ユメモウツツモサメネバオナジ
ロリが書きたかった。
後悔はしたくない。
俺が目を醒ました場所は果てのない奇妙な部屋だった。──果てがないのに部屋と言うのも変な話だが、何故か部屋だと分かる。
此処は何処だ、この状況はなんだと疑問符を浮かべていると、突然眼前に半透明な枠が現れた。何語か分からない文字が並んでおり、しかし何故か意味だけは理解できる。──手紙だ。
▼
[神託]謝罪と対応
[内容]突然の事で混乱していると思います。まずどうして貴方がその部屋にいるのか、その理由を御教えします。
平成27年7月8日午前11時43分、貴方は私の弟夫婦のしょうもない喧嘩に巻き込まれ、表現に困る死に方をしました。本当にすみません。──遺体の方は修復後、御家族へと届けました。尚、パソコン内部のデータは手前側で消去させていただきましたのでご安心ください。
我々の都合で亡くなられた有栖銀助様には異世界への転生権を謝罪品として融通させていただきました。本来ならば現実の世界への生還こそが最も望ましいものなのでしょうが、手前側のせいとは言え、ルール違反は有栖銀助様や周辺の方々にも被害が及ぶ為御容赦ください。
また異世界への転生前にその部屋で自らの情報の改竄をすることが可能です。この手紙に添付しましたアイテムをタッチパネル式で取り出す事が出来ます。その中で<ステータスボード>がありますので、それを御使いください。
また、<ステータスボード>を使用する場合の注意点なのですが、情報の追加や改竄にはポイントが必要になります。ポイントを増やすにはマイナスステータスを増やすことで可能となっています。尚、転生権だけでは足らないと思い少しばかりポイントに色を付けさせて頂きました。どうか納得のいく転生が出来るよう祈っております。
また何かの際に機会がありましたらその折に直接謝罪をさせていただきます。本当に申し訳ありません。
▲
よく分からん。
何となく、弟が騒いでいたネット小説のテンプレがどうだの、と言う話に似ている気がする。
だとするのならなんだと言う話なんだが、──まあ、多分コレは明晰夢で、やるのはキャラクターメイキングだ。それも自分を元にしたデータから引算足算しながらのキャラクターメイキングとは何とも面白いな。
添付アイテムと言う項目に触れ、いくつかあるアイテムの中から<ステータスボード>を選択する。
音もなく眼前に浮かび上がるタブレットの画面には無数のパラメーターが存在している。
▼
[名称]有栖銀助
[種族]人間20歳男性
[容姿]髪色濃茶/瞳孔濃茶/肌色黄色/身長182センチ/股下88センチ
[パラメーター]筋力27/頑強25/器用53/速度19/魔力0/幸運1
[スキル]<乗車6><健啖9><裁縫6><土木作業4><土木知識4>
[称号]<神に殺された男>
[ポイント]50,500
▲
現在のポイントは[50,500]──もっと増やすとしよう。
とりあえず不必要な物を処分する。まずそれなりに高身長だが正直運動部からの勧誘でいい思い出がないのでいらない。ざっくりと50センチ捨てる事でポイントが[51,000]に増えた。1ミリ1ポイントとは世知辛いな、有り難いけど。
ついでに現在所有しているスキルのいくつかも消しておいた。いや、異世界設定のゲームで<乗車6><土木作業4><土木知識4>が役に立つとは思えないし──ちなみに<乗車6>は2,100、<土木作業4><土木知識4>はそれぞれ1,000だった。ようするに最初の習得に100、それ以降はあげる度に前の数値+100と言う風に上がっていくのだろう。──ちなみに<健啖9><裁縫6>を消さない理由は食べるのが好きなのと、チクチクと破れた服を縫い続けていた結果を消したくなかったからだ。1から覚えるのはもう嫌だ。
これでポイントは[55,100]だ。もう少し欲しいが他に消していいのは──ステータス以外に記憶の引き継ぎ有無やらも弄れるらしいな。
なら記憶は限界まで消すとして──すげぇ、一気に100,000ポイント。ただ、最低限の知識はあるらしいのは不思議だ。消せたらもっと手にはいるのに。
年齢は13歳までは一つ減らすと365ポイント消費するけど、それ以下の場合は逆にポイントが上がっていく。幼いと生き残り辛いからだろうか──とりあえず6歳にしておいた。その結果パラメーターもかなり変動したがこればかりは仕方ない。ちなみに不思議なんだけど、年齢による身長の変化はなかった。何故だ?
