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デズニーランド発地獄行きツアー


答えながら、大上段の構えをとり、俺の首目掛けて袈裟斬りに振り下ろす渚。


瞬間、ギュッと瞼を閉じる。そして覚悟を決める。どうやら、さっきの質問が俺の最後の言葉になりそうだった。クソッタレ。相変わらず背筋の凍る笑顔だ。髪の毛がないから、余計に迫力があるだよ!そしてこのクソ(あま)、台詞と表情が合ってねーんだよ!、と心の中でツッコミを入れる。

いや、しかし、殺されれる瞬間というのは不思議なもので、さっきまでは那由他が殺された怒りと、殺されるという恐怖でいっぱいだった心が、今は不思議と落ち着いている。そして、一瞬のはずなのにとても長く感じる。これが噂に聞く悟りというものなのだろうか?次にくるのは走馬灯か?などと考えていると、異変に気付く。何時まで経っても何も起きないのである。首が飛んでない。

怪訝に思い、そっと目を開ける。すると、目の前に広がったのは、悪魔の様な笑顔で薙刀を振るう尼僧ではなく、今となっては見慣れた光景だった。


そこは、何時も夢で訪れていた場所。荘厳な雰囲気漂う大広間。純白の大理石の床に漆黒の天井。それらが八柱の立派な柱に支えられ、壁には国旗のような垂幕。そして広間を真ん中から半分に分けるように敷かれている毛氈。その先には少し高い位置にある玉座。間違いない。ここは何時も夢で訪れている場所。何故かは知らないが、つい先程までいた小路から、この大広間まで移動したらしい…。


うん。死んだんだな。きっと。いや間違いなく。

いやー、あっという間だったなー。痛みとか感じる暇も無かったし。余りに突然過ぎたけど、痛みを感じずに死ねたのは不幸中の幸い?みたいな。

てか、ここ死後の世界だったんだ。成る程ね。とすると、何時も偉そうに玉座に座ってたアイツはさしずめ、死神の王様といったところか。変だなーって思ってたんだよな。毎日同じ夢見るし。あれは、お前そろそろ迎えにくるよっていうインフォメーションだったのね。納得。納得。そしたらもっと分かりやすく伝えてくれればいいのに。初めから分かってたら、色々と死ぬ前にやりたいことあったのに・・・。ん?いやいや、よく考えてみると、やりたかったこと特に無いな。うわー、俺の人生ショボ!どんだけ日々無気力で過ごしてきたんだよ!悲しくなるわ〜。生まれ変わったら、絶対働き蟻か働き蜂になろう。そして ー 。


「あのーもしもし。僕の言ってることが分かるかい?分かるのなら返事をしてくれ。」


ん⁇何やら後ろから声がするよ。鬼さんかな?今から閻魔大王さまの裁判的なやつが始まるのかな?こういうのってドラゴンボールで観た感じだと、結構並ぶのかと思っていたのだけど。

まあ、軽く見渡した感じ、俺以外に誰もいないし、たまたま空いてたのかな?先に死んだ筈の那由他も見えないし(いや、那由他は死んだって断言はしてないから、俺の後に死んだ可能性もあるか。)。てか、あれ?本当に誰もいない。いつも通りなら、玉座にドラキュラ伯爵みたいな男が座ってるのに。

不在ですな。


「いつもの伯爵さんは不在なんですか?」

問いかけながら振り向く水樹。しかしながら、その問いかけが、声の主を見た瞬間無意味なものとなる。何故なら、後ろにいる声の主こそ、いつもは不動で玉座に座していた男だったからだ。

「伯爵さんって僕のことかい?」

「あっ、いえ、その、えっと、何卒地獄だけは勘弁して下さい。」

不覚にも、余りの驚きについテンパってしまった。本能のままに土下座である。

「地獄?いったいなんの話をしているんだい?ここはデズニーランド。夢てんこ盛りだよ!」


…やばい。想像以上にやばい。なんちゅー返ししてくるんだこいつ!これじゃ、ツッコミを強要しているようなもんだ!

