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ゴッドレス・ワールズ・ファンタジア  作者: 眞三
第二章 炎の旅人と風の討魔団
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64.西大陸統一作戦! 裏取引き編

いらっしゃいませ!


では、ごゆっくりどうぞ!

 その後、会議は数時間にも及んで続けられた。パレリア・バルカニア・ボルコニアの終戦協定や細々とした条件、領土の線引き。グレイスタンとマーナミーナの立ち合いの元、契約に印が押され、大戦はこれにて終戦した。


 西大陸同盟に関しては、日を改めて再びこの会議場に集まり、同盟内容の話を詰める事となり、本日の会議は幕を閉じた。


 会議の終わり際、バルカニア王は一瞬去り際に、ラスティーの目をさりげなく覗き込み、鼻で小馬鹿にする様に笑った。


「……? 何か意味ありげだな……」ラスティーは王の笑いに疑問を抱きながらも、目の前で疲れ果て、椅子の上で崩れかけているパレリア大臣を気遣うように肩を叩く。


「……会議は3日後か……王代理である私に務まるだろうか……」


「今日を乗り切ったのだから、大丈夫でしょう」


「……3日後も同席してくれるか?」ゲッソリした横顔を見せる大臣。


「3日後は、俺の代理の者が来る手筈になっています。その人の意見に耳を傾ければ、俺よりも心強い事間違いなしです」ラスティーの言う代理人とは、ワルベルトであった。彼は既にククリス国内で密かに待機していた。


「君がそう言うなら、信じよう……」と、椅子から立とうとすると、腰が抜けた様に崩れ落ちそうになり、ラスティーに支えられる。「スマンが、部屋まで送ってくれないか?」


「お疲れ様です……」




「ねぇエレン~ 傷が治ったのはいいんだけどさぁ~ 服は治せないの?」ズタズタになった服をワザとらしく引っ張り、首を傾げるキャメロン。


 彼女ら3人の傷は大体治癒しており、キーラの刺し傷のみ時間がかかっているだけだった。


 キャメロンはすっかり完治しており、調子の良い声をだしながらベッドの上で足をパタパタさせる。


「裁縫道具は貸しますので、ご自分でどうぞ」エレンは少し疲れた様な目を向け、鞄からソーイングセットを取り出し、彼女に投げ渡す。


「なぁんだ……ヒーラーって服は治せないんだなぁ~」と、ワザとらしく舌打ちを鳴らし、穴だらけの上着をヒラヒラさせる。


「挑発しても無駄です」


 そんなキャメロンの身体をさりげなく眺めるウォルター。彼自身はこっそりと見ているつもりではあったが、他人から見れば『ガン見』であった。


 彼の視線に気付き、ワザとらしくにんまりと笑って見せる。


「なぁに見てんの? ウォルター君」ワザとらしく谷間を覗かせながら這い寄る。


「う……」ここで初めて彼女から目を逸らし、天井へ向ける。


「あんた、大人に見えて、結構お若いでしょう? いくつ?」吐息のかかる距離まで近づき、誘惑するような視線を向ける。


「じゅ、17……」


「あら若い! でも、こんな軍にいたら、そーいう経験は薄いよね~」と、またワザとらしくウォルターに触って見せる。


「『そーいう』経験?」ウォルターは血走った目で天井を眺めながら口にする。


「こーいう経験……」と、キャメロンは所々露わになった胸を彼の背中に押し付けて見せる。



「こらぁ!! ウチのウォルターにふしだらな悪戯をするんじゃあない!!!」



 キーラは傷の鈍い痛みを忘れて立ち上がり、キャメロンに指を向けた。


「悪戯? 悪戯かなぁ? それは本人がどう思うかでしょ? ねぇウォルター君。迷惑かな?」と、彼の背中に体重を預け、己の胸の柔らかさをワザとらしく味あわせる。


「…………」頭から湯気を立て、何も言えなくなるウォルター。


「下品な傭兵風情め!! やはり成敗してくれようか!!」キーラは手元に置いた剣を取り、勢いよく抜剣する。


「おいキーラ! 暴れると傷が開くぞ!」と、彼女を背中から羽交い絞めにして止めるレイ。そんな彼の視線はさりげなくキャメロンの谷間へ注がれていた。


「ふふ~ん。退屈な時はやっぱ、男をからかうに限るね! ウチの男連中(ダニエル達)はもう慣れちゃって反応が可愛くないんだよなぁ~ それに引き換えウォルター君は」と、彼の正面に向かって座り、首に両腕を絡める。「かわいいなぁ~」



