ダッサイ名前
「少し落ち着くでござる、お転婆娘よ。おなごが暴力を振るうものではないでござるよ。」
「あんたは少しは慌てなさいよ!この不審者もとい変質者!変な格好して学校に不法進入してるくせに!この変質者もとい変態!」
「そんなにもとっちゃう⁉︎最早某、ただの変態になってしまったでござるよ!某にはウンタマーギルという立派な名があるでござるよ!某のことを呼びたければウンタマーギルと呼ぶでござる!」
「えっ、普通に嫌よそんなダッサイ名前呼ぶの。変態か忍者でいいじゃない。」
「同感だな。お前なんかコスプレイヤーで十分だ!」
本当は昨日と今日で二回も、人数にして三人も大人のリアルコスプレイヤーを見ているわけで、ぶっちゃけお腹いっぱいというか、下痢気味というか。
とにかく、もう大の大人のコスプレは見たくないわけだ。
「初対面の大人に対してなんたる暴言!なんたる口の利き方!某、御主らの将来を憂うこと柳の如くでござるよ…。」
「それは、その、ビッグなお世話だ!・・・以後気をつけます。」
憂われてしまった。
柳の如く。
不審者に。
変態に。
ござるに。
だからつい反省してしまった。
でも、よく考えてみると、不審者相手に敬語で話す必要あるのか?
否、だよな。
「あんたはなんでごさるのペースに呑まれてるのよ!二人でやるわよ!」
「お、おう!」
そうだ。
普通に話をしようとしていたが、こいつは普通に話をしていい相手じゃない。
冷静に、なんてもっての他だ。
なんてったって、こいつは不審者だからな。
いくら昨日二人ほど不審者と会ったからといって、不審者慣れしてはいけない。
不審者には警戒しなければ。
知らない人には付いていかない。
これに限る。
「ござっ!なんと豪気な中学生でござるか!」
二人掛かり。
つまり、俺が腰に向かってタックル。
那由他が体をずらし、俺の横から不審者の、ウンタマーギルの顔に向かってハイキック。
なんの打ち合わせもしていないが、そして当の本人が言うのもなんだが、息ピッタリだった。
非常に不本意だが。
阿吽のタイミングだった。
俺のタックルで身動きが取れなくなった一瞬後、那由他のハイキック。
躱される訳がない。
そんなタイミングだ。
実際に当たっし。
「やったか!」
那由他は渾身のハイキックが決まったため、つい声出して確認する。
俺はそんな那由他の姿を脳内にバッチリ保存する。
ハイキックなんかやるから、なかなかの食い込みだ。
「なっ⁉︎」
これは俺な、一応。
このなっ⁉︎という台詞を言ってたときの俺の考えていたことは一つ。
ブルマは正義だ。
じゃなくて忍者ってやっぱり格好いいだ。
このウンタマーギルもとい変態は気持ち悪いが、忍者という何回もヒーロー戦隊のネタになり、ネタに困ったらとりあえず忍者と東映に思わせる、あの忍者という枠組みで考えると、格好いい。
だって、
「変わり身の術だ!」
何時の間にか、俺は忍者服を着せ付けられた、丸太、ではあるがただの丸太ではなく、マネキンのように人の形を模して造られた木人形に抱きついていた。