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なんてもないようなことがー


「・・・・・・。」


水樹は未だに路地裏から動けずにいた。

縦揺れは収まったが、どうにも動こうとは思えない。

那由他に言われた言葉が、何度も何度も頭の中でリフレインする。

あれは一体どういうことだったのか?

いくら自問自答しても答えは出ない。


「・・・いい加減帰るかー。」


いつまでも立ち尽くしてはいられない。

水樹は学生。

明日は平日。

つまり、学校である。

今日、いくら命掛けの戦いをし、腕を吹っ飛ばされ、那由他に告白されても明日は来るのだ。

明日にとって、水樹の都合は関係ない。

そんなもの知るところではないのだ。

よって、明日も学校へ行くために水樹は帰宅する。

今日起きた諸々の事情を出来るだけ考えないようにしつつ。



「ただいまー」

「お帰り〜、ちゃんとウガライしてから部屋に行くのよー、季節の変わり目で風邪ひきやすいんだから。」

「へーい」


帰宅して早々何時もの会話。

どこの家でも行われている、母と子の会話だ。

思春期真っ盛りの水樹にしてみれば、煩わしい以外の何物でもないやりとり。

しかし、今日に限っては極寒の地で飲む温かいスープのように、何時ものやりとりが心に染み渡った。

いつも通りってなんて温かいんだろう。


【関係ないないけど、初めてまともな例えが出来た気がする。ただそれだけ。】


「・・あら今日はやけに素直ね。」


水樹には聞こえない声で、水樹ママは呟いた。


「ガラガラ、ペッ!」


水樹はウガライ(うがい手洗いの略らしいよ)を終わらし、自分の部屋のある二階へと足を運ぶ。



余談であるが、水樹の家は木造二階建ての一軒家だ。(ちなみにその右隣が那由他家だ。)

周りの家々はコンクリートで作られた家が多いだけに、水樹家は少し浮いている。(ちなみに那由他家はコンクリート製だ)

というのも、水樹の住む地域はとにかく台風が多い。

それも来るものの殆どが、毎回どこかの町や、村に大きな爪痕を残すほどの威力である。

よって、この地域の建物は基本耐久性に優れたコンクリート製の家が連立している。

そんな中で木造の二階建てなんぞ建てると、建てた当初はご近所さんにそれは心配されたものであった。

そんな木なんかで作って、大丈夫か?と。

恐らく、水樹達は台風の恐ろしさを知らないのだなと思ったための憂慮だろう。

しかし、そんな周りの心配は水樹の家が建って初めの台風で吹き飛ぶこととなる。

台風だけに。

・・・・・・。

その台風はいつも通り凶悪で、その凶悪ぶりは、電柱をへし折り、風力発電所の風力を電力に変換するための、プロペラを捥ぐほどであった。

せっかく建てたのに可哀想。

水樹家の周辺住民は自宅に立て籠もっている中、そう考えた。

しかし、みんなの期待を裏切り、水樹家は台風前となんら変わりない姿で鎮座していたのである。

それには周辺住民皆たいそうびっくりし、一時その話題が主婦の井戸端会議の殆どを占めたほどだ。

まあ、水樹の家が吹き飛ばなかったのは単純に家を建築した職人さんの腕が光っただけなので、そう騒ぎ立てることではないが。

ただこの話で皆様に伝えたいのは、水樹の家が木造二階建てということではなく、木造二階建てが建つとみんなの話題に上がるほど、田舎のほうに水樹達は住んでいるということであったりする。

これぞまさに閑話休題。



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