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クールビューティー

《さっきと今ので分かったけど、あの魔法刻印は全部抵抗(レジスト)のためのものだね。普通というか、常套手段としては、魔法刻印は魔法を詠唱無しで使うためや、身体強化のために使うのだけど、どうやらあの神父さんは抵抗(レジスト)オンリーに絞ってるらしいね。道理でブレイド様の時空間干渉魔法が効かないわけだよ。》

「ごめん、説明長すぎてよく分からなかったのだけど、つまり?」

《魔法効かないってこと♡》

「なるほど、なるほど。チェックメイトってわけね。」


まぁ、死ぬ前に魔法という非現実的なものを使えたし、空飛べたし、やっと水樹のアホを奴隷に出来たし、悪くはない。

悪くはないわ。

ただ、一つ心残りがあるとすれば…。

いえ、流石にこれは望みすぎね。


《ごめん、諦めの準備始めてるとこ悪いんだけど、ボクに作戦というか試してみたいことがあるから、代ってもらえない?》

返事を聞く前に主導権を入れ替え、リリーが表にでる。


「ちょっと止まってて!」

猛攻中の神父さんの打終わりを狙い、リリーが神父の鳩尾を狙い掌底を打ち込む。

今まで防戦一方だった那由他からの不意の一撃。

予想だにしなかった意識の死角からの一打。

タイミングも抜群によく、カウンター気味の一撃。

しかし、神父さんはただの神父に在らず。

そう、彼は闘う神父。

今までの闘いで培った勘が咄嗟の回避行動をとらせる。

回避行動自体は単純に後方へ飛び、ダメージを減らすといったものだった。

が、リリーの目的は距離を取ること。


「魔法が効かないことが分かり、絶望しているところだと思っていたのだがな。足掻くか。」

「ボクはブレイド様の許嫁だからね。こんなとこで死ぬわけにはいかないのだよ。」

リリーが何もない空間を指でなぞる。

するとそこから、小さな魔法陣が浮かび上がる。

同じ動作を数回繰り返し、幾つかの魔法陣を展開。


「それにボクの読み通りならっ!」

リリーがフィンガースナップ。

すると、目の前にあった魔法陣が神父さんを囲むように移動。

各魔法陣が10メートル程の距離を保ち、神父さんに付く。


「こんなものっ!」

神父さんが魔法陣の一つに向かい突っ込む。

各個撃破する気らしい。

「確かに威力は小さいよ。でも甘く見ない方がいいかな。」

リリーが再びフィンガースナップ。

それに連動し、神父さんが斬りかかった魔法陣から氷柱が射出される。

神父さんに直撃。

しかし、神父さんに当たった瞬間に氷柱は消失し、神父さんのジャッジメント・ギルティによって、魔法陣も消される。


「まだ認められんか?私には魔法による攻撃は効かん!いくらキュアリリーの魔法でもな!」

神父さんがリリーに向き直り、魔法を展開しようと構える。

リリーが三たびフィンガースナップ。

今度は残りの魔法陣から次々と氷柱が射出される。


「往生際が悪い方だ。ブロック!」

神父が魔法を展開。

ブロックっと叫んだ割りに綺麗な球形のバリアが神父を包む。

リリーの攻撃はそのバリアに衝突し、一つもバリアを突き破ることなく消える。


「そろそろ無駄な抵抗は辞めていただけますか?私はこれでも神父です。弱者を嬲るような真似はしたくないのです。」

胸の前で十字を切る。

んっ?なんで今十字切ったの?

別に十字切るタイミングでは無いのに。

さては神父さん緊張してるな。


「これではっきりしたよ。神父さん、貴方をとっちめる方法がね!」

リリーが神父さんに向かってものすごいスピードで突っ込む。

そしてそれよりものすごいスピードで裏に引っ込む。

表に私が出る。

私、叫ぶ。

私、嘆く。

私、憤る。


「さっきの啖呵はなんだったのよー!」

神父さんは応戦態勢をとる。

このままでは情熱的に殺されにいくようなもの。

リリーが何を考えて突っ込んだのか知らないが、策が在るなら教えてから突っ込もうよ。

さっきも言ったけど、予習は大事よ。

それはもう、命に関わる程に。


《那由他、そのまま突っ込みながら神父の足元を爆発させて!そして、神父さんの背後を時間差で爆破!あっ⁉︎那由他、今闘いのダメージで制服ボロボロでセクシーだよ。ドキドキしちゃう♡》

全く無茶言ってくれるわね。

あんたが言うこと全部急なのよ。

でも、そんなこと言われたらやるしかないじゃない!


「えいっ♡」


水樹が訊いたら恐怖の余り、生命活動を停止してしまう程あり得ない、

許容範囲を無視した、

全世界を敵に回したと言っても過言ではない、

インポッシブルな、

那由他、その声どっから出したの?毛穴?それとも、その眼鏡が喋ったの?

あー、眼鏡が喋ったんだな、と納得してしまうレベルで、那由他からは想像が出来ない程の可愛い声で、神父さんの足元を爆発させる。


「…あくまで足掻きますか。」

先程の那由他の気色悪い声は、神父さん反応をほんの僅かながら遅れさせる。

しかし、神父さんは慌てず、騒がず冷静に対処。

つまり、刺青発動!


「いくら攻撃しても無駄です。その攻撃が魔法なら私には通じません!」

後僅か、瞬きの間に激突するという距離。

そのギリギリの距離で、今度は神父さんの背後を爆破。

ここまできてしまえばヤケッパチ。

今更止まれない。

投げたサイは戻ってこない。

ルビコン川は渡ったが最後。

引き返すことは叶わない。

クールビューティーの私のキャラではないのだけれど、砕けてやるわよ!

派手にね!


「なっ⁉︎」

今のなっ⁉︎は神父さん。

那由他が、激突したときの対処を完全に忘れて放った爆発。

規模的には全然小さい。

法級でいうと2。

威力は打ち上げ花火程度の鼻くそみたいな魔法。

しかし、神父さんの反応は、なっ⁉︎ということは、


「よくやった!那由他!後は任せて‼︎」

激突する瞬間。

リリーが表に現れ、爆風に押され体勢を崩されつつ、リリーの方へ吹っ飛んでくる神父にカウンターの飛び蹴り。

先程の掌底は後ろへ飛んでいなされたが、今度はリリーの作戦が嵌り、その暇を与えることなく攻撃が当たる。

リリーの飛び蹴りはモロに神父さんの鳩尾にヒット。

神父さんの身体はくの字に曲がり、激突した勢いが、勢いだけに気持ちいいくらいに吹っ飛ぶ。

そしてそのまま落下して見えなくなる。

《勝ったね!那由他!おめでとう!》

飛び蹴りを炸裂させた後すぐに引っ込み主導権を那由他に移したリリー。

読書の皆様はなんですぐリリーは引っ込むの?と考えてらっしゃるでしょうが、それはリリーが表に出るのは精神的、身体的負担がジャンボだからです。

そういう設定です。


「勝ったの?勝ったでいいの?」

魔法対決の決着が飛び蹴りだったのが、腑に落ちないのか、実感が湧いていない様子の那由他。

正直、この決着は作者も納得しかねている。

《これは間違いなく勝ったんだよ、那由他。だってあの勢いで飛び蹴りしたんだよ?それを神父さん魔法の防御も強化も無しに生身でモロに受けたわけだからね。これまでの経験上、人間が耐えられるわけないよ。》

サラッと怖いこと言ってるけど、忘れましょう。

世の中には知らない方がいいことがあると言うし。



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