しかし、

だがしかしだ。

毎日夢で会ってるとはいえ会話が成り立つのは今が初めてな訳で。初めて会話する奴に遠慮なしにツッコミを入れるのはどうだろう?ましてやここは、こいつのテリトリー。下手に機嫌を損ねて、デズニーランド発地獄行きツアーに強制参加なんてことになったら、ハワワだ。ここは _ 。


「あははっ。もしかしてパレードとか観れるんですか?まさか死んだばっかりで笑うことになるなんて思いませんでした。ありがとうございます。」

これくらいが当たり障りないな。


「・・・。」

ありっ?どうしたんだろう。急に黙って。不安を覚えるじゃないか。

「うむ。どうやら大きな勘違いをしているようだな。ここはデズニーランドではないぞ。」

「わかっとるわ、そんなこと‼」

しまった⁉思いっきり突っ込んじゃった。

「なんだ知ってたのか。冗談が通じてないのかと思ったよ。よかった。ちゃんと魔法は効いてるみたいだね。」

「は、はい⁉ちょっと待って下さい。 魔法ってなんのことですか?それにここは何処ですか?俺は死んだんですか?そもそもなんで毎日夢に出てくるんですか?てか、あんた誰ですか?」


少しだけ冷静になり、ここぞとばかりに疑問を口にする水樹。少し困ったような顔をしながら男が答える。

「魔法ってのは別に悪いものじゃないよ。ただ君の精神状態を平常時のそれと同じにしただけさ。そうしないと、とてもじゃないけど話が出来そうになかったからね。」


そういえば、落ち着いている。さっきまでは那由他が殺された(?)ことに対する怒りと、恐怖とであんなに荒れ狂っていた心が、だ。

だから、尼に殺されそうになった時に妙に落ち着いてたのか。これが本当に魔法とやらの効果なら大したもんだ。

「何故そうしたのかって言うと、君には色々と聞いてほしいことがあるからだ。つまりは、さっき立てたフラグの回収さ!君も僕に色々聞きたいことがあるみたいだね。どうだろう?ここで話すのもなんだし、もっと誂え向きな場所に移動しないかい?」


と言うが早いか、パチンッとフィンガースナップ。すると、一瞬で景色は変わりそこはまたしても見慣れた場所。 そう、俺の部屋だった。ベットの上には淫らな本、いや、男の夢の結晶が置きっぱなしであった。冷や汗が背中を伝う。

「うん。君はやっぱり自分の家のほうがいいかと思ってここにしたけど、どうだい?ゆっくり話はできそうかい?まだ無理そうなら、術の力を上げようか?あまりお勧めはしないけども。」

「い、いや、もう、お、おっぱ、じゃなくて落ち着いたから大丈夫です。あはは。」


大変だー!大変だよー!俺はこのままでは変態だよー。まさか部屋に人が来るなんて思ってもみなかったよー。こんなことなら、エロ本ランキングなんてつけなければよかった。完全に俺の性癖バレるやん!アカン!アカンでー!

因みににランキング一位は、メガネ秘書です!みんなはどんなのが好きなのかな?


「そうか。よかった。なら、早速話をしようか。」

そう言って、ベットの隣にある、今では物置と化した勉強机の椅子に男が座った。クルクル回るタイプの椅子だ。

「は、はい。そうですね。」

空返事をしながら、さりげなくベットに座る。もちろん、奴からはエロ本が死角に入るような位置にだ。そして、シーツをエロ本に掛ける。これでやっと話に集中できるってもんだ。やれやれ。

「まず、自己紹介から。何回も会ってるから今更な感はあるけど、僕の名前はそうだな。ブレイドとでも言っておこうか。」

「俺は _ 」

「あー、いいよ。君のことは知ってるから。近藤水樹。中学三年生。好きな食べ物はシチュー。嫌いな食べ物は納得。独身。将来の夢は独身貴族、だろ?」

「ほう。成る程。俺に喧嘩を売ってるとみえる。」

指の骨を鳴らし、威嚇する水樹。

「いやいや、冗談だよ。ごめん。将来の夢は独身貴族じゃなくて、那由他だっけ?その子の奴隷になることだったね!」

心底楽しそうに言う、ブレイドと名乗る男。俺はそんな彼を見て、初めて、よく知らない人に殺意を覚えた。

俺が大統領なら戦争が始まってるレベルだ!しかし、そこは俺も大人だ。大人と云えば寛容だ。笑って許そうじゃないか。慈しみの心を総動員して。(それに第二章であれは誤解だと二回も言ったはずだ!こいつ登場人物なのに読んでないのか?)

