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(6) “遊園地”のステージ

 SVと久保田が引率して、ファンタジーの物語がテーマのエリア "フェアリーガーデン"のステージに向かう。つい最近まで"ファンタジーエリア"という身もふたもない名称のテーマエリアだったが、名前がダサすぎる、ということで名称が変更された。変更とはいうが、実のところ、開園当初の名称に戻しただけなのだが。いつ、だれがこんな身もふたもない名称に変えたのかというのは記録が少なくよくわからない。


 フェアリーガーデン・ステージ、という正式名称をもつステージでショーは行われるのだが、そうはいってもアトラクションの隣にある小さな場所でそんなに手の込んだ場所ではない。舞台照明や音響装置はそれなりにさくらがいうところの「高そう」なものが使われているので、さすがにデパートの屋上のショーよりは多少手がかかっている。 


 ショーを見るといっても仕事中なのでゲストが座るエリアの後ろ、すこし離れた場所からの鑑賞になる。長いベンチが並べられていて、ステージの近くは子供たちでほぼ満席だが、それより後ろはガラ空きだった。もちろん、空いていようがなんだろうが、アウローラのメンバーは座らない。ベンチはゲストのものであり、キャストのものではないからだ。


 ショーの内容は、ココとミミが子供たちにダンスを教える、というものだった。舞やさくらはこういうのが嫌いではないらしく、目を輝かせていた。ほかのメンバーも、雰囲気にのまれたのか手拍子をしたりして、それなりに楽しんでいるようだった。


 もっともただ1人の例外がいたが。 



 ―――15分後


 

 ショーが終わり、パラパラと拍手が聞こえる。

 終了のアナウンスがされて、親子が散ってゆく。

 その場に残されたアウローラのメンバーたちは、SVに「どうだった」と質問された。


 「子供たちが楽しんでいたのがよかった」

 「みんな一生懸命でよかった」


 というような感想が多く聞かれた。

 だが、いずみはどうもあまり気が乗らなかったようだった。


 もっともその場では雰囲気を壊さないように「まあ、いいんじゃないかな」とごまかしていた。久保田がメンバーにステージの周辺の事を簡単に説明している間、SVはいずみにそっと話しかけた。


 「正直に、どう思った? いいのよ? 向こうのキャストには聞こえないんだから」


 SVがいずみに声をかけた。うーんとうなって答えようか悩んでいたようだったが、いずみは感じたことを話はじめた。


 「親たちがショーではなく子供の反応を見ていた……ていうのが気になったかな」


 なんていうのかな……と言葉を選んでいるようだったが


 「大人たちがショーの内容を喜んでいたようには見えなかった」


 と正直に答えてくれた。


 「まあ、あくまでも個人の感想、てとこだけど。子供向けのショーなんだから、それでもいいと思うけど、ね」


 SVは何度かうなずいた。いずみの意見に説得力を感じたからだ。


 「私もね、正直にいうと、そう思わないでもないのよ」


 少し意外そうな顔をいずみに向けた。


 「それにしても、意外ね。ステージ以外に目を向けるなんて。演出家向きかもね」


 いずみは褒められたと思ったらしく、ちょっと照れていた。


 「いや、別に、そう思っただけだし。それに、わたし、子供っぽいこととか苦手で」


 あー、そうだろうなーとSVは思ったがあえて口にしなかった。

 そう思っていると、いずみが、全然別の場所を見つめているのに気が付いた。視線のその先には、ファンタジーとは明らかに無関係なデザインの自動販売機と、ポスターやメニューがべたべた貼られたプレハブの売店があった。キャストもおとぎ話とは無関係な派手な色のパーカーを着ている。SVはいずみと視線を同じ方向に重ねながら尋ねた。


 「気になる?」

 「なりますね。ここ、魔法の世界よね? 魔法の世界になんで自販機とかあるんですか?」

 「やっぱり、そう思うわよね」

 「千葉のテーマパークは確か自販機はなかったはず」

 「うん。その通り。昔はオンステージに自販機は一切なかったわ。まあ、今は違和感のないデザインにして何台か置いてるみたいだけど」

 「……働いてたんですか?」

 「まあね」

 「そうですか……」


 さしたる感銘もうけなかったようだった。だが、SVはいずみが同じ点で違和感を感じていることに感心したようだった。久保田が内線用の携帯で通話しながらSVに声をかけてきた。


 「IDカードができた見たいですので、そろそろオフィスに戻りましょう」

 「そうね。はーい、みんな。オフィスにもどるわよ」





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