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ハードボイルド


やぁやぁ。

場面変わってここは体育館のとある一室。

決して広くはなく、薄暗い部屋。

窓はあるが年季が入っており、立て付けが悪くなっているため、余程の力で開けようとしなければ開かないだろう。

そして、年季が入っているのは窓だけではなく、四方を囲む壁と、出ると直接体育館ホールに繋がっているドアも、窓同様傷んでいた。

そんな部屋にやたらデカイロッカーが向き合うように設置されている。

狭い。

制汗剤の匂いもすごい。

そう、この部屋は更衣室だね。

現在は体育前の休み時間。

つまり、体育着に着替える時間だ。

現に今は女子が更衣室で着替えを行っている最中である。


「那由他様ー。お着替えお手伝いしますわ。」

「あっ、ずるーい!私がお手伝いするー!」

「何よ!私が先に申し出たのだから、後から割り込まないでよ!」

「那由他様はあんたみたいに女子力の低い人より、私のような女子力の高い人を御所望だわ。だから、着替えの手伝いをしたかったら、まず自分のことを考えなさい!」

「やるの?」

「やってやろうじゃない!」


モブキャラ共が今にも醜い争いを始めようとした瞬間。

今の今まで我関せずを決め込んでいた争いの種である那由他が動く。


「喝っ!!」


お腹の底から出したような大喝。

その余りの迫力に、


「「ヒィィ⁉︎」」


モブキャラ二人は驚きの余り、互いに顔を合わせ、キョトンとしている。


「あんた達。あんた達がくだらないことで喧嘩を始めるのは勝手なのだけど、その喧嘩は本当にやる必要があるのかしら?少し考えてみてくれない?」


二人は那由他が何を言わんとしているか計りかねていたが、那由他の服装を見て同時に合点がいく。


「「もうお着替えになったのですね・・・」」


二人同時に、何処か残念そうな声で呟く。

そう。那由他は感心がないふりをしていたが、実は二人の喧嘩のもとが自分だということに責任を少しだけ感じ、素早く着替えていたのだった。


「そういうこと。だから悪いけど着替えの手伝いは不要よ。」


そう言い残し、颯爽と立ち去ろうと、ドアノブに手をかける那由他。

しかし、そのまま出て行くことはせず、2人に向き直り、


「そろそろ体育が始まるから、二人共早く着替えなさいよ。」


そう言って、今度こそ更衣室を後にする那由他。

ところで、那由他の去った後の更衣室はと言うと。


「フォォーー!那由他様に気を遣われましたわーー!!」

「イヤーー!!私は初めて那由他様に話しかけてもらったわーー!!」

「キャーー!!なんてハードボイルドなのーー!!」

「神出現。神出現。」


こんな感じで、姦しいというか、やかましい叫び声がドア越しにも聞こえてきたのであった。


・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・。





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