「オ、オホンッ!俺の夢の話はいいから、そろそろ説明してくれないか。ブレイドさん。」


極力アングリーテイストを顔に出さないように努力しながら、引きつったというよりは、引きずられたような笑顔で話を促す。

「ああ、すまない。やっと君と話が出来たから、年甲斐もなく喋り過ぎてしまったよ。」

おっ!なんだか可愛いところもあるな。先の戯れは水に流すか。

「そうだな。分かりやすく、一つずつ話そうか。まずは君の勘違いから正すとしよう。」

「勘違い?」

すべてが勘違いだと思えるレベルのことが、つい先ほど起こったが。

「そう、勘違いだ。まず、君は死んでいない。そして、君のご主人様もとい、お友達の那由他という子も死んではいない。」

俺はあえて、つっこまない‼

「本当か⁉」

「もちろん本当だ。君が殺されそうになった時、僕が"時"に干渉して助けだしたからね。女の子の方も今頃、どこかにいるはずさ。」

「えっ⁉何処にいるんだよ⁈」

今は俺の部屋。俺とブレイドさん以外誰もいない。


「さぁ?わからない。」

「わからない?わからないってどういうことだよ!」

「そう大きい声をだすなよ。女の子に関しては、僕が助けてないからわからないんだよ。」


だったら誰が?


「じゃあ誰が助けたんだよ‼」

「だから大きい声をだすなよ。女の子を助けたのは僕の味方だから安全なはずだよ。多分・・・。」

「・・・無事なんだな?本当に生きてるんだな?」

「ああ、だから安心して。」

・・・そうか。無事なのか。生きているのか。

「・・・安心したよ。」

心底ほっとした顔で、そっと呟く水樹に、

「君たちはなんだかんだで仲が良いんだね。」

「だっ、誰があんなグサデレ女なんかと!」

ふふっと楽しそうに笑うサンさん。更にからかってくるのかと思ったが、それ以上踏み込んだことは言わなかった。その代わり、よしっ!と言い話題を変える。

「君が安心したところで、話を本筋に戻すよ。まず、君が知りたいのは、あの二人組はなに者か、という事だよね?」

「そうだ!あの二人組は一体なんなんだよ?突然現れて変なこと言ってたし、手からビーム出すし、殺されかけたし、女はハゲで尼で変態だし、男はゴツくて神父だし」

この二人組に関しては、謎というか、理解すら出来ない。ファンタジーだ。

「そのことなんだけど、僕はあの二人組に関してはなにも、いや、正確には殆ど知らないんだ。」

ブレイドさんから予想外の返答が返ってきた。この流れは説明でしょ?思わず立ち上がり、ブレイドさんに突っかかる。

「どういうことだよ!返答次第によっては、全身全霊で罵詈雑言浴びせたるぞコラァ‼」


年上、ましてや命の恩人に対して拳を振り上げ、殴るぞ?殴るぞ?とフェイントを入れながら脅す水樹。他に追随を許さないクソ野郎の姿がここにあった。


「ちょっと落ち着いてよ、近藤閣下。あの二人組なんか変なんだ。多分、二人の力が強いか、バックに相当強い力を持った奴がいるね。なんせ、この僕の術ですら一切受け付けないんだから。」

やれやれとばかりに首をふるブレイドさん。なにやら隠してる様子なのだが、今話さないということは、喋る気はないのだろう。仕方なく水樹は拳をしまい、何気に気になったていたことを聞いた。

「あのさ、今更なんだけどさ。魔法と術ってなに?」

先程からちょいちょい出てくる謎の言葉、”魔法”、"術"。状況が状況だけにサラッと流していたのだが、どうせなら聞いておいた方がいいだろう。(何気に、この物語の世界観を決める重要なワードだ。)ブレイドさんが急いでないとこを見ると、時間の心配はなさそうだ。というか、術で時間をどうこうって言ってたし。

