーラは何のことかわからず、目を細めながら首を傾げる。


「ウォルターが何でカジノに?」ダニエルも同じく頭を悩ませる。


「で、ラスティーさん……相談なんですが」強面男は眉をハの字に下げながらラスティーに一歩近づく。


 彼はベルバーン強盗団預かりの小さな傭兵団のボスであった。このカジノの警備を任され、月の稼ぎの約40パーセントを上納していた。更に、カジノの一月の売り上げの5パーセントをちょろまかし、その全てをベルバーンに収める契約となっていた。


 その為、彼自身の傭兵団に入る収入はとても少なく、日々不満が募っていた。そこで彼はラスティーの討魔団への鞍替えを考えていた。


「なるほど……」ラスティーは足を組み、差し出された茶を一口啜る。


「どうでしょう? 俺らを仲間に加えてくれませんか?」


「……で、お前らはどんな条件で加わりたいんだ?」鋭い眼差しを向けながら煙草を咥える。


 強面男はすぐさまマッチで火を点ける。


「30パーセントの上納で、このままこのカジノの警備を任せていただければ……」


「……ふぅむ」ラスティーは高々と煙を吐き、灰皿へ灰を落とす。


 そんな彼を見て、ダニエルが耳元へ顔を近づける。


「指令、まだベルバーンに喧嘩を売る時ではないと思いますが?」


「近々挨拶に行くつもりだった。カジノをそっくり取られるのは向こうにしてみれば痛手だし、黙ってはいないだろうが、致命的ではないし……丁度いい宣戦布告になりそうだな」


「どうせ潰す強盗団だし、私は賛成だ」と、キーラが小さく頷く。


「って事だ。条件は、上納金は月に20パーセント。それ以上も以下もない。その代り、ウチのモノもこのカジノに入れさせてもらう。それでいいか?」と、ラスティーは手を差し出した。


「20パー?! 喜んで!」強面男は急いでその握手に応え、固く握った。


「エディの奴……予想以上かもな」ラスティーは意味ありげにほくそ笑みながら握手し、その後、まるですでに用意してあったかの様に契約書を取り出しテーブルに広げた。


「用意がいいな……」ダニエルは呆れた様にため息を吐いた。




 ご機嫌顔でブラックマーケットから出たエディは、大通りを堂々と通り、首都から出た。


「どういうつもりなんだ?」ウォルターはサングラスを取り、不可解そうに眉を曲げながら問うた。


「何が?」


「お前はカジノで800万ゼル稼げそうだったんだぞ? 俺のせいで不意になったが……で、何かと思えばあんな所でたった1万ゼルを稼いで……それで終わりか?」ガッカリした様な声を漏らすウォルター。


「……浅いねぇ……悲しいほど浅いよ、お前の考え方……」


「なんだと?」



「いちいち説明するのも面倒くさいなぁ~ だが、言っておく。俺はただラスティーに1000万を返すつもりはない」



「……? …………?」


「ま、お前のボスがどんな考えか知らんが、俺は今回、自分の価値を魅せるつもりだ。それで、俺を無価値だと断じれば、お前に喜んでぶち折られてやるよ」


 彼のこの言葉が理解できないのか、ウォルターは目を左右に動かし、微妙な表情を浮かべる。


「つまり……今、ぶち折っていいって事か?」


「お前、俺の話聞いていたか?」


 そんな彼らの後方で、ブラックマーケットから付けている者が目を光らせていた。




如何でしたか?


次回、エディは次の策へ! 

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