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Fantastic Lovers  作者:
3/27

episode,3

そして明くる日の昼。

私は一人暮らししている自宅から歩いて20分ほどの高校へ足を進めていました(これは私の足で20分なので、人によってはもっと早いかもしれません)。

季節は春。今日は風が弱く、日差しが強いせいか暑いです。


最近、やっとポニーテールができるくらいになった髪をおろして、膝丈の白いワンピースから出ている首元や腕、足にきちんと日焼け止めを塗っておきました。

一応お気に入りのパステルブルーのカーディガンを肩にかけては来たものの、必要なかったかもしれないですね。


休日のせいか、いつもよりも人が多いように思えます。

私は人ごみが苦手なので、暑さのせいもあってか少し人に酔ってしまいました。

建物の壁に手をつき、自分の体を支えます。

最近睡眠不足が続いており、それも原因の1つかもしれません。


「…大丈夫ですか?」


そんな私に声をかけてくれたのは1人の女性。どこにでもいるOLのように見えます。

綺麗なグレーのスーツに、白のブラウス。

清純、という感じです。


「すみません、少しじっとしていれば治ると思いますので…」

「とりあえず、日陰に移動しましょう?」

「あ、ありがとうございます…」


時間を確認するとまだ余裕があったので、素直に甘えることにしました。


「これ、もし良かったら飲んでください。ただの水ですから」

「いろいろとありがとうございます」


私は女性からペットボトルを受け取り、その中に入っている水を飲みました。


「…ふう。ありがとうございました。あの、何かお礼を…」

「そんなこと気にしないで。それよりも時間は大丈夫ですか?さっき確認していたようですから、気になって…」

「…あ。もう行かないと時間に遅れちゃう。すみません、本当にありがとうございました」

「いえいえ。気をつけてね」

「はい」


私は小走りでその場を後にし、待ち合わせ場所である高校前に向かいました。

私が去った後でその女性が不気味な笑みを浮かべていたことにも気づかないまま…。


──ちょうど13時。

余裕を持って出発していたおかげで、待ち合わせ時刻に間に合いました。

見ると黄鈴先輩は既にいました。シンプルな半袖Tシャツにデニムのズボンを着ています。

茜の姿は見えないので、少し遅れるのでしょう。


「こんにちは、先輩」

「ん、日向か。…月島はまだのようだな」

「そうみたいですね」

「日向。ちょっと顔色が悪いが、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。心配してくれてありがとうございます」

「無理はするなよ」

「ふふ、わかりました」


そう言っているうちに、茜の姿が見えました。

ガーリーカジュアルな服装で、白シャツにパステルピンクのカーディガンを合わせ、レーススカートを履いています。

綺麗なロングストレートの黒髪が風に揺れていました。


「遅れてごめんなさい!まさかこんなに人がいるなんて思わなくて」

「いや、大丈夫だ。じゃあ、行くか」


私達が行く先にあるのは大型書店。

3人とも皆本を読むので、3人で出かけるならここがいい、と決まったのです。

私はいつも先にお気に入りの作家さんやシリーズの新作を見に行きます。

今回はちょうど新作が出ていたので、それを買うことにしました。

このシリーズは、人の幸福の形を問うもので、1巻目を買ったときからお気に入りになっています。

これは6巻目で、完結作のようです。

終わってしまうのは名残惜しい気もしますが、仕方ありませんね。

私はこれを読んでいると決まって思うのです。


──人の幸福の形とは何なのだろうかと。

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