「そうだね。術っていうのは簡単に言えば、超能力みたいなもんだよ。」

だいぶ簡単に言いやがったなこいつ。

ははーん、さてはこの物語からファンタジー色を消しにきてるな。だがしかし、そうはさせん。そうはさせんぞー!この物語は"剣と魔法"を、第一のコンセプトにしているからな。(ちなみに第二のコンセプツは読む人に"微笑みを"です)

ただでさえこの物語はバックボーンがしっかりしてないんだ。剣と魔法を取ってしまうと、変態しか残らん。

「いやいやいや、ブレイドさーん。アマーリニモ簡単スギヤシマセンカ?具体性が足りないデース!殴られタイノデースカ?」

うむ。書くのに時間がだいぶ空いたから、どんなキャラだったか忘れてしまった。主人公なのに。

「といわれてもなー。具体的にとなると、長くなるけど聞いてくれるかい?」

「短めに頼む。」

「君、結構欲張りだね。」

苦笑いしながらも、ブレイドさんは説明を始める。

「術っていうのは、君たちの概念で言う、魔法と呼ばれているものに一番近い。というか地域ごとに呼び方が変わっているだけで、実はやっていることは"術"と"魔法"でそう変わらない。ここまでで何か質問はあるかい?」

「無いからさっさと続きを話しやがれ」

「なんか僕の扱いがどんどん雑になってきてる感が否めないけど、まあいいや。続きを話そう。えーと、そうだ、術を使うのには必要なものがあって、その必要なものというのがMPだ。」


「なんだと⁉」

MPだと⁉俺の聞き間違いでなければ、確かにMPと言ったぞこの人。顔すっごくダンディなのに。瞳が縦長なのに。あれだよな?MPってマジックポイントの略だよな?でもそれはゲームの中の話で、そんなステータス現実世界には存在しない。否、存在してはいけない。

「ん?どうしたの?なにか分からないことがあったの?」

綺麗に整った眉を上げながら、優しく問うブレイドさん。ここでもう一度、念のために言っておくと、ブレイドさんはとてもダンディです。ぶっちゃけてしまうと、ヘルシングのアーカードがモデルだったりします。知らねーよって方は是非是非調べてみて下さい。ダークファンタジー好きにはかなりオススメでっせ!

「MPって・・・。」

「あー、MPかい?MPって言うのはマジックポイントの略だよ。」

「なんとっ⁉」

マジか!本当にあったのかそんなステータス。ゲルマン民族もびっくりだわ!

「術を使うことでMPを消費する。ということは、術には制限があるということになる。そして勿論、簡単な術は消費するMPが少なく、規模の大きい術ほど消費するMPは多くなる。そこら辺はドラクエと一緒だね。」


…とうとうドラクエって言っちゃったよこの人。自分が物語のどの立ち位置にいるのか分かってんのかね?当初の設定では主人公の相棒にしてクールで知的な魔王って予定だったのに、今じゃヘタレで電波な愚王って感じだ。

まぁMPの説明は分かりやすいけども。

「お、おう、そうか。わ、わ、分かりやすい説明ありがとうございますた。」

完全にイニシアチブを取られ、訥々と話す水樹。訥々でたじたじである。

「うん。伝わって良かったよ。MPのことさえ分かれば術の理解が早まるからね。」


「そうなんだ・・・。」

もういいや。さっさと次の展開に行こう。これ以上は流石に頭がついてこない。(それに、そろそろ那由他さんを出さないと後でどんな仕打ちが待ってるか考えるだけで恐ろしい。)

術の説明としては、呼び方が色々なのと、使用するにはMPが必要。これだけ分かれば十分だろう。ああ、十分だとも。もうこれ以上細かくは知りたくない。これ以上聞くと、頭がもう一つ生えてきちゃいそうだ。二頭を持つ近藤水樹。なかなかに笑えないな。はぁ。

「なんだい?まだ説明は頭の部分だよ?もう飽きたのかい?」

俺の返事に、顔に、疲れを感じとったのか、気遣ってくるブレイドさん。見た目はどっからどうみても、人で無しのち、エルフでしょう、なのだけど、人の心には敏感肌なんだろうか。それとも、術で俺の心を読んだのだろうか。分からないが、というかそんな事はどうでといいが、好都合なのでブレイドさんの好意に甘えさせてもらうとしよう。


「どうやらそのようだ。説明を求めたのは俺だが、余りにも非日常的過ぎて理解が追いつかない。すまない。」

「いや、気にすることはないよ。むしろ謝るのは僕のほうさ。なんたって、今の話は全部デタラメだからね!アハハハ !っハウッ⁉」

闊達と笑うブレイドさんの左頬に、黄金の右ストレートが突き刺さる。

「テメー!ふざけやがって!おちょくってんのか?あん?

