なりふり構わずパンイチで
「なんでわざわざ挑発するんだよ。怒ったらどうするんだよ!忍法とか使ってくるぞ絶対!」
水樹はウンタマーギルに聞こえないよう、小声で那由他を諭す。
しかし、那由他の返事は音量MAXだ。
「あんな変質者に瓢箪頭とか言われて悔しくないの!ござる系のクセにとか思わないの!私はあんたをそんな情けない男に育てたつもりはないわよ!」
「こっちだって育てられたつもりねぇーよ!でも、確かにあんな時代錯誤の変態忍者に馬鹿にされるのは悔しいし、ムカつくな。」
「でしょ!だったらぶちかましなさいよ!」
「でも、あいつ強いんだよな。」
「あんたバカ?何のために毎日毎日ドラゴンボール観てたのよ?戦い方を学ぶためでしょ?」
「いや、別にそんな視点では観てな ー」
「つべこべ言わず戦え!」
後ろから傷口を蹴られ、ツンのめるかたちで、ウンタマーギルの前へ出る水樹。
その顔には、傷口を蹴られた痛みよりも、この世の理不尽に対しての嘆きの表情が浮かんでいた。
俺って不幸。
「夫婦漫才は終わったでござるか?」
「め、夫婦じゃないやい!」
「くぅ〜、某もそんな照れ照れできる相手が欲しかったでござる!」
「えっ、えっ、急にどうしたの?」
「えぇい、うるさい!もう問答無用で無力化させてもらうでござる!」
ウンタマーギルが何やら印を結び始める。
あっ!これ、ナルトで見たことあるー!
「外道忍法 土流地獄」
嫌な予感ほど当たるもの。
水樹が危惧していた通り、ウンタマーギルが忍法を発動。
すると、グラウンドの砂が水樹を中心に渦を巻き始め、あっという間に下半身が地中に埋もれてしまい、身動きが取れなくなる水樹。
「くっ、抜けねー⁉︎」
「ござふふふ、これぞ外道忍法 土流地獄!このまま砂に埋もれる恐怖を味わいながら、生き埋めになるといいでござる。」
これ、普通にヤバいな。
足全然動かせないし、どんどん埋まるし。
周りの砂もまるで水みたいに流動的だから、腕を使って這い上がることも出来ないし。
普通ならこれで詰みだな。
「那由他!助けて!」
しかし、俺には味方がいる!
空を飛べる味方がな!
今は魔力切れで戦えはしないが、俺を抱えて飛ぶくらいは出来るだろう。
やっぱり、持つべきものは友達ってか!
「いやよ、普通に。」
「えっ⁉︎ごめん、よく聞こえなかったよ。あははっ、さっきなんて言ったのかな?もう一回聞かせてもらえる?」
そうそう、そんな訳ない。
きっと俺の聞き間違い、勘違いさ!
もう肩のとこまで埋まっちゃったけど、これってギリギリで助けるという演出なんだろ?
魅せるね〜!
「だから、普通に嫌だってば。」
「えっ⁉︎何故!何故なんだい!俺たち結構長い付き合いじゃないか!」
「人にものを頼む時の態度ってとても大切だと思うの。態度次第でお願いを聞いてもらえるかどうかが決まることもあるわ。」
「そんなこと言ってる場合じゃ」
「なら、さようならね。今までありがとう。楽しかったわ。また来世で会いましょう。」
「わかった!わかった!お願いします那由他様、お助けくださいっ!」
ここは、なりふりなんか考えては駄目だ。
命あっての物種だ。
那由他にこんな媚びへつらうのは甚だ遺憾ではあるが、死ぬよりはマシだ。
生きるためなら喜んで那由他の椅子になるさ。
パンイチでな!