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ロマンティックは突然に


「那由他、もう一回きちんと問題のシーンを見て欲しい。俺は始めにキチンと乳揉みを断っているだろう?しかし、いきなりグヘヘとか笑い出して揉みだした。これはつまり、グヘヘとか笑い出した時に深夜のテンションという魔物に襲われ、半催眠状態になった証拠なんだ!さらに、乳揉みが終わった後を見てくれ!急に正気に戻って、土下座までしているだろ!この土下座は正気に戻って自分のした事を悔いているからこその土下座だ!」

「・・言われみれば、そう見えるわね。」

「分かってくれるか!流石はご主人様!」


水樹は嬉しさのあまり、那由他に抱きつく。

そんなことをすれば、命が無いですよ水樹!

と思っていたのだが、


「はわ、はわ、はわ、わ、」


那由他は沸騰していた。

顔を真っ赤に染め、抱きしめられたまま固まっている。


「わっ!ごめん!嬉しさのあまり抱きついちゃった!」

水樹が一足先に正気に戻り、急いで那由他から体を離す。

「い、いいのよ。お気になさらずに。」


那由他は赤くなった顔を隠そうと、顔を背けながら、変な返事をする。

二人の間に、なんとも言えない青春のパルファムが漂う。


【ナレーション】

おえっ、寒い、寒い、寒いでやんす。なんでやんすか、その空気。

少女漫画かっ!ペッ!ペッ!

誰もお前らがくっつく展開なんか望んじゃいないんだよ!

あ〜、早くこの話終わらないかなー。


「えっと、これで俺の伝えておきたかったことも言えてスッキリしたし、帰るか。」

「えぇ。でもその前に少し話があるから、ついて来て。」


那由他は一瞬、何かを決心したような顔をし、有無を言わさぬ気迫で水樹を裏路地まで連れて行く。


「な、なんだよ、こんなとこに連れてきて。」


水樹は恐怖していた。

さっきまではいい雰囲気で、なんとか淫行の件についてもお許しが出た。

だから、後は家に帰るだけだと思っていたのに。

なに、この展開?

死ぬの?

俺ここで死ぬの?


ドンっ!!


「ひぃぃ!」


那由他は無表情で水樹を壁際に追いやり、壁ドンする。


「水樹 ー 」

「ひいぃぃぃ!ごめんなさい、ごめんなさい、命だけは、命だけはどうかお許しを!!」


水樹は壁際で、天敵を前にした小動物のように震えている。


「・・えっと、水樹?」

「ふぇぇぇぃ!まだやり残したことがあるんですぅ!お願いですぅ!ご慈悲を!ご慈悲をー!」


水樹は無類の面倒くささを発揮し、ひたすら謝り倒す。


「聞きなさい!」

「はいっ!!」


水樹は直立不動の姿勢を取る。


「よし、いい子ね。それじゃ今から言うことをしっかり聞きなさい。」

「イエッサー!」


那由他様に敬礼!


「水樹、あんたは私の奴隷よ。」

「はい!」

「ということは、私の命令は絶対、違う?」

「まったくもってその通りですご主人様!」

「いい返事ね。それで、ここからが本題なのだけれど」


那由他の顔が水樹に近づく。

水樹は直立不動の姿勢を崩すことなく、これから何が起きてもいいよう覚悟だけ決める。


「私はあなたを ー 」


那由他は水樹の耳元でそっと囁く,


「ずっと自分のものにしたかったわ。」

「・・・・えっ?」


水樹は那由他のあまりに予想外の言葉に、直立不動の姿勢のまま縦揺れしていた。

マグニチュード8レベルでだ。

一体どんな酷い命令をされるのかと、怯えていた水樹。

いざという時のために、必死に逃げ道を探していた水樹。

でも、実際に耳元で言われたのは命令ではなく。

命令ではなく?

命令ではない?

じゃ、なんだ?

命令でないなら。

あれは。

あの言葉は。

いや、ありえない。

あの那由他だぞ。

そんなわけがない。

でも。

捉えようによっては。

聞こえなくもない。

告白に。

あの那由他が俺に。

おれをほしかったって。

それってつまり。

そういうこと?


「二度は言わないわ。」


しかし、那由他は水樹の問いには取り合わず、一人さっさと路地を出てしまう。

水樹はその後ろ姿を呆然と見つめ、姿が見えなくなった後もしばらくは何もない空間をただただ見ていた。

既に神父さんの結界魔法は解け、周りでは賑やかな音が聞こえ始め、夕焼けは半分ほど堕ちかけていた。




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