術だか、魔法だか知らねーけどもよ、MPは無いよな、MPはよ?ゲームじゃないんだからよぉ。分かってる?」

「・・・うぅ。」

「こんな状況でよくそんな嘘つけたな、おい。こちとら一回見たくもない走馬灯まで見てんのによ〜。」

「・・・うぅ。」

「それにご主人、じゃなくて那由他がどうなってるのかも気になるって、聞いてるか?」

「・・・うぅ。」

この野郎さっきから、うぅしか言わないな。やっぱもう一発殴ろうかな。命を助けられたのは感謝してるが、それとこれとは話が別だよな?大多数が俺の考えを否定しそうな感じはあるが、まぁ気にしない気にしない。とか一人で脳内会議を開いている間も、ブレイドさんは口を押さえて、うぅうぅ言っている。

流石に、怪訝に思いブレイドさん様子を見る水樹。

「うわっ。」

すげー痛そう。口からマーライオンばりに血だしてるんですけど。そんなに強く殴ったかな?一応、座ったまんま殴ったんだけどな。しっかし、床が血だらけになってんなーとか考えていると、

「痛いなーもう。思いっきり舌噛んじゃったじゃないか!」

涙と血だらけで抗議の声を挙げてきたブレイドさん。

喋ると血がすごい飛ぶ。うん。汚い。


「いやー、しかしですねー、こんな時に(どんな時かは俺も分からんが)冗談なんか抜かす人が悪いと思いますよ。はい。」

どうにか自分を正当化しようとする俺。流石にあそこまで血が出るとは思わなかったので、少しばかり動揺しております。

「まあ、こんなのすぐ治るからいいんだけどね。」

いいんだ…。

「治るってのは、魔法を使うのか?」

もし、魔法で傷を治すことが出来るのなら那由他の傷を治すことが出来るかもしれない。

ん?

なんかおかしいな。

あっ、そうか!俺の足の怪我が治ってる時点で治せることは確定してるのか!(足の怪我が治ってるなんて描写無かったぞって?まったく、そんなこと気にしてたらこの物語にはついて来れないぞ!どうした?やめろ!諦めるのはまだ早い!もう少しだけ読んでいって?ね?お願いします!)


「もちろんだよ。というかもう治したしね。」

本当だ。喋っても血が飛んでこない。傷が治っている。

「すげーな。それだけに、さっきくだらない冗談言ったのが悔やまれるな。」

あれさえ無ければ、尊敬していただろうに。残念だ。非常に残念だ。

「でも、冗談なのはMPの部分だけで、後は殆ど本当のことだよ。」

「ほう。そうなのか。そうだったのか。それでは問おう!本当は魔法とはどういう仕組みで発動しているのだ?」

よし!やっとだ!やっとこの回のゴール付近まで来た!この回では"世界観を固める"が目標だったからな。それには、どうしても魔法の設定を決めとかなきゃならない。この一言を言うのに随分と紆余曲折あったな。

まあいいだろう。次にブレイドさんが魔法の説明をして、いよいよ"神父&尼僧とのバトル"だ!あー緊張してきたー!


「いやいや、そんなことより君が後ろに隠している本について語り合おうよ!」

「ダッシャャッーー‼」

無意識的に右手が高速で動き、今度はブレイドさんの鼻を殴った。ちなみに左手はくの字に曲げて持ち上げている。…そんなことはどうでもいいか。

「はんてほほすふんだ!いはいひゃなひか!」

念のため、通訳すると、「なんてことするんだ!痛いじゃないか!」である。

「いやいやいや、なんてことするんだじゃないでしょ!あんた台本無視ですか?次は魔法の説明して次の話にレッツゴーでしょーよ‼なのになんでこんなタイミングで、俺のエロ本弄りにくるのかな?お陰様で、顔が熱いよ!真っ赤っかのマッカーサーだよ!かかなくてもいい恥をかいたよ。汗もかいたよ。台本では気付かなかった設定でしたよね?気付かれなかったことに安堵する設定でしたよね?ちゃんの読んでこなかったのかなー?」


