教訓その1
二階に上がってすぐ正面がトイレだ。
水樹の部屋はトイレには入らず、右に曲がり廊下を少し歩いた、トイレから数えて二部屋目になる。
ちなみにトイレと水樹の部屋の間の部屋は、物置だ。
水樹の部屋のドアには、お約束で、「水樹の部屋(勝手に入るものには死を!)」と書かれたプレートが取り付けられている。
確かにいきなり入られるとマズイことを水樹は部屋でやっているな。
好きなエロ本ランキングとか。
とナレーションしている内に水樹は自室に入る。
そこで水樹は何かを思い出したように、ベッドに駆け寄り、宝物の生存を確認する。
「よかった、無事だ。」
水樹の宝物は最後に見た時と変わらない様子で、ベッドの上に置かれていた。
無造作に置かれていたのではなく、覆い隠すように、シーツが敷かれてだ。
「やっぱりいいよなー、眼鏡秘書」
水樹のエロ本ランキング1位は眼鏡秘書である。
水樹の中ではかなり前から1位は眼鏡秘書らしく、水樹のエロ本コレクションの約半分は眼鏡秘書関係である。
「ふー、疲れた、疲れ過ぎた。」
水樹はエロ本が無事だったことに安堵し、机の上にエロ本を片し、ベッドに横になる。
すると、すぐに瞼は重くなり、微睡みの世界がすぐさまやってくる。
あぁ、こんなに疲れたのは校内マラソン大会以来かな、と考えたころには水樹は夢の中へ旅立っていた。
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
ん、んん、ふぁ〜〜。
いつの間にか寝ちまってたか。
今何時だ?
うわっ、夜中の3時か。
なんと中途半端な。
これはもう一眠りだな。
水樹は再度夢の世界へ旅立つために瞼を閉じる。
・・・・・・。
・・・・・。
眠れない。
何故だ?
一応、自分に問いかけてみる。
ぐ〜。
答えは頭ではなく、お腹が出してくれた。
そう、腹が減ったのだ。
思えば、そのまま寝てしまい夕飯を食べていない。
それに、昼に食べた給食は渚との戦いの中で、全部吐き出している。
それはお腹も空くさ。
ぐーぺこってやつだ。
というわけで、水樹は一人冷蔵庫のある一階のリビングへ向かう。
『うーん、ご飯まだ残ってるかな?ラップ掛けされてるとベストなんだけれど。ていうか、母さんもご飯出来たなら起こしに来てくれたっていいのに。冷たいなー。こんなんじゃ、万が一俺がグレても責任は母さんにあるぞ。』
階段を降り、すぐ隣がリビングになっている。
ここでは、家族が団欒とし、テレビを観たり、食事をとったりする。
まあ、田舎に建ってるだけあって、広さは中々のものだ。
「メシメシっと。」
水樹はラップ掛けされたご飯を期待し、冷蔵庫を開ける。
ここでご飯があったりでもしたら、水樹が喜ぶ。
そんなことはナレーション的には面白くないので、当然ご飯はない。
「うーん、やっぱないか…」
水樹は人生の厳しさ、運命の理不尽さを痛感する。
お腹が空けばご飯が出る。
この当たり前が本当は当たり前ではなく、すごく恵まれていることなのだと中学三年の春に気づくことが出来たのは幸いだろう。
水樹が来る前にお腹空いてるわけでもないのに、急いで水樹ママの用意していた水樹の夕飯を食べた、ナレーションである僕に感謝してほしい。