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股間を隠そう!

「・・やっぱり従えねえな、あんなキザ野郎には。なんだよ、ウインクって。一瞬給食でかけたわ!二日連続給食嘔吐は勘弁して欲しいよまったく。」


・・・・・・・

・・・・・・

・・・・


【はい!いよいよ後半戦が始まります!どうやら、奇数チームではメンバー内で少し話し合いがもたれたようですね。そこで、あっと、先程やってやるぞと息巻いていた水樹さんが、これはバックスか?バックスですね。バックスについております。これは一体どういうことなのでしょうか!水樹さんの代わりにフォワードにはモブ男Aさんとモブ男Bさんがつく模様です。このポジションが先程話し合われたことなのでしょうか?対して偶数チームのほうはといいますと、こちらはフォワードは一人ですね。そのフォワードというのが野球部のキャプテン兼委員長も務めるザ・リーダーのたけしです。後は野球部にバスケ部、那由他ファンクラブのメンバーのようです。これは如何にたけしさんにボールを集めるかが鍵になりそうです。】


ピー!

キックオフ!


【おっと、軽く説明している間にキックオフです。後半戦が始まりました。そこで、ここからは前半の水樹さんに代わりまして、この物語の正ヒロインである那由他さんと共にお送りいたします。いやー那由他さん、この試合の見所はどういったところだとお考えですか?】

「それはもちろん鍛え抜かれた筋肉の躍動と、それに見惚れて涎を垂らすメス共のアホ面でしょうね」

【・・・は?】

「そうね、私は筋肉なんかに興味というか、関心というか、とにかく筋肉に関しては無味無臭だからどちらかと言えばメス共のアホ面が楽しみね。」

【・・・おっと、一瞬この世を放棄している間に動きがあったようです!キックオフしてから暫く、ボールは両チームを行ったり来たりしていましたが、ここでボールは委員長たけし選手に渡りました!そしてなんと、ボールを手にして、いや、足にしてから一気に、瞬く間にゴール前!シュート体勢に入りました!】



「勝つのはこの僕のチームだ!見てて下さい、那由他様!」


その時那由他は、固唾を呑んで委員長の筋肉の躍動を見ていた女子共を見ていた。

どんまい。

委員長たけしの渾身の力を込めたシュートが、ゴールキーパーの脇を目掛け飛んでいく。

えっ!

こんな至近距離でそんな全力で蹴る普通!

ってレベルで飛んでいくボールは、とても普通の人間が反応出来るスピードではなかった。

フォワードにいたモブ男A、Bは既に諦め、落胆の表情を浮かべている。

そう、誰しも委員長たけしの得点を疑わなかった、ってやつだ。

しかし、誰しものなかにこの男は含まれていなかった。

誰しもの中に含まれない男、それは水樹。

さすがハブられかたが堂に入っているだけはある。

まあ、それは置いといて、水樹は委員長のシュートの瞬間魔法を発動。

魔法の効力は一瞬にして全身に行き渡り、四肢に伝わる力の躍動を、筋肉の臨界点突破を感じる。

正確には筋肉に殆ど変化はなく、爆発的身体能力の強化はあくまで魔力によるものなのだが。

気持ちは筋肉の爆発だ。

躍動だ。

女子は筋肉が大好きだ。

血湧き肉躍り、女子昂ぶるってやつだ。

なんだ、それは?

話が、というか独り言が脇道に逸れてしまったが、元に戻します。

何処までいったっけな。

そうだ、委員長のシュートだ。

その瞬間水樹が魔法を発動。

皆が諦めた、委員長は既にガッツポーズの準備をした瞬間。

水樹が超反応を見せ、そのままキーパーの脇を通り過ぎていくと思われたシュートを見事なトラップで止める、と思ったのだけど。


【うおぅっと!水樹選手、たけし選手の猛烈シュートを体を張って止めたー!!しかし、体を張るのはいいが何故自らの息子を犠牲にしたのでしょうか!身体能力強化の魔法でもいちもつだけは強化出来ないことを忘れていたのでしょうか!これは痛そうです。見てるこっちも痛くなるくらい痛そうです。それはあんな至近距離から全力シュートを股間で受けたのですから、痛くないわけありません!そう!痛くないわけないんです!死ぬほど痛いんです!】

「あははは!ぶあははは!傑作!傑作だわ!」

【・・・どうして股間で受けることになったのか、スーパースローカメラで確認してみましょう。】


スーパースローカメラの映像には、足首でトラップしようとしたが、推進力が凄すぎて目測よりも前に進んでしまい、結果的に片足を上げて股間でボールを受け止める、大変不様な主人公が映っていた。


もうやめたげて!!