──まあ、いいか。気にする事もないだろう。
さて、そろそろこの「155,100」ポイントを使うとしよう。まずは能力やらは二の次で容姿だ。
まず種族は数多の種族の中から竜護の民を選択した。ちなみにポイントは2,000で、他の人型種族と比べて性能が高いがポイントは次に高い竜人種の倍消費する。でも種族スキルの<気麟>は優秀だからしょうがない。ちなみに女性しか存在しないので性別は自動で女になった。解せる。
髪色は白銀に、瞳孔は紫に変更、肌は純白にした。それ以外にも髪の長さや、肌のきめ細かさ、艶張り、顔立ちもかなり弄り、最早天使なちびっこになっていた。──マーベラス、妹に欲しい。
ちなみに容姿だけで20,000ポイント使ったけど気にしない。残り「133,100」はあるし。
次はスキルの選択だ。今あるスキルの強化で<健啖9>に1,000ポイントを使い強化して、
「<健啖>が<飽食>に進化しました」
……スキルが進化した。いやはや予想外だ。まあ、問題がある訳じゃないし有り難く受け入れよう。
さて、次は特殊なスキルを探そう。よくゲームとかでもレア度の高いスキルを有しているだけで何らかのイベントが発生する可能性があるし、戦闘系やら沢山あるけど、最悪それはあとで入手できるだろう。
ステータスボードに検索機能がないかを調べると簡単に出てきた。フィルター機能もあり、現在所有しているポイントから入手できるスキルだけが無数に並んでいる。
一番高いもので100,000ポイント──<∞収納空間>だ。∞とか憧れる─某スニーキングとか、某ゾンビとか下手だから中々取れないんだよ─ので即決で取得した。
何より便利そうだし。
残りの32,100ポイントはどうしようか──魔法か、それともまた特殊なスキルか。近接戦闘系や生産系は除外する。殴りあいはスペック的に厳しいし、料理や裁縫みたいに身近な事ならともかく、それ以外はやる気がしない。
……悩んだ末に特殊なスキルを選ぶ事にした。魔法も後で習得出来るって、多分。
それから暫く30,000ポイント以内で習得可能なスキルを探して選んだのは<超成長><超鍛練>の2つだ。これだけで20,000ポイント消費するけどしょうがない。
残りの12,100ポイントから200ポイント消費してで<従魔術><治癒魔法>を入手する。
直接戦闘を捨てるのなら間接的に闘う術がないと厳しいだろうし、回復手段が無ければアイテム以外じゃ出来ない可能性もあるから。その場合使えなければ積む。
残りの11,900ポイントは全てを幸運に叩き込んだ。運が良いと言うのは実に希少な事だから。俺のステータスを見れば分かるだろう。
これでポイントは割り振り終わったのでステータスの確認だ。──ピーキーだなぁ。
▼
[名称]────
[種族]竜護の民6歳女性
[容姿]髪色白銀/瞳孔紫/肌色純白/身長132センチ/股下64センチ
[パラメーター]筋力1/頑強1/器用9/速度1/魔力0/幸運11,901
[スキル]<飽食1><裁縫6><従魔術1><治癒魔法1><超成長><超鍛練><∞収納空間>
[称号]<忘却の転生者>
[ポイント]0
▲
雑魚過ぎワロタ。
幸運以外一桁で草不可避間違いなしなステータスだ。魔力は一桁未満だし、魔法ちゃんと使えるのかね? しかも名無しのごんべいだ。
まあ、他にもスキルがあるからなんとかなる筈。……ならなくても夢だからいいし。
「ステータスは以上でよろしいですか? YES/NO」
「YESを選択した場合、以後ステータスの変更は不可能です。よろしいですか?」
「スタート地点はランダムです」
夢だから別に問題なし。強いて言うならそろそろ飽きてきたくらいだ。
YESをタッチすると唐突に眠気を感じた。どうやらこれで夢は終わりらしい。明日は確か、吹き付けを──……。