まだまだツッコミ足りないが、予定外のツッコミに、セリフが長くなりすぎたのでここで小休止。(台本ってなんだ?だって?はっはっは!俺台本なんていってました?やべー、作者に怒られるー。最後の方に“この物語はノンフィクションです“って書く予定だったのに!一生の頼みだ!俺がさっき言ったことは忘れてくれ!それか君の胸の内にしまって鍵をかけて、その鍵はルビコン川にでも投げ入れてくれ!お兄さんとの約束だぞ!)

「しかしだよ、水樹君。このまま次の話にいってしまうと、この回のオチはどこ?迷子ですか?って、ことになりやしないかい?」


俺今大事なこと言った、的な顔(つまりはドヤ顔ね!)をこちらに向けてくるブレイド。殴られた鼻が痛々しい。鼻血がキュートだぜ!

「そんなこと言ったら、言ってたら、各回毎にオチをつけなくちゃいけなくなるんだぜ?書くほうの気持ちを考えてみろよ?かなりのプレッシャー星人だぜ?プレッシャー!プレッシャー!だぜ?色んな意味で"オチつかない"ぜ!」


「いや、そういうのいいから。真剣に考えてくれる?」


氷点下の眼差しで、諭すように言うブレイド。これは由々しき事態ですぞ。このままでは俺の性癖を世間様に公表してネクストへ!な流れだ。…どうする⁉

「そしたら、どうだろう。今は若干コントな訳だけれど、確か前半でシリアス展開入りました的な発言あったじゃん?終わったとは言ってないじゃん?だから、この回が終わるまでは、シリアスな展開で終わるというのは?」

そうそう。この回はね、シリアスメインだからね。本当に作者が書きたかったのは、ガッチガチのシリアスなダークファンタジーだからね。だけど、作者曰く、「キャラが独り歩きしてもうた…。」だってさ。まるで俺らの所為でこんな残念な物語になったって言い草だよね。

死ね!作者!

おっと、ここカットでお願いします。


「わかった!僕が魔法で君の心を読み、性癖暴露して次の話に行こう!なに、君は先に次の回にでも行って、ゆっくりしておくといい。後は僕がやっとくから。」

「オッケー、後は任せたよ!ってなると思った?絶対ダメだかんなそれ!勝手に心読むとか、プライバシーの侵害だからな!出るとこでたら裁かれるからな!」

冗談じゃない。心読むとかチート過ぎでしょ!性癖どころの話では済まなくなるよ、これは。

「わかったよ。この回は真面目に終わらせようか。」

「やっと分かってくれたか!さぁ魔法の原理を軽く説明して、さっさと次行こうぜ!」

やっと、やっと終われる!長かったなー。もうこれで終わりでもいいくらいだ。ここまで書くのに実際の時間だと、一年くらいになるからな(作者曰く、本当に一年くらいかかってます!)。今思えば、感慨深いものがあるな。そして、実際の時間にしたら、半年以上那由他は出番ないことになるな。ヒロイン(一応)なのに。こりゃ那由他さんを大活躍させないといかんな(作者)。

「では、魔法の原理をここで説明しておきます。この物語の魔法は、ドラクエみたいに有限のものです。つまり、回数制限や、大規模魔法には次に発動するまでに、インターバルがあるなど。そして、術者により、得意、不得意な魔法があります。全てを十全に使える者は稀。このくらいでいいかな?」

「グッジョブ!もうなんでもいいから、次行こうぜ!」


シュビッ!っと、行こうぜの動作をしてブレイドを促す水樹。本当はもうちょっと設定考えてたけど、後々説明していけばいいよね!

「わかったよ。行こう!新たなる世界を作りに。否、世界を終わらせに。」

中2っぽいポーズでなんかカッコつけた台詞を言ったと思ったら、お得意のフィンガースナップ。一瞬で景色が変わり、目の前には先程殺されかけた渚という名のクソ尼と、未だ名前の出てないエセ神父がまるで来ることが分かっていたかのように、こちらを心なしか緊張した顔で見ていた。



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