【なるほどですね。これは余りの膂力に計算がズレてしまったということでしょうか?この映像を見る限りではそう見えます。どうやらワザとではないようです。】

「あのアホ!思いっきり魔法使ってるのバレるじゃない、あんな動きしてると!リリー達がコッチに来るまではお互いに目立つ行動は止めようって言ってたのに!私ちょっと行ってくる!」

【えっ⁉︎ちょ、那由他さーーん!】


那由他は声だけのナレーションの呼び止めを無視し、蹲って悶えている水樹の元へ向かう。


【これは予定外の行動が続いております。一体この試合はどちらのチームが勝利を手にするのでしょうか!そして、あんな大雑把な動きしか出来ない水樹に、そもそもドリブルして相手を抜くなんて細かな芸当が出来るのでしょうか!見所いっぱいの後半戦、まだまだ続きます!】


・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・


「ほぐぅぁああ!!」


追い討ち。

追撃。

いや、この場合は止めを刺したと形容したほうが適切か。

これで死にぞこなったとしても、元通りとはいくまい。

そんな攻撃を、蹲って悶えている水樹の股間にかましたのは何を隠そう、股間を隠そう!那由他である。


「おい!見たか今の!」

「見た見た!あれはとんでもなく、」

「「とんでもなくたまらんなぁ」」

「羨ましすぎる!なんで水樹の野郎が那由他様の御御足に触れるんだよ!しかも股間で!」

「本当だよ!那由他ファンクラブの幹部でもあんなご褒美受けたって話は聞いたことがないぜ!」

「それどころか那由他様に触ったことあるって人が余りに少ないんだよな。」

「そうだよな。俺の知り合いでプリントの受け渡しの時に手が触れ合ったってやついたけど、そいつ一ヶ月は触れ合った手を洗わないどころか、匂いを嗅いだり、舐めたりしてて、とんでもなく異臭を放ってたやつがいたな。」

「マジかよ!それは羨ましいけど、汚いな。」

「しかも、時期が時期だけに、見事に中二病発症しててな。異臭のことを選ばれしものの匂いとか言ってて、涎臭い奴だったっけ。」

「・・俺はもし触れ合う機会があったとしても、舐めるのはやめとこう。」

「ああ、そうしな。」


このモブ男共の会話でお分かりだと思うが、現在試合は那由他の闖入によってストップしている。


「皆さん、試合中にごめんなさい。でもこのゴミク、・・・水樹さんがというか、水樹さんのサンがどうやら一刻の猶予もないようなの。今すぐ保健室に連れて行かないと水樹さんが二丁目の住人になってしまう恐れがあるから、席が隣で家も隣でオマケに保健委員の私が責任を持って連れて行きます。皆さんはどうぞ、試合の続きをしていて下さい。」


そう言うと那由他は、白目で口から泡を吐いている水樹に肩を貸し、水樹は半ば担がれながらヨロヨロと保健室へ向かう。


「な、那由他様!そんな雑務なら私めが!」

「いや、俺がやります!」

「僕にやらせてください!」

「静粛に!!」


那由他の大喝で静まり返る体育館。

・・主人公間違えたかな?


「私は自分の役目、仕事を一生懸命こなそうとしています。それはもう一生懸命に。それを邪魔すると言うのなら仏の那由他と呼ばれている私でも許さないわよ?」


「「ぎょぎょぎょぅ!」」


先程手伝いを申し出たでた、出しゃばり共が一斉にキョドリ始める。


「勘違いしないで欲しいのだけど、手伝いを申し出てくれたことは嬉しかったのよ?でも、自分の仕事を投げ出してまで人の手伝いをするのは良くないと思うの。自分の仕事すら出来てないのに人の仕事なんて出来るわけないじゃない?だから、皆さんは自分の仕事を一生懸命こなして下さい。私はそんな人が・・。さらば!」


那由他は最後を濁すと、足早に体育館を去り、保健室に向かう。

那由他が体育館を去った後、暫く静寂が空間を支配していたが、誰かの一言で皆が一斉に動き出す。


「僕たちも仕事をしよう。」

「そうだ!那由他様の言う通り、まずは自分の仕事をしよう!」

「そうだな!やろうぜ、皆んな!」

「バカ、テメーが仕切んなよな!」

「いいじゃねーかたまには!モブ男でも仕切りたい時くらいあんだよ!それにオメーもモブ男仲間だろーが!」

「そだな!じゃ皆んなやろうか!」

「「ウオーー!!」」


この日、今までの体育の中でも間違いなくベストな試合が、繰り広げられたことは言うまでも、聞くまでもないだろう。

・・語ることもないだろうから、この辺で体育の授業編は終わります。


【なんと!急に体育の授業編が終わってしまったー!実は実況が楽しかったナレーションとしては残念です、ムムッ!・・言ってみただけです。すいません。・・・おっと、ここで二人して体育の授業を抜け出し、ナニをしてるか分からない主人公とヒロインに何か動きがあったようですね。早速現場に行ってみましょう。】


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