「いい加減にしなさい」



 エレンは、読んでいた分厚い本をキャメロンの脳天に向かって振り下ろす。物騒な音が鳴り、彼女の目から火花が散る。


「あがっ……い、医者が患者に向かって……」


「患者を守る為です。早く着替えて、ベッドで大人しくしてなさい」と、船内で彼女が来ていたスーツを押し付ける。


「ったくぅ……ここは退屈なんだよなぁ~」と、スーツを片手に更衣室へと向かう。中へ入るとカーテンを閉め「覗くなよ!」とだけ言い残し、ズタズタになった私服をポイポイと脱いでは投げ捨てる。


「あいつ、解らんヤツだなぁ……谷間を見せつけて遊んだと思ったら……今度は覗くなって」と、レイが首を傾げる。


「チラリズムで遊んでいる内は、まだまだですよ」エレンは知っている様に口にしながら、本を開き、目を落とす。


「チラリズム?」キーラは剣を収めながら、低く唸った。


「チラリズム……」ウォルターは白目を剥き、枕に向かってダイブし、しばらく動かなくなった。




 会議が終わり、己の待合室へと戻るバルカニア王。付き人が扉を開き、跪く。王はそんな彼には目もくれず、部屋へと入る。


「上手く行ったみたいね、マルケン様」室内にある一等豪華なソファに何者かが腰を下ろして脚を組んでいた。その者はフォーマルなスーツを着こなし、巨乳を強調する様に胸元をバックリと開いていた。


「君の助言通りだったな。お陰で、我が国もやっと賢者を得る事ができるだろう」王は彼女の正面に座り、満足げに踏ん反り返る。


「まさか、今回の会議の裏で、既に裏取引が完了しているなんて誰も思っていないでしょうね」怪し気に笑う彼女は、赤ワインの注がれたグラスを手に取り、上品に飲む。


 彼女の言う『裏取引』。


 まず、西大陸の戦争を止め、ククリスを元に大陸を統一し、同盟を組むという策を言い出したのは、光の議長シャルル・ポンドであった。


 それを耳にした彼女は、この話をバルカニアへ持っていき、今回の戦争で起こる事を予言し、丸め込み、バルカニア王とシャルル・ポンドとの裏取引を取り持ったのである。


 その取引内容とは、『バルカニアが率先して同盟へ話を持っていき、ククリスを立てる代わりに、次の風の賢者はバルカニア国内の者から選ぶ』というモノであった。


 最初はこの話は鼻にもかけず、戦争を続行していたが、彼女の予言した通り、ガムガン砦は上手く落とせず、おまけに手薄な背後を突かれ、戦争の流れを滅茶苦茶になり、彼女の言葉に耳を傾けたのであった。


「あのパレリア大臣の隣に座っていた若造が、今回の戦争を引っ掻き回した黒幕か」


「黒幕、と呼ぶより首謀者? でしょうか……しかし、同盟はバルカニアにとって悪くない話でしょう?」


「今は、な。だが、魔王がいなくなれば、この同盟は無くなるだろう。その時は、この大陸を、否世界を纏め上げるのはククリスではなく、このバルカニアだ」


「私も、それを願っています。では……」と、彼女は席を立ちあがる。


「それにしても、いきなり現れて……ワルベルトの使いだと言ってはいたが……一体お前らの目的はなんなんだ?」王とワルベルトは数年前からの知り合いであり、これの前のボルコニアとの同盟の時は彼が仲介役だった。


「魔王討伐」彼女は不敵な笑みだけ残し、静かに部屋を退室した。


「また上手い話があれば、頼むぞ。ナイア」




 キーラの治療が完了し、待合室へと戻るエレン達。


 既に戻って来ていたラスティーは、ディメンズとこれからの事を話し合いながら荷物を纏めていた。


「もう出るのですか?」少々気怠そうな声を出すエレン。彼女は今迄ずっと3人を治療、看病、勉強、キャメロンのワルノリに付き合わされ、疲れていた。


「と、思ったが……ひと晩ここに泊まり、明日の昼頃に出ようと思う」ラスティーももちろん疲れており、このまま外に出たら数分で気絶する程に疲弊していた。


「それがいいだろう。会議中、こちらも色々あってな」ディメンズはキーラたちに親指を向ける。


「らしいですね。その『世界の影』について、貴方から色々と聞いておきたいですね」



「それは私が話しましょうか?」



 部屋にはいつの間にか、スーツを身に付けた大人の女性が腕を組んで立っていた。


「何者?!」キーラたちは身構え、向き直る。


「貴方がラスティーくんかしら? ワイリー(ワルベルトの愛称)から聞いてるわよ~ 中々のやり手で、私もやり易いわ」


「貴女は?」ラスティーは彼女の顔よりも胸に注目し、目を丸くさせる。


「ナイアよ。ナイア・エヴァーブルー」


「「エヴァーブルー?!」」ラスティーとエレンが声を揃える。


「そう。コイツ、アリシアの母ちゃん」ディメンズがポツリと口にする。




如何でしたか?


ヴレイズ編はもう少ししたら始まります。お楽しみに

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