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Fantastic Lovers  作者:
4/27

episode,4

この日は他に特筆することもなく終わり、夕方に2人と別れて帰宅です。

早速今日買った本を読もうかと思います。


私は現在一人暮らしをしています。

部屋は全体的に淡い暖色系の色でまとめていて、お気に入りは木製の大きな本棚。

私が今まで買った本達が収まっています。

本に関するグッズ、つまりは栞やブックカバーなどを作ることも大好きなんです。

こうやって本を読むときが至福の時間なのです…。



ふらっ。


あれ?



ドサッ



か、体が動かない…めまい…?


「う…ああっ!」


私の体を突然焼けるような痛みが襲いました。

声を出してしまえばそこが裂け目となって体が破裂してしまいそうな、そんな気がしました。

なので叫び声すらあげられません。

こんな痛みは味わったことがないです。

痛く、熱く、苦しく、辛い。

助けを呼ぶことさえもできないまま、自分の体が自分のものじゃなくなっていくような感覚です。

体が引きちぎられるようで、どんな痛みでさえもこれにはかなわないのではないかと思いました。


…そうしてどれくらい時間が経ったのでしょうか。

数十秒だったのかもしれませんが、私にとってはとても長い時間だったように思われます。

体の痛みがいくらかおさまったころ、私は痛みのあまり閉じていた目を開けました。

そのとき私は驚きのあまり、言葉を失ったのです。

なにしろ目線があまりにも低く、上手く動かない腕に目を向けると蝙蝠こうもりのそれに変化していたのですから。

腕、つまり翼にあたる部分には飛膜があり、羽ばたけば今にも飛べそうです。

私の頭は混乱に満ちていましたが、1つだけ確かなことがあります。

今の私は蝙蝠だということです。

実際これすらにわかには信じられませんが。


「…蝙蝠」


やっぱりありえません。いったい何がどうしたら蝙蝠になんてなるのでしょう。

それに蝙蝠って人の言葉話せないはずなんですけどねぇ…。

今発した私の言葉は超音波などではなく、きちんとした人間の言葉でした。


「痛っ!」


また痛みが襲ってきました。これだけは何度経験しても慣れそうにありません。

まさかあの痛みをもう1度味わうことになろうとは…。

体が限界を超えそうです。

…私は2度目の苦しみに疲れ、ぐったりと体を床に寝かせました。


目を開けて自分の体を確認し、これが夢であることを願わずにはいられませんでした。

私は髪と同じ真っ黒な色の狼になっていたのです。

まさに漆黒。闇にも容易に溶けられそうな感じがします。

目線の高さから察するに、かなり大きいサイズですね。

牙も爪も鋭く大きいことこの上ありません。

正確な数値は測ってみないとわかりませんが。

というか、冷静に分析している私って…。


「今度は狼ですか…って、またっ!」


2度あることは3度あるとでも言わんばかりです。

私がいったい何をしたというのです。

少なくともこんな苦しみを受けなければならないような理由には心当たりがありません。

さあ、今度はどんな動物ですか!

これはもうやけになりますよ。これをどうやって受け入れろというのですか。

こうなったらめいっぱい楽しんでやります!

…もしかして私って変わってます?


「…あれ?」


私の体は人間に戻っていました。…本当に夢だったのでしょうか?

…いえ、あの痛みは紛れもなく本物。

今はもう既に痛みは感じてはいませんが、今度は全身に違和感を感じます。

私は立ち上がり、姿見の前に行きました。その途中にも体がおかしい感じがします。

言うなれば、体がとても軽く、視覚や聴覚などの五感が鋭くなり…そしてなぜかとても喉が渇いていました。

今日は暑かったので窓を開けていたのですが、外の物のにおいや音がはっきりとわかるのです。家の中の物も今までにないくらいくっきりと見えます。

外を見ると人影はなく、ただ自然があるのみですがね。

さらに言うと、この喉の渇きは水などでは潤せないのだと、本能的にわかってしまいました。

それを何で潤せばいいのか、今の私にはわかりません。



姿見で見た私の姿は…私であって私ではありませんでした。

なんと言いましょうか…。面影というか、元は私なのですが、顔つきや体つきが変わっていたのです。

自分で言うのもあれですが…綺麗なのです。

女子としては嬉しいことではありますが、いかんせんどうしてこうなったのかわからず、戸惑いの方が多いです。

今の私の体に関しては疑問点が多すぎます。かと言って自分で調べる手段を思いつくわけでもありません…。


私は何か情報がありはしないかとテレビをつけることにしました。するとちょうどニュースが放送されています。



「──速報です!昨日の国内テロ予告の犯人と思われる人物からビデオメッセージが届きました!今からそれを流します!」


「…はーい!日本国民の皆さん、はじめまして♪」



満面の、でも不気味な笑みでそこに映っていたのは、私を助けてくれたあの女性でした。

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