episode,9
rank3 緑谷司
俺が、吸血鬼…。
やっと大学生活に慣れて、これからってときに…!
しかも、目の色が変わるだなんて。これじゃあすぐに気づかれて、退学なんて騒ぎになりかねない。
あれだけ苦労して入った大学なのに、今更やめてたまるか!
辛い受験勉強。友達と遊ぶことも、娯楽も一切控え、まさに死ぬ思いでやってきた。
それでやっとトップレベルの大学に入って、ゆくゆくはエリートとして成功していく予定だったというのに。
こんな志半ばで断念してなるものか。
…しかし、これからどうするべきか。
親に話す?
いや、ここは実家とは遠く離れてるし、信じてもらえないだろう。却下だな。
友達に相談する?
…面白がられて終わりだな。しかも他の奴に話されたらたまったもんじゃない。却下。
ネットで情報を集める?
結局根も葉もない、根拠なんてどこにもないような情報ばかりだろ。…却下。
こんな体じゃ、外に出ることもできない。
いや、できないこともないが、それはあまりにも不用意すぎる。
無用な危険は犯したくない。
幸いにも、食料として一般的に必要なものがないというのは嬉しいが…問題は血液。
だが、外に出られないこの体でどうやって血を飲めと?
まさか血液の配達なんてものはないだろうし、あったとしても利用したら不審がられるのがオチだ。
ただの大学生が、血を必要とはしない。
いっそ、このまま動かずに待機して騒動が収まるのを待つか?
今のところ、一番の安全策はこれだろうな。
喉の渇きは我慢しなければいけないが、他のデメリットに比べればこっちの方がいい。
よし、部屋でじっとしていよう。
考え続ければ、確率は低いが、解決策も浮かぶかもしれない。
「何これ、一番つまらない」
ポチッ。
は?何だ?
「が、あ、ああああ!」
何だよ、これ!最初の痛みとまるで違う!
まさか、効果切れ?
なんでだ、俺は何もしていない!
…あれ、痛みが消えた。
体の感覚も人間のときに戻ってる。
…いや、違う。戻ってない。
目の前が真っ暗で、何も見えない。しかも、指1本動きやしない。
……四肢不全と失明か?
は、なんなんだよそれ。こんなの、死んだ方がマシだ。
天寺瑠璃。俺にどうしろと言